以前のエッセイでりんごジュース奮闘記を書いたのですが、そのりんごジュース「ふじ」をくれた友人がそんな俺を哀れに思ったのか、先日ナント「ふじ」を1ケース(6本入り)贈呈してくれたのです。「ふじ」には甘いけれども苦い思い出がありましたが、それ以上に絶品であるアレをそんなにも大量に頂けるという事で俺は有頂天になりました。
1リットル入りのりんごジュース「ふじ」が6個搭載されているケースを友人から渡された時、俺は6キロの重み以上に、あの苦しかった闘いの日々の重さを再び感じました。
頂いた瞬間に脇目も振らずジュースを痛飲したかったのですが、その日はその友人と出掛ける約束をしていたのでお楽しみは夜までお預けです。しかし友人と遊んでいる最中も俺の頭の中は常に「ふじ」が大半を占めており、いかに自分の「ふじ」に対する思いが大きいものだったのかを改めて実感したものでした。
夜になり家へ帰ってきた俺はセキを切った様に「ふじ」の入ったケースをひっぺがし中身を取り出しました。そして6本の「ふじ」を床に並べました。その姿たるや本来量産されていない筈のプロトタイプのガンダムが6機編隊を組んでいるかのごとき壮観な眺めでした。
パッケージにある貧乏そうな兄妹のイラストも、栓抜きを必要とする王冠も、何も変わっていません。上がった俺は思わずタイ式キックボクサーが試合前にやる妙な踊りを真似て踊り出しました。同時に日課である3連続コマネチを3セット敢行し、再び「ふじ」に出会えた事を何だか良く分からない神に感謝して今の喜びを精一杯体で表現したのです。
ある程度踊って満足した俺は早速久しぶりの「ふじ」の味を楽しむ事にしました。栓抜きが無いなどと言う同じ失敗は二度と繰り返しはしません。しっかり用意は出来ています。栓を抜くやリンゴのかぐわしい香りがスーッと鼻に入ってきます。覚えている。俺は覚えているぞぉ。ィヤッフフー。
もう匂いをかいだだけであのまろやかな味が呼び起こされます。
コップに「ふじ」を注ぐ? ちっちっちっ・・ノンノン・・。初めて飲んだ時はテーブルにぶちまけられた「ふじ」を口付けてすすったんだぜぇ。「ふじ」に普通の飲み方は似合わない。俺はラッパ飲みを敢行して奴を味わいました。
・・・・う、旨い・・・。口当たりがアッサリとしているにも関わらず実は濃厚なストレート果汁100%。他のどんなりんごジュースにも真似の出来ない懐の深さ。最強だ。まさしく最強だ貴様ぁ!
その夜、俺は「ふじ」をまるでビールのごとく浴びる様に飲んだんです。勿論ちゃんと味わってはいますが、2時間くらいかけて何と1リットルびんの2本半を空けてしまいました。
ゲプッ・・。うぇ・・気持ち悪ぃ・・。
でも気分が悪くなるほど「ふじ」を飲めるなんて何て幸せなんだろう。へへへっ・・・これであの屈辱だった初めての出会いも許せるってモンよ・・・。
俺は非常に気分が悪くなりながらも満悦に浸って眠る事が出来ました。
次の日の朝、強力に尿意をもよおしたので俺はトイレに駆け込みました。おー出る出る。なかなか止まりません。が、暫くするとリンゴの香りがしてきたんです。
ふっ・・・。その昔、川島なお美が自分の血液はワインで出来ているとか、全くもって非科学的なアホな事をほざいていましたが、俺はここにはっきり断言します。
俺のオシッコは「ふじ」で出来ている、と。
※前回のエッセイではりんごジュース「ふじ」の事を「むつ」と書いていました。っつーか「むつ」だと思い込んでいました。失礼しました。
えー、何かのオチを期待している人が居たらすいません。今回は再び「ふじ」に出会えた感動を記しておきたくこのエッセイを書きました。
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