国会審議議事録《強制連行・「慰安婦」・戦後補償》

 

 参議院本会議(代表質問)質疑 2000.04.11
 ─「慰安婦」関連部分─

本岡昭次(民主党)  
 過去の清算問題に関連し、いわゆる慰安婦問題の解決について質問します。 
 政府は、一九九三年八月、この慰安婦問題について二年間の調査の後、慰安婦問題への軍の関与を認めて、おわびと反省の気持ちをあらわす河野官房長官談話を発表しました。続いて政府は、一九九五年七月に、民間団体として女性のためのアジア平和国民基金を設立し、国民の募金による見舞金を国にかわって償い金二百万円を支給することで慰安婦問題を解決しようといたしました。しかし、道義的責任でなく国の責任による謝罪と償いを求める元慰安婦の方々の反発により、償い金の支給を受けた方は対象者約三百人中百六十人と、やっと半数を上回る状態でございます。 
 この償い金支給に際しては、小渕前総理は日本国内閣総理大臣の名前で、次のようなおわびの手紙を渡しておられます。
  
 いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。  
 我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。

 これが小渕前総理の署名入りのお手紙であります。 
 なぜ、これほどの総理のお気持ちが受け入れられないのでしょうか。それは、国の責任を避け、道義的責任で解決しようとするからであります。国連人権委員会を初め国際人権諸団体も、道義的責任でなく国の法的責任による解決を求めて、勧告、要請を繰り返しております。 
 国の責任を明確にし、国の責任において元慰安婦であった方々の名誉回復の措置を行うことが必要です。民主党は、国の責任で解決を促進する法案を参議院に提出しました。河野外務大臣が官房長官のときに初めて軍隊の関与を認め、謝罪と問題の解決が始まったのであります。
 アジアの関係諸国民と我が国との信頼関係の醸成及び我が国の国際社会における名誉ある地位が保持できるよう、賢明な政府の対応を期待します。  所信表明において「世界から信頼される国家」を目指したいとする森総理と、河野外務大臣の答弁を求めます。

○総理大臣 森喜朗
 いわゆる従軍慰安婦の問題に対する政府の対応についてのお尋ねでありますが、この問題を含め、さきの大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題については、政府としては、サンフランシスコ平和条約、二国間の平和条約及びその他関連する条約等に従って誠実に対応してきており、これらの条約等の当事国との間においては法的には解決済みであります。
 しかしながら、政府としては、本問題が多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるとの認識から、これまでもおわびと反省の気持ちをさまざまな機会に表明してきております。
 また、元慰安婦の方々に国民的な償いをあらわす事業や、女性の名誉と尊厳にかかわる事業等を行う女性のためのアジア平和国民基金に対して最大限の協力を行ってきたところでございます。

○国務大臣 河野洋平
 いわゆる慰安婦の問題につきましては、先ほど総理大臣御答弁のとおりでございます。
 総理もおっしゃいましたように、この問題、大事なことは、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけたという問題でございます。こうした認識を持ちまして、これまでもたびたび政府といたしましては機会をとらえておわびと反省の気持ちを表明をしているところでございます。
 私自身も九三年八月、官房長官としてこの問題について考え方を明らかにいたしておるところでございます。
 


 

国会審議議事録《強制連行・「慰安婦」》
 
 

第百十八回国会参議院予算委員会会議録第十六号 平成二年(1990)五月三十日
発言者 竹村泰子(社会党)
答弁者 坂本三十次内閣官房長官 有馬龍夫内閣外政審議室長
 谷野作太郎外務省アジア局長 末次彬厚生省援護局長 指宿清秀国立国会図書館長
課題 強制連行
内容 名簿調査

 

