悪い男だ。
その男は間違いなく悪い男だ。
バスルームで一人、こらえ様のない悲しさと、悔しさで憤りながら、女はすすり上げるように泣いていた。
泣き声を聞かれたくなくて、思いっきりシャワーをひねった。
痛かった。体と、そして心が。
女は生まれて初めて、死にたくなるような嫌悪感に苛まれていた。
壁によりかかって、目を見開いたままシャワーを浴びる。
体をつたう水が全部、涙かと思うぐらい、女は泣きつづけた。
うめくような声が、彼女の唇から漏れつづける。
・・・タノニ・・・
ス・・・ダッタ・・・
・・キダ・・・ノニ
・・・ッタ・・・ニ・・・・・
・・・・キ・・・・・ダ・・・・ノ・・・・
・・・・・ス・・・・ダッタ・・・・ノニ・・・・・・。
・・・・・・・・・スキダッタノニ・・・・・・・・・・・・。
シャワーの音にかき消された言葉を、男は知らない。