エッセイ公開の2本目にしてこのネタは載せたくなかった。まぁ別に読んでいる人のほとんどは身内だから良いんだけど、クールを目指す俺にしては真っ向から対立するくらい情けない話なのー。
えー我が社の男子トイレには小さいのが2機と大きいのが1機搭載されているんですけどぉ・・。ああ回りくどいからやめます。小便器が2機と大便器用個室が1室あるんです。
さて、今やどこの会社でも当たり前の様に行なわれている省エネの為の消灯運動ですが、ご他聞に漏れずうちの会社も実施しているんです。トイレを出る時は電気を消す、というお決まりですね。ところがうちの会社のトイレには窓が無いので、電気を消すと昼間であってもそこは真っ暗な宇宙空間となってしまうんです。
アレは今から5年くらい前、まだまだ俺も隙だらけだった頃の話です。
いきなりですが俺は男だけどただの男ではなくクールガイなんで、大便器個室に入っている事を恥と感じるものなんです。だからそこに入っている時に小便器に用件のある人がトイレに入ってくると得意の忍法で自らの気配を消すんです。しかし消灯運動を行なっているので至極当然の如く用を足した人は、俺の存在に気付かなければ電気を消してトイレを出て行く訳です。そこに残るは真っ暗な空間において個室でひっそりスラックスとトランクスを下ろして便器に座っている俺。これは何とも情けない風景です。そしてその後いそいそと手探りでトランクスとスラックスを履いて個室を出てトイレの電気を点けに行く俺。全くクールじゃないです。しかしそう思いながらも打開策を見出せないまま時は過ぎていきました。
そもそも大便器個室に居る事を悟られるのが嫌だという事で気配を消しているのだから、他に入った人が出て行く時に電気を消していくのは本来喜ぶべきところなんですよね。しかし例えば電気を消された後に真っ暗なトイレの中で「へっへっへ。今日も作戦成功だぜ」と一人ほくそ笑むのは良いのですが、そこに更に別の人が入って来て電気を点けた時に、個室に誰か居ると気が付いたらその人は何と思うでしょう。「く、暗い中ジッと耐えてたのかよ・・。誰かが来るまで・・」と異様に思うはずです。そう思われてしまったら完全にクールではなくなりますよね。ですからやはりこの場合はそっと個室から出て電気を点けに行くしかない訳です。
果たしてその考えが正しい事であるかどうかは別として、その日も俺は個室にこもって用を足していたんです。するとまたしても小便器に用件のある人が入って来たので、俺は例によって気配を消してその人が去るのをジッと待っていました。でもって作戦の成功の証としてその人は出て行く時に電気を消して行った訳です。いつもの俺ならばトランクスとスラックスをしっかり履いて個室を出て電気を点けに行くのですが、その日に限って俺は何故か面倒くさがってトランクスは履いたけどスラックスはヒザの上という状態で片手で抑えながら前屈みになって個室を出てしまったんです。で、電気スイッチを押した瞬間・・・・・。
さあ、その時歴史が動いた。
なんとトイレのドアが開き始め、俺は直属の上司と目が合ってしまったんです。呆気に取られた俺は一瞬動きが取れませんでした。Oh!モーレツ。
「い、いやぁ電気消されてしまいまして・・」
俺は固まっている上司にそのままの言い訳をしました。スラックスを抑えているので中腰の姿勢で・・。しかし事はそれだけに収まらず、何とトイレ前の廊下を歩く新人の女子社員とも俺は目が合ってしまったのです。ふと気が付くとその日、よりにもよって俺は「キティちゃん柄のトランクス」を履いていたんです。
ドーーーン・・。
その後の数分間の記憶は闇の中です。いえ、恐らくあまりの恥ずかしさに自らをもってその記憶を封印してしまったのだと思います。(後々このキティちゃんトランクスには何回か泣かされます)。
その事件・・いや事故から約30分後、顔を赤くして席に着いて仕事をしている当の新入社員に遠回しに自分がキティちゃんファンである事を伝え様としたり(いや実際はそれほどファンではないんだけど)、トイレの構造上から電気を消される現象が良くある事であるといった、今にして思えばセクハラまがいのフォローを俺はひたすら行ないました。
その事故以降俺はトイレの個室に入った際に他の人がトイレへ入って来たら自らの存在をアピールする為に、敢えて咳払いをしたり携帯電話の音をカチャカチャさせたりするといった苦肉の策を取る様になったのです。
にしてもこんだけ技術が発達している世の中なんだからぁ、個室のカギが締まった時点で電気は消せない状態になる、とかにすれば良いんだよー、フンガー。
前のページへ