<これは、俺にとって初の沖縄旅行を記録した内容になっています。よってにエッセイとはちょっと異なる内容になるかも知れませんのでよろしくお願いします>
俺の会社には、福利厚生の一環として毎年約10万円分のポイントをあらゆる形で利用する事が出来る制度があります。
チンケな会社なのになかなかやるな。。。
で、なんか遠くへ行きたい気分になったところに安い沖縄ツアーのキャンセルが出たので、俺はそれに飛びついた訳ですわ。
しかし俺は無類の飛行機嫌い。
と言うか、未だにあんなに大きな航空機が大空を飛んで何百という人間を移送しているなんて夢物語を信じていません。
瞬間物質移送機の様な、現代科学では解明出来ない何らかの移送手段を宇宙人から享受され、それをシレっと使っているんですよ。そうなの!
でも、それを今の人たちに公表してはパニックになると判断した当時の上層部の連中は、ちょうど何年か前にライト兄弟が飛行機を発明したのを良い事に、それの「大型バージョンを作った」的な感じで公表した訳です。
これが現代の旅客機事情に通じているのですよ。
しかし、交通機関に事故はつきもの。
何年かに一発くらい事故を起こさないと不自然だという事で、たまに実験的にあの大型飛行機に本当にお客を乗せて飛んだりするんです。
で、墜落事故が至極当然の様に起きる訳ですわ。
・・・・
・・・
と言う事を前提にした上で俺はその日、非常に懐疑的な気持ちを持って羽田空港に向かった訳です。3倍速い赤い京急線に乗って。。。
羽田空港に出発の3時間前に着いた(何か問題ある?)俺は、搭乗手続きを済ませ最後の晩餐としての東京ラーメンを食べました。
その後は緊張継続状態で空港内のシートに腰掛けていました。
ところが、無事沖縄に行ける保障なんて何もない状況なのに、俺ってば裸足に雪駄なんていうふざけた履物で「ヤツ」に乗ろうとしていた事に気付いたのです。
雪駄で飛行機搭乗の許可なんて下りるのか?と心配になった俺は友人のhiroに電話をしたのだけど、あの野郎これが最期の会話になるかも知れないってのに留守電設定にしてやがった。
あと50分ほどで出発という、俺の緊張もピークに達しようかというところで空港内のアナウンスが流れました。
「ANA127便。沖縄行きの搭乗口は変更になりました。ご注意願います」
的な事を言ってるんですよ。
何だよそれ。。。
簡単に言うと、最初の搭乗口から100mくらい離れた搭乗口に移動しなくちゃならないんす。
意味わかんね。。何で搭乗口が変わるの?
俺はとっとと荷物検査を済ませて中に入ってしまおうと思いました。
でもってお約束の金属探知器ですよ。
ピンポーーン。。
ヤバイ。。右腕に仕込んだサイコガンがバレたか?とか思ったんだけど、実際はベルトのバックルでした。
ところが、荷物の方で係員が
「こちらのバッグの右隅の方に金属で出来た何かがあると思うので確認させて頂きたいのですけど・・」
と言って来たんです。
俺は即座にピーンと来ました。
現地で自転車をレンタルしてツーリングに出掛けようと思っていたのだけど、機械的なトラブルに対応する為、俺は小型のドライバーやレンチがセットになっている工具をバッグに入れていたんです。
怪しげな目で俺の工具を隅から隅までチェックする係員。
あのさぁ。。。そんな分かり易いテロリストが居ると思う?明らかにバレバレの武器をバッグになんか入れるかっつーの。そもそも俺がそんな犯罪に走る様な男に見えんのか?
とか思ったんだけど、その時の俺は真っ黒なサングラスにヤクザが着ている様な鯉口シャツ(祭りシャツ)。そして7分丈の黒いパンツに雪駄という、どう考えてもヤバそうな格好だったのです。
しかし何とか誤解を解いた俺は32番搭乗口へ向かいました。
[俺の棺おけになるやも知れぬANA127便。こんな奴と、昨夜も日本酒で一杯ひっかけたに違いない顔も知らない機長ごときに俺の命を預けなくてはならないとは、、、無念]
既に乗客の搭乗は始まっており、俺も急いで改札を抜けました。
飛行機の入り口に向かう通路。
ここは瞬間物質移送機に通されるか、ホントに飛行機に乗せられるかの運命の分かれ道なのです。
機内に入り、独特の圧迫感とちょっとやる気を見せているエンジン音が俺の五感を恐怖にいざないます。
実際は瞬間物質移送機に通されて、この音はあくまでもダミーなのだという事を俺は心底願いましたよ。
[見よ。この緊張の面持ち。。]
ここから那覇空港に到着するまでの記憶は恐怖の為か高度の為か、少し曖昧なのでちょっと端折った文章になります。
着々と出発準備の為の乗客の荷物やシートベルトをチェックするフライトアテンダントさん。。
その作り笑顔が余計に不信感と不快感を増加させるんだけど。。。
落ちる可能性大なのだから、不安一杯でアテンダントさんも泣きたくてしょうがないくせに、会社命令で笑顔を絶やしてはいけないんでしょ。他の乗客はいざ知らず、その口角筋の微妙な歪みをこの俺が見逃すとでも思ってんのか?ええっ? 全くもぉ。。。
さて、いよいよ離陸という前に機長からの挨拶がありました。
「皆様いつもお世話になっております。ANA127便の機長、い、い、い、岩村でございます」
・・・・
・・・
え?
・・・
何今の。。
・・・・・
ラップ?
何自分の名前名乗るのにラップってんの?
てか違うよね。ドモったんだよね?
何でドモってんの?おい!
これから命がけのフライトをしようって時に、何更なる不安材料をプラスさせてんだ、ええっ!?
岩村この野郎!ちょっと顔出せゴラァ!キサマの顔を見ずにこのまま死ねるかボケェ!
とか俺が怒り心頭に達しているのに、更に岩村の奴は続いてこんな事をのたまいました。
「本日は部品交換作業によります搭乗口の変更ならびに出発時間の遅れで、皆様には大変ご迷惑をお掛けした事をお詫び致します」
だって。。。
はぁ?何だよ部品って。。。
何の部品交換したんだよ?
エンジン?
今あの窓の外に見えるあのエンジン替えたの?
それとも圧力隔壁?
ちゃんと何をどう替えて、何社製の部品を使ったか言えよ!大切な乗客によ!!
中国製だったら許さねぇぞ!?
と言う俺の心の叫びもむなしく、機長岩村からの細かい説明は一切無いまま127便は羽田を飛び立ったのです。
途中横揺れが頻繁に起こる度に目をつぶって「俺は新幹線に乗っているんだ」と自分に言い聞かせながら不安と戦っていました。
緊張の2時間余りが過ぎ。。。
那覇空港に到着した時、俺は24時間マラソンを走りきった萩本欽一よろしくグッタリとしていました。
取り敢えず二日酔いの割には良くやったな、岩村。
[東京とは打って変わって梅雨の明けた晴天の那覇空港。
ANA127便。頑張ったな。]
続く。。。
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