かなり 実録 バレー部物語

・切羽詰まったときにこそ

若手に切り替えた2022年、監督も江口から永井に交代した。コロナの影響はまだ続き、全体練習を控えたことがあったり、遠征も強化試合もできないままだったが、実業団県予選はRI東北エントリー1チームにより自動的出場が決定。
5月になってようやく茨城クラブと練習試合を行った。6月以降は急ピッチで遠征や練習試合をこなしていくが「メンバーがいないので、あまり手の施しようがない」と永井。

全日本実業団は福岡県久留米市で開催された。佐藤が故障(アキレス腱断裂)で不参加…うちのチームって断裂率高くない? 石川も状態が思わしくなく、いざというときのためにもあまり無理させられないという危機的状況。
もしもの場合を考慮し、永井はプレイングマネージャーとして選手登録もしている。ベンチにいるときはユニフォームの上にポロシャツを重ね着しなければならず、空調されているとはいえ、その暑さは相当のものだろう。

予選Gは印刷局小田原と対戦。第1セットは佐々木サービスエース、高橋のAで幸先よいスタートを切ったが、小田原のライト強打と連続サービスエースで2−3とされてしまう。
シーソーの展開から高城強打アウト、ネット際のボールを本田押し込みにいったが目測誤り自コートに落ち、高橋のBがブロックされ6−9、高城強打もブロックされ8−12、小田原はダブりが続いてリズムに乗れなかったが、東北も決め手を欠いて14−20。
佐々木強打、高城サービスエース、小田原レフト強打をブロックして3点差まで迫るが、小田原中央からの強打をブロック吸い込み17−21。

第2セットは出だし2−5から高城の強打と押し込み、佐々木時間差で7タイとしたが、小田原に常に先行を許し苦しい展開。粘って14−13と逆転したが差を広げることができず、逆に小田原FR強打で19−20とマッチポイントを握られる。
ここは高橋Aでデュース、小田原のアドバンテージを東北が食らいついてデュースに持ち込み23タイまでいくと、高城強打、梅津のサーブで崩し小田原レフト強打がアウトになって25−23、何とか勝ち越しに成功。

勝負の第3セットは東北がリードするものの小田原も負けじとサイドアウトの応酬、しかし高橋サービスエースや高城の強打が決まって14−11。小田原もAやサービスエースで追いすがるが、高橋のAがコート奥に決まって19−17。
ここで東北にサーブ順間違いが発生して19−18。最悪とも言える雰囲気の中、高城の強打で断ち切りマッチポイント、最後は小田原FR強打をブロックして21−18、フルセットで熱戦を制した。
勝ちに不思議の勝ちありと言うが、こういう劣勢からの逆転ってあまりなく…ほとんどこちらに流れは来なかった。昨年のトップリーグ、若手主体で戦ったゲームは結局1セットも取れなかった。なのでベテラン勢がいない中で一度崩れたら盛り返せないんじゃないか…もしかすると予選敗退の可能性も…この勝利はチームにとっては大きな価値があるだろう。

恐らく嬉しいよりもホッとしたんじゃないか。1セット目は両サイドが決まらず、相手の勢いに押されまくっていた。2セット目もマッチポイントを握られてからよく耐えた。やはり高橋の速攻と高城の強打が決まるようになったのが大きい。昨年のトップリーグでは高橋の速攻は決まらず、高城の強打は止められまくった。あれから半年ちょっと…見事立て直した。
特に高城は2セット目あたりから決まり出し、それ以前とは雲泥の差とでも言うか…「覚醒したのは俺のおかげですね」と熊谷。セット間で、もっと思い切り打っていいぞとアドバイスしたらしい。「全部ではなくても、2/3は俺のおかげでしょう(笑)」
きっかけがどうであれ、ここまで変わるのか…ってくらいだった。

スタメンで出場していた鈴木は宮城国体からの生き残りと言っては失礼だが、前衛唯一のベテラン、いや超ベテランだが気合は人一倍入っていた。こんな追い詰められた時こそ肝の据わったプレーが安心感をもたらす。第3セット途中で交替したが、敗者復活戦に回った場合を考慮してのこと。このギリギリの戦いで監督としては苦しい判断だが、もし負けた場合の消耗は計り知れない。ここは温存を優先したというわけ。
第3セット終盤でのサーブ順ミス、ベンチも分かっていたようだったが「気付いたときにはもう打っていた」と永井。普段、サブメンバーがチェックしていたはずなのだが…流れとしては致命的、でもここで崩れなかった。チームとして成長の跡が伺える。

