戦後補償関係訴訟 判決
ハッキリ会TOP Harada Contents
- 韓国・遺族会補償請求 東京地裁判決 2001.3.26
- 韓国・朝鮮人BC級最高裁判決 1999.12.20
- 在日軍属年金裁判(大阪高裁)1999.10.15 *報道
- 七三一部隊など損害賠償裁判(東京高裁)1999.9.22 *報道
《「慰安婦」関係訴訟判決》
- 在日元「慰安婦」控訴審判決(東京高裁)2000.11.30.
- フィリピン元「慰安婦」控訴審判決(東京高裁)2000.12.6.
- 釜山元「慰安婦」・女子勤労挺身隊裁判(広島高裁)2001.3.29.
- 在日元「慰安婦」裁判(東京地裁)1999.10.1.
- フィリピン元「慰安婦」裁判(東京地裁)1998.10.9.
- オランダ抑留者虐待裁判(東京地裁)1998.10.30
- 釜山元「慰安婦」・女子勤労挺身隊裁判(山口地裁)1998.4.27.
韓国・朝鮮人BC級戦犯者最高裁判決(1999.12.20)
──心情は理解し得ないものではないが
判決(全文)
上告人
李鶴来(イー・ハンネ) 尹東鉉 金完根 文済行 卞光洙 芦澤承謙 李學順 朴一濬右八名訴訟代理人弁護士
今村嗣夫 小池健治 平湯真人 木村庸五 秀嶋ゆかり 和久田修 上本忠雄被上告人 国
右代表者法務大臣 臼井日出男
右指定代理人 東村富美子右当事者間の東京高等裁判所平成八年(ネ)第四四一一号韓国・朝鮮人BC級戦犯者の国家補償等請求事件について、同裁判所が平成一〇年七月一三日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。理由
上告代理人今村嗣夫、同小池健治、同平湯真人、同木村庸五、同秀嶋ゆかり、同和久田修、同上本忠雄の上告理由第一点について一 原審が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 上告人李鶴来、同尹東鉉、同金完根、同文済行、亡卞鐘尹、同文泰福及び同朴允商(以下「上告人李鶴来ら七名の者」という。)は、いずれも我が国の統治下にあった朝鮮の出身者であり、昭和一七年ころ、半ば強制的に俘虜監視員に応募させられ、日本軍の軍属として採用された後、タイ俘虜収容所、マレー俘虜収容所等において俘虜の監視等に従事した。
2 上告人李鶴来ら七名の者は、第二次世界大戦後、右俘虜の監視等に従事中に俘虜に対し虐待等の行為をした戦犯として連合国による裁判を受け、その結果、上告人李鶴来、亡卞鐘允及び同文泰福は、死刑を、その余の者は、拘禁一〇ないし二〇年の刑を宣告され、そのうち上告人李鶴来及び亡文泰福については拘禁二〇年及び一〇年に減刑されたものの、亡下鐘允は死刑の執行を受け、その余の者は、長期間にわたって拘禁されるなど、深刻かつ甚大な犠牲ないし損害を被った。
3 上告人卞光洙は亡卞鐘允の、上告人芦澤承謙は亡文泰福の、上告人李學順及び朴一濬は亡朴允商の、それぞれ相続人である。二 右の事実関係によれば、上告人李鶴来ら七名の者が被った犠牲ないし損害は、第二次世界大戦後、戦犯として、前記刑の執行を受けたことによって生じたものであり、これは、我が国の敗戦に伴うものといわざるを得ないところ、このような犠牲ないし損害に対する補憤の要否及びその在り方については、国家財政、社会経済、損害の内容、程度等に関する資料を基礎とする立法府の裁量的判断にゆだねられたものと解するのが相当である〔最高裁昭和四〇年(オ)第四一七号同四三年一一月二七日大法廷判決・民集二二巻一二号二八〇八頁、最高裁平成五年(オ)第一七五一号同九年三月一三日第一小法廷判決・民集五一巻三号一二三三頁参照)。
上告人李鶴来ら七名の者が被った犠牲ないし損害の深刻さにかんがみると、これに対する補償を可能とする立法措置が講じられていないことについて不満を抱く上告人らの心情は理解し得ないものではないが、このような犠牲ないし損害について立法を待たずに当然に戦争遂行主体であった国に対して国家補償を請求することができるという条理はいまだ存在しないものといわざるを得ず、憲法の諸規定からこのような条理が導き出されるものでもないから、これと同旨を説示する原審の判断は正当として是認することができる。
以上によれば、所諭は理由がないことに帰するものというべきである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することはできない。
同第二点及び第三点について 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、原判決の結論に影響しない点をとらえてその違法をいうか、又は独自の見解に基づいて原判決の法令違背をいうものにすぎず、採用することができない。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 小野幹雄
裁判官 遠藤光男
裁判官 井嶋一友
裁判官 藤井正雄
裁判官 大出峻郎
在日軍属訴訟(姜富中)大阪高裁判決(1999.10.16)
