この作品は異彩を放つ宮藤官九郎脚本の映画です。
京都の舞妓さんに憧れるサラリーマンが、高校時代からの夢であるお茶屋(待合茶屋・置屋)での野球拳を実現する事に執念を燃やす物語です。

舞妓・芸妓を崇拝する鬼塚公彦(阿部サダヲ)は、自ら舞妓のホームページを立ち上げる「キ」が付く程の舞妓好き。
しかし実際に京都のお茶屋で舞妓と遊んだ経験はありませんでした。
そんな時に舞い込んできた京都営業所への転勤話。
願ってもない機会を手に入れた公彦は、そんな彼に想いを寄せる大沢富士子(柴崎コウ)を東京に捨てて意気揚々と京都へ向かいます。
京都に行けばお茶屋で遊べると思い込んでいた公彦でしたが、お茶屋の暗黙ルールである「一見さんお断り」の壁にぶち当たります。
紹介者が居なくてはお茶屋に入る事すら出来ないと知った公彦は、店に顔の利く自分の会社の社長に取り入ろうとします。
いきなり訪れた顔も知らない社員のとんでもないお願いに面食らった社長(伊東四朗)は、当然そんな依頼を最初断るのですが、公彦の異常な熱意から、会社の業績をアップさせる事が出来たら彼にお茶屋遊びをさせてやる事を約束します。
舞妓と遊ぶ事に執念を燃やす公彦は、その情熱を糧に新商品を開発し、見事それをヒットさせます。
そしてついに憧れのお茶屋遊びを体感する事が出来る様になった訳です。
舞妓を生活の全てにしている公彦は、一方でその道の遊びにかけては常連のプロ野球選手、内藤貴一郎(堤真一)が自身のホームページの「荒らし」だと知るや、彼に対するライバル心をむき出しにしていきます。
お茶屋遊びにかけて内藤に勝つ為には現職もいとわない公彦は、その後何の迷いも無く職を転々としていきます。
そんな彼を追いかけ様とした富士子は、自分も舞妓になる為に「上京」するのですが。。。

素人にとって理解し難いお茶屋のしきたりを、複雑な人間関係を交えて紹介していく本作品は、今まで見た事の無いテイストを含んだ映画だと思いました。
木更津キャッツアイ、タイガー&ドラゴン、我輩は主婦である、とどれも飛んだ設定を好む宮藤官九郎の作風らしく、この映画もハチャメチャな展開と絶妙なセリフの掛け合いが随所に盛り込まれています。
個人的に阿部サダヲはそんなに好きではないのだけど、彼の持ち味を十二分に発揮した内容である為、クドカンと阿部サダヲのファン及び、彼らが所属する劇団「大人計画」を支持する人たちにとっては堪らない作品なのではないでしょうか。
目一杯ふろしきを広げるも、さほどストーリーに破綻を来たさず最終的にうまくまとめてしまう辺りは「さすが」と思うと同時に、改めて期待を裏切らない宮藤官九郎マジックを魅せられた気がしました。
誰でも楽しめるとは言い難いのですが、先に観た松本人志監督の「大日本人」よりは一般ウケが良いのではないかと思います。



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