委員長(林田膝紀夫君) 次に、竹村泰子君の残余の一般質疑を行います。この際、坂本官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。坂本官房長官。
国務大臣(坂本三十次君) 日韓外相会談で韓国側から日本側に対して、強制連行された人のりスト、朝群人のりストを示してもらいたいというお話がありました。 太平洋戦争中に強制連行された朝鮮人リストについては、何分古い話のことでもありますが、当時の事実関係や法律関係について、現在内閣官房を中心にして関係各庁と共同して調査をいたしておりますので、もう少しお待ちください。
竹村泰子君 閣議で大変御検討いただきましたそうで大変うれしく思いますけれども、強制連行というのは日本政府が国家権力で連れてきた人を指すのですね。昭和十七年から敗戦までぐらいだと思いますけれども、その前、昭和十四年ころから自由募集というような形で連れてこられた人かいたということですけれども、いかがでしょうか。
政府委員(有馬龍夫君) ただいま官房長官が仰せられましたように、当時の事実関係をまさに今調査しているところでございまして、その結果、今御指摘になられましたような問題についても、ある段階では適切なお答えができるかと思っております。
竹村泰子君 私がお聞きしたいのは、強制連行というのは一体どういう人たちですかという概念をお聞きしたかったんですけれども、今お答えできないということですので、仮にこの人たちが個人で日本に賠償要求をしてきたらどうなさいますでしょうか。戦勝国アメリカでも日系人の強制収容に関する賠償法というのを立てまして千九百五十億円賠償しておりますけれども、そのようなことをどういうふうにお考えになりますでしょうか、官房長官。
政府委員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。この点は、先生御存じかと思いよすが、徴用された韓国人に対する補償の問題は、確かに日韓国交正常化交渉において韓国側から対日要求の一つとして提起された経緯がございますけれども、いずれにいたしましても、昭和四十年に締結されました韓国との請求権及び経済協力協定によりまして、日韓間の問題としては既にそのとき決着済みというのが日本政府の立場でございます。
竹村泰子君 きょうは国会図書館長においでいただいておりますけれども、資料がございましたでしょうか。
国立国会図書館長〔指宿清秀君) お答えいたします。私ども国立国会図書館に所蔵いたしております資料の中には、ただいまお訊ねのような関係の名簿等はございません。
竹村泰子君 韓国の太平洋遺族会という方たちが九〇年の四月においでになっておりますが、そのときに軍属、軍人の名簿はあったと厚生省は認めておられますけれども、公開は拒否しておられますね。このことを厚生大臣は御存じでしょうか。
政府委員(末次彬君) 御指摘のとおり、軍人軍属につきましては全体の名簿の中にそういう方が入っているということでございます。これは一種の人事に関する記録でございますから、名簿の提示をしてほしいというお話がございましたが、プライバシーに関することでもございまして、国内においても同様の取り扱いをいたしておりまして、その名簿の提示はできないというふうにお答えしております。
竹村泰子君 中央協和会というのが戦中にございまして、移入労務者の指導員講習などをやっております。これは厚生省と内務省と地方自治体で協力をしてやっているんですけれども、そういうことなど多くの、私の調査によりますと、名簿がないとは言えない現状がございますが、いかがでしょうか。
政府委員(有馬龍夫君) 繰り返して申しわけございませんけれども、今調べているところでございまして、御指摘の諸点については今この段階では明快にお答えすることができません。
竹村泰子君 従軍慰安婦の調査もなさいますね、官房長官
政府委員(有馬龍夫君) 先ほど官房長官が仰せになられましたように、今内閣官房が中心となりまして関係しておられるところと協力しながら調べております。
竹村泰子君 各大臣にお答えいただきたいんですが、時間がございませんので、十分誠意を尽くして調査をしていただきますことを官房長官お約束してください。
国務大臣(坂本三十次君) きのう内閣官房で、関係各省庁に対してそういうリストがあったら出してもらいたいということで、今鋭意調査中であります。
竹村泰子君 一九六五年の日韓条約は経済協力だけです。個人補償は別ではないでしょうか。また、北朝鮮に対しては全く放置されたままでよいというのはどういうことでしょうか。敗戦後四十五年、余りにも遅い戦後処理ではないでしょうか。反省もざんげもなかったことがまさに今問われていると思います。韓国、朝鮮の人のみでなく、そして従軍慰安婦も、日本の植民地支配に対するすべてのことを調査するという前向きの閣議決定を受けて、窓口をきちんとつくり、遅まきながら誠意を持って調査をしていただきたいと強く要望して終わります。
 
 
 
 
 

第百十八回国会参議院予算委員会会議録第十九号平成二年(1990)六月六日
発言者 本岡昭次(社会党)
答弁者 坂本三十次内閣官房長官 清水傳雄労働省職業安定局長
課題 「従軍慰安婦」問題  内容 軍の関与を否定

 

本岡昭次君 それから、強制連行の中に従軍慰安婦という形で連行されたという事実もあるんですが、そのとおりですか。
政府委員(清水傳雄君) 先ほどお答え申し上げましたように、徴用の対象業務は国家総動員法に基づきます総動員業務でございまして、法律上各号列記をされております業務と今のお訊ねの従軍慰安婦の業務とはこれは関係がないように私どもとして考えられますし、また、古い人のお話をおきいたしましても、そうした総動員法に基づく業務としてはそういうことは行っていなかった、このように聞いております。
本岡昭次君 先ほど言いましたように、海軍作業愛国団とか南方派遣報国団とか従軍慰安婦とかいう、こういうやみの中に隠れて葬り去られようとしている事実もあるんですよ。これはぜひとも調査の中で明らかにしていただきたい。できますね、これはやろうとすれば。
政府委員(清水傳雄君) 従軍慰安婦なるものにつきまして、古い人の話等も総合して聞きますと、やはり民間の業者がそうした方々を軍とともに連れて歩いているとか、そういうふうな状況のようでございまして、こうした実態について私どもとして調査して結果を出すことは、率直に申しましてできかねると思っております。
本岡昭次君 強制連行とは、それでは一休何を言うんですか。あなた方の認識では、今国家総動員法というものの中で、それが範疇に入るとか入らないとかと、こう言っておりますが、それでは範疇に入るものは、一体何人あったからそれはどうだとか言うんならわかるんですけれとも、すべてやみの中に置いておいて、そういうものはわからぬということでは納得できないじゃないですか。
政府委員(清水傳雄君) 強制連行、事実上の言葉の問題としてどういう意味内容であるかということは別問題といたしまして、私どもとして考えておりますのは、国家権力によって動員をされる、そういうふうな状況のものを指すと思っています。
本岡昭次君 そうすると、一九三九年から一九四一年までの間、企業が現地へ行って募集したのは強制連行とは言わぬのですか。
政府委員(清水傳雄君) できる限りの実情の調査は努めたいと存じますけれども、ただ、先ほど申しました従軍慰安婦の関係につきましてのこの実情を明らかにするということは、私どもとしてできかねるんじゃないかと、このように存じます。
本岡昭次君 どこまで責任を持ってやろうとしているのか、全然わからへん、わからへんでね、これだけ重大な問題を。だめだ。やる気があるのか。ちょっとこれ責任をもって答弁させてくださいよ、大臣の方で。
委員長(林田悠紀夫君) 速記をとめて。〔速記中止〕
委員長(林田悠紀夫君) 速記を起こして。
国務大臣(坂本三十次君) 本件につきましては、政府は労働省を中心に関係省庁協力して調査いたしますので、なお時間をいただきたいと思います。