((( Idle Talk )))
今大会はベンチからの声がけ禁止ということで、何とかコート上の選手を応援できないか? と吉田がフリップに文字を書いてかざしていた。
しかし事前に用意したわけではないので、書きながらだと追いつかなくなってしまった。結局、他にやることもあるし、「みんなも見てるかどうか反応分からないし…」ということで止めてしまった。
まあ…そうなるよね。何とかしようとする、その気持ちは買う。

◇  ◇  ◇

決勝Tの1回戦は四国電力。近年は毎年1回対戦しているような感じになっている。相手も「またかよ」って思っているかも。第1セットは4−3から高城の強打や本田のフェイントなどで5点連取、更に高城の強打や本田の軽打などで14−6。終盤も5点連取して21−9と先取。
あっけなさすぎたか、第2セットは4−5→6−8と苦戦。高橋B、酒井強打、四国FR強打ネットで逆転したが、なかなか引き離せず四国に3点連取され16タイとなる。しかし酒井強打、四国ブロックのタッチネットで一歩抜けると、シーソーで逃げ切りストレート勝ち。2セット目は接戦で、いつもは悲壮感が漂うが、チームはどこか余裕が感じられた。これも昨日勝ったことがプラスに影響しているか。

住友電工戦、鈴木(勇)のCクイック。=久留米総合スポーツセンターアリーナ
2回戦は第2シード・住友電工との対戦。清藤弾く住電サービスエース、高城軽打がアンテナ接触、住電FR強打アウト、住電レフト強打、梅津の前に落とす住電サービスエースで1−4とされたが、高橋のBや高城の強打で反撃、住電Aをブロック、佐々木時間差、佐々木のサーブで崩し高橋のブロック押し込みで9−10と迫る。
住電のサーブが強力で乱され4失点してしまうと、高橋ダイレクトがアウト、酒井強打がブロックされて11−17とつながりも悪くなる。終盤も3失点して13−21と先取される。

第2セットは中盤までサイドアウトの応酬となり緊迫した展開。住電B、梅津・熊谷が弾く住電連続サービスエースで均衡が崩れ10−14、それでも住電ライトのタッチネットと住電レフト軽打をブロックして必死に追いかける。
高橋強打、ラリーから佐々木時間差で15−16となるが、住電は集中力を発揮して不用意なミスはしてくれない。住電A、晴山バックトスがドリブル、住電に傾いた流れを食い止めきれず最後に連続4失点を喫し16−21、ストレート負け。

2セット目、住電のダブりが多少あったが、1セット目同様な状況になるだろうと思われた…しかし10−14から1点差まで迫った。現状ではこれが精一杯だろう…持てる力は出せたか。高橋と高城は結局相手にブロックポイントを取らせなかった。相手も嫌がっていたようだし、これは今後の強みになっていくだろう。
高橋はコースを変えたりタイミングをずらす工夫が見られ、高城も同様に押す一辺倒ではなく、適度にフェイントも混ぜてきた。酒井も吹っ切れたのか強打が決まるようになってきた。これにもう少し “いなしワザ” がプラスされると強力な布陣になるかもしれない。
それだけに、2セット目16−18でのバックトスドリブルは惜しかった。印刷局小田原戦では決まらなすぎてライト側に「怖くて上げられない」と言っていた晴山がライトに、あの局面で上げようとしたのだから、結果を見れなかったのが残念。

◇  ◇  ◇

翌日…横河電機は準決勝で住電相手にフルセットの激戦を展開していた。先の練習試合で横河とはほぼ互角だったようだが、この差は何なのかチェックする必要があるだろう。高城は「試合中はアドレナリン出てました。今はふくらはぎが筋肉痛です」と言っていた。かなりトップギアを継続していたのだろう。
ベスト8に入った日本無線と造幣局は、いずれセカンドリーグで激突することになる。まずは東地区が9月開催予定なので、意外と残された時間は少ない。またコロナが蔓延しつつあり、その影響を確認しつつ調整していかなければならない。
ただ、若手はプレーする度に逞しくなっていくのが感じられるので、チームが劇的に強くなる可能性を秘めている。


・日々成長

9月第1週の総合県予選はNittoをストレートで下し無事出場権を獲得、第4週のセカンドリーグ東地区大会(千葉市)に挑む。台風が関東地方を通過する中での大会となり、移動など少し面倒なところもあったが、無事開催された。
6チーム参加で2ブロックに分かれて予選リーグ、その順位によって決勝トーナメントが行われる。予選最下位になっても決勝トーナメントには行けるが、12月の大会へ駒を進める条件が “準決勝進出4チーム”。 予選1位ならシードになり準決勝へ自動的に進み、出場権も得る。よってまずはそこを目指す。

