日々の生活を普通に過ごしていると、特に大きな出来事でもない限りその日は何てことのない何も無い日になってしまう、と思いがちです。だけど本当に何も無い日というのは逆に考えると滅多に無い事なんですよ。今日1日という日が2度と訪れない様に、今日でしか起り得ない出来事も必ずある筈なんです。だから「何てことのない・・・」と言いながらも自分は何かを探しているし、何かは起きてしまうモンなんです。つまりこのホームページのタイトルは、実際何てことのない日なんてありはしないんだ、という事を逆説的に皮肉った言葉でもあるんです。
決して今そう思ったからの後付けではないじょー。
良く日記なり日誌なりを書いている人が「今日は何も無かったー。ひでぶー」とか言ってるでしょ。だからそんな日なんて無いんだって。昨日と全く同じ言葉を話して全く同じ行動をしたかい?あり得ないっしょ。っつーかそんな事がもしホントに出来たらそれはある意味ちっとも何てことのない日じゃないっすよ。逆にスゴイ事です。
それでも「いやホントに特に何も無かったしぃ」とか言っている君。お、そうだ。丁度今は夏休みだから小学生なんかは毎日日記を書いている事でしょう。ホントに何も無い日と言うのが存在するのか、俺も丁度夏休みだからそれが可能かどうかちょっくら試してやろうじゃないのよ。ああやってやる、やってやるぞぉ、新型のモビルスーツが何だぁ!
と言う訳で夏休みであるこの日、俺は何てことのない何も無い一日を目指して過ごす事に決めたんです。
何も無い一日を送る為にはまず外に出てはいけません。外に出てしまったら、ローブをまとったジャイアント馬場がジャイアントカプリコを手に持って、ドスンドスンとスーパーの前を疾走している姿を見てしまう事だって100%無いとは言い切れないですから。
だから俺はその日、食事は全て家にある物で済ませようと思いました。また、家の中での食事と言ってもスパゲティーを作ったり、そばを茹でたりするのは危険です。お湯がナベから溢れてジューっとか言ったり、スパゲティーのソースが体に付着したりすればもうそれでひとつの出来事になってしまうからです。よってここは終始カップ麺。お湯をそそぐだけの工程であれば事件性も低いです。それからTVを観たりラジオを聴いたりするという情報収集行為も何かしらの出来事を起こす危険性があるのでやめておきます。あとは自らの動きも慎重にゆっくり行ないます。急いだりすると柱の角に足の小指をぶつけてしまったり、干してある洗濯物に顔を突っ込んだりして、それはもう俺から言わせればひとつのネタが出来た、ってなモンになってしまうからです。
そんな感じでその日俺は午後2時くらいまでは特に何も起こらず過ごす事が出来ました。
シーンとする室内。エアコンの稼動音と外を時々走る車の音だけが聞こえて来ます。しかしここで俺の悪いクセが出そうになりました。俺は何も無い状態でおとなしくしていると、くだらない妄想を始める習性があるんです。いけないと思い、ここは昼寝をして何もかも忘れる事にしました。
夕方5時に昼寝から目が覚め、そこで俺は再度この日自分に課せられた責任と使命を認識し、ベッドで体育座りをしながらジッと何も考えず時が過ぎるのを待っていました。そして夕飯のカップうどんを済ませた夜、今日一日を振り返りました。
おお・・。何もやってねぇ・・。何も無い・・。何てことのない一日を俺は過ごす事が、否、作り上げる事が出来たんだ!
思わず俺はガッツポーズをしました。
そんな感慨にふけっている時に突然家の電話が鳴りました。俺は何も考えず電話を出ました。電話の相手は母親からでした。
「アンタ。この間うちに来た時にパンツ忘れて帰ったでしょ?」
パ、パンツ?
「はぁ?何言ってんの?」
「何かお風呂場にアンタのパンツ落ちてたわよ。酔っ払って脱いだんじゃないのー?」
「そ、そんな事あるかー!!」
動揺する俺。確かにアノ日、俺は実家でだいぶ酒を飲んで記憶があいまいだった覚えがあります。
「お、俺のパンツじゃねーだろ。父ちゃんのだろ!それ!」
自信は無かったが俺のパンツであると言う確たる証拠もない。俺は言い切りました。しかし
「アンタのパンツしか考えられないでしょ。お父さん、キティちゃんのパンツなんて履かないんだからー」
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・・・・・・
・・・・・
ぎゃーー!それ間違い無い!俺のパンツだぁーーーー!!!
とまぁ、こんな訳でですね。何かしら事件や出来事というのは起きてしまうモンなんです。いやまぁ100歩譲って最後のキティちゃんインパクトが無かったとしましょう。でもね、この様にその日を振り返ってこうして文章にする事が出来る、っていうのは冷静に考えれば何も無かったとは言えないんですよ。しかも俺の場合、意識して何もしないで何も起こらない様に努めていたんですよ。普通に生活していればもっと何かしらの出来事があった筈です。
何てことのない何も無い日なんて存在しません。
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