「国籍条項は違憲の疑い」
掲載日1999年10月16日 <共同> 報道
〈在日軍属訴訟「国籍条項は違憲の疑い」〉
旧日本軍属として徴用され負傷した在日韓国人の姜富中さん(79)=滋賀県甲西町=が、日本国籍がないことを理由に戦傷病者戦没者遺族等援護法(援護法)に基づく障害年金の支給請求を却下した国の処分取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁の松尾政行裁判長は十五日、「法の下の平等を定めた憲法一四条と国際人権規約に違反する疑いがある」との判断を示した。同種訴訟で、違憲性に言及した高裁判決は初めて。
訴え自体は「国籍・戸籍条項は失効していない」として、請求棄却の一審・大津地裁判決を支持したが「国会には条項改廃などの是正が要請されている」とし、放置し続けた場合には違法性が生じる可能性も示唆。救済策を検討している国は、早急な措置を迫られそう。
松尾裁判長は、判決朗読後に異例の「所見」を述べ、その中でも是正措置への期待を表明した。姜さんは上告する。
判決で松尾裁判長はまず、支給対象を日本人に限定する援護法の国籍・戸籍条項について「憲法の趣旨に沿うものか疑問は残るが、一九五二年の立法当時、在日韓国人らに対する戦争被害の賠償問題は日韓両国の特別取り決めの対象とされており、直ちに違憲とは言えない」とした。
その上で、六五年の日韓請求権協定締結で、両国からの補償がないことが明白になった以降について検討。「立法時の事情に変化が生じたもので、元軍属らに引き続き、条項を適用し給付しないのは著しく不利益な取り扱い」と判断、憲法、国際人権規約に違反する疑いを指摘。所見の中では「国際社会も納得する是正措置を期待する」と述べた。
「七三一部隊」被害者損害賠償請求訴訟(1999.9.22)
東京高裁判決
国は謝罪、最大限配慮を
掲載日1999年09月23日 <共同>写有 報道
〈国は謝罪、最大限配慮を〉
旧日本軍の細菌戦部隊「七三一部隊」による人体実験や南京大虐殺、無差別爆撃で被害を受けたとして、中国人十人が日本政府に総額約一億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は二十二日、請求を棄却した。伊藤剛裁判長は原告らの被害事実を認定しながらも「いかに非人道的行為でも日本政府に直接賠償を求める権利がない」と指摘。しかし
「占領侵略行為で中国国民に甚大な被害を与えたことは疑いのない歴史的事実で、わが国が真摯(しんし)に中国国民に謝罪すべきであることは明らか」とし「日中の友好関係を維持する上でさらに最大限の配慮をすべきだ」と異例の見解を示した。
中国人の戦争被害者が日本政府を訴えた訴訟で初の判決。南京大虐殺、七三一部隊の人体実験という国際的にも有名な残虐行為の責任が問われたのも初だったが、判決はいずれも間違いない事実と認定した。
原告は南京大虐殺の際、日本兵から銃剣で刺され流産した李秀英さん(80)や空爆で右腕を失った高熊飛さん(60)のほか、夫を殺された敬蘭芝さん(77)ら七三一部隊犠牲者の遺族八人。
原告側は、占領地での一般市民保護を定めたハーグ条約などを根拠に国際法違反を主張したほか、被害地の中国の民法を適用すべきで、不法行為に当たると強調した。
これに対し判決は「国際法上、個人が賠償を求める権利はない」と判例に沿った判断を示したほか、「外国の民法に基づく賠償を日本は想定していなかった」として退けた。
外国人の戦争被害者による戦後補償訴訟は約五十件が係争中。
=判決骨子=
一、原告らの請求は棄却
一、わが国の中国での各種軍事行動は侵略にほかならず、中国国民に真摯(しんし)に謝罪すべきだ
一、「南京虐殺」という事象は存在し、七三一部隊の人体実験も疑うことができない
一、戦争行為での損害賠償は個人が直接外国に請求できる権利として認められない
〈戦後処理問題にも一石〉
=解説=中国人の戦争被害者による訴訟で東京地裁判決が二十二日、請求を棄却したのは、外国人の戦争被害救済を認めない判断の流れに沿ったもので、司法の壁の厚さをあらためて浮き彫りにした。一方で、判決が「わが国は真摯(しんし)に中国国民に謝罪すべきで、日中友好のためさらに最大限の配慮をすべきだ」と指摘したことは、日中間の戦後処理問題
にも一石を投じよう。
日本政府は「賠償問題は解決済み」との姿勢だが、原告の悲惨な被害は戦後半世紀経てもいやされないままだ。
米国カリフォルニア州議会の上院・下院で今年八月、南京大虐殺などをめぐり日本政府に賠償を求める決議が採択されるなど、日本の戦後補償への取り組みについて国際世論の目は厳しくなっている。国会や行政が救済に向け、どう責任を果たすかが問われている。
一九九○年代になって中国人の提訴が相次ぎ、全国の戦後補償訴訟の約三分の一を占める十六件に達した。中国政府も個人提訴を黙認している。
戦後補償問題は時間との闘いでもある。今年も中国やフィリピンの元従軍慰安婦らが相次いで亡くなった。高齢化する被害者に残された時間は少なく、日本政府の誠実な対応が急務だ。