第1戦は埼玉のNO NAMEと対戦。第1セット3タイから佐々木強打、高橋A、佐々木強打、NO NAMEドリブル、高城サービスエース、高橋Aの6連続得点で9−3。その後も熊谷、梅津のサービスエース、鈴木のC、本田の時間差など攻撃の手を緩めず21−9。
第2セットも攻めの姿勢は変わらず、一気に12−3とリード。6−14から相手サーブに手こずり5点連取されたが、大量リードに守られその後はシーソーで推移。最後は高城強打、中央から酒井強打で21−17。 今までライトだった本田、ハーフセンターだった佐々木がポジションチェンジしていた。「現時点ではこれがベスト」と永井、両サイドでの決定力と対応力を優先したということだろう。

第2戦は日本体育大学と対戦、これが超苦戦となる。第1セット前半は12−7と上々の戦いだったが、ここから膠着状態となり、3点連取されて16−14。高城強打、佐々木サービスエースで乗り切ったと思いきや、東北オーバータイムス、高城強打アウト、熊谷弾く日体大サービスエースで1点差まで詰め寄られる。高橋のAで凌ぐと、最後は高城の強打決まって21−19。
第2セットは7−8から7−11とされると、日体大サービスエース8−13、ミスが続いて9−16。日体大のサーブが唸りを上げて襲いかかり、連続エースを取られて10−20、万事休すと思われたが、ここから東北が盛り返す。お返しとばかりに2本の熊谷サービスエース含む怒涛の攻撃を見せ7得点、あと3点まで迫るが、さすがに10点差の壁は厚く、日体大ライト強打が決まって17−21。

第3セット前半は東北がリードして優位に進めるが、日体大も中盤から勢いを増し、レフト強打とCで追いつき13タイとされる。酒井強打、日体大のタッチネットで一歩出ると、高城強打、日体大ライトプッシュを高城ブロック18−15。それでも粘る日体大だったが、最後は高橋のAプッシュが決まり21−19、辛くもフルセット勝ちを収めて予選1位突破を果たした。
第2セットはカットミスが響き、それに釣られてありえないような凡ミスを犯してしまった。しかし最後の追い上げは無駄じゃなく日体大へのプレッシャーになったと思われ、第3セットの出だしに繋がった。諦めないこと、それが大事。

準決勝はNO NAMEを下して勝ち上がってきたリコーとの対戦。リコーグループ対決は2019年の交流会でリコー沼津と対戦して以来、若手はほぼ初体験となる。少し違和感があるかもしれないが、すぐ慣れるはず。
第1セットは6タイから何と15連続得点で21−6。熊谷のサーブがキレまくっていたが、さぞ疲れたことだろう。第2セットは出だし1−4とされたが、ピンサ清藤のセカンドでサービスエースを奪い6タイ、中盤に5得点で14−10と引き離し、終盤も連続得点で21−14のストレート勝ち。
最近チームのサーブ力が今ひとつだったので、中盤で打つサーバーが活躍すると非常に楽な展開に持ち込める。「これでサーブ順が上がるかな?(笑)」と熊谷。

決勝は日本無線との対戦。第1セット前半はやや相手有利の展開から、高橋Aフェイント、無線Aフェイントがホールディング、本田連続サービスエースで12−11と逆転。無線FR強打をブロック、佐々木サービスエース、高橋強打で引き離し、21−15で先取。
第2セットは逆に前半東北の有利展開から無線が連続サービスエースを絡めて3点連取、11−13と逆転。佐々木強打アウト、高城強打ブロックされ13−17と離され、18−21で無線が取り返す。
第3セット、6−5から致命的な8連続失点を喫す。最早抗うことはできず、14−21でフルセット負け。この試合、サーブで優位に立った方がセットを取るような感じになった。第3セットの8失点中も3本はあった。準優勝に終わったが一応目標は達成、ここからまた強化して全日本総合、トップリーグ入替戦に臨むことになる。

◇  ◇  ◇

12月の入替戦出場チーム決定シリーズの組み合わせは決まっている。一週間前に開催された西地区の成績は以下の通り。
優勝:印刷局小田原、2位:のぞみクラブ、3位:日本化薬、4位:造幣局

決定シリーズの初戦は東2位と西3位が対戦することになるので、日本化薬が相手になる。勝てば東4位のリコーか西1位の実業団で苦戦した印刷局小田原。若手急成長の分、冬にはまた違うポジション、違った戦い方になっているかもしれない。
残る全国大会での戦いぶりが楽しみだ。