この作品は25年前に同じ監督である大林宣彦がメガホンを取った映画「転校生 さよならオレ さよならアタシ」のリメイク版に当たります。
原作は「おれがあいつで あいつがおれで」と言う小説で、確か「小五時代」とか「小六時代」とか言う旺文社が発行している学年別雑誌に毎月掲載されていたと思います。
原作はいわゆる性への目覚め的な内容の話で、俺はドキドキしながら読んでいた記憶があります。
反面男の子と女の子の身体が入れ替わってしまうという設定に変な「気持ち悪さ」も感じていました。
よってその作品が「転校生」と言うタイトルになって映画化された後のテレビ放映を観た時も、作品の内容の出来どうこうよりも不快感が先に立ってしまった覚えがあります。
ある意味俺はこの頃多感だったのでしょうね(笑)。
しかしそんな俺もいいオッサンになった訳で、今回は極めて冷静に楽しく観られました。
主人公である斉藤一夫は当初尾道で生活していたのですが、両親の離婚を期に母親と共に母親の故郷の信州へ10数年ぶりに引っ越して来ます。
ここで幼馴染の斉藤一美と再会します。
一夫にとって一美は過去の恥ずかしい自分を知っている疎ましい存在だったのですが、一美はそんな一夫の気持ちを知ってか知らずか殊更一夫に対して昔話を持ちかけてきました。
そんな時二人は「さびしらの水場」という湧き水の出ている場所に久しぶりに訪れます。
ここで二人は誤って足を滑らし水場に落ち、水中でもがくうちに身体が入れ替わってしまいます。
入れ替わった一夫と一美は、その事実をそれぞれの家に帰った時の家族の反応で知る事になります。
ショックを受けながらも取り敢えず二人はそれぞれの「身体」で生活をしていこうと決めます。
あまりに男っぽい生活態度や言葉遣いへと変わってしまった一美に、一美の彼氏である山本弘はいち早く二人の身体が入れ替わった事に気付きます。そして尾道時代の一夫の彼女である吉野アケミにもその事を話し、二人は一夫と一美の生活のフォローをしていきます。
そうしていくうちに一美の身体にある異変が起き。。。
前回の時も思ったのだけど、この映画が不思議なところは、一夫役と一美役の俳優の演技が特別上手い訳でもないのに、観ている側は二人の身体が入れ替わった事にあまり違和感を覚えずに観る事が出来る、と言う点です。
特に一夫の心が入ってしまった一美の男の芝居には本当に何度も笑ってしまいました。
今回はロケ地が尾道ではなく山奥の信州なのだけど、非常に情緒豊かな情景を映像で楽しむ事が出来ます。
気になった点としては、大林監督の意向なのかカメラマンの意向なのか、カメラが少し傾いて撮影をしている場面が随所に出てくるところです。
左下がりか右下がりか、になっているシーンが非常に多く、何の意味があるのだろうと思うと同時に、神経質なA型の俺にとっては違和感を覚えて仕方ありませんでした。。笑。。
どうしても前作と比べてしまうのだけど、個人的には前作の方が二人の心情を詳細に描けており、お互いがお互いを知る事で惹かれあっていく、という過程を自然と受け入れる事が出来た様な気がします。
また、二人の身体が入れ替わる前の映像はモノクロ、という面白いアイデアが今回は無かった感じがしました。
ただ、これは思いきりネタバレになってしまうのでここでは書きませんが、今回は原作にも無い前回と大きく違う設定があり、そこを重要視した家族愛的な描写が盛り込まれており、そこはとても良かったです。
全体的に良い内容の作品だと思うのですが、大林宣彦と言う人がやっぱり分からないのが、「ねらわれた学園」や「時をかける少女」にもあった不思議な雰囲気です。
そして強引とも思えるミュージカル的な劇中での主人公の歌です。
何故そこで歌を歌うの?と俺なんかは思ってしまい、それまでの心の高ぶりが一気に覚めてしまうという場面が何点かありました。。笑。。
でも、25年前の転校生を観て「面白い」と感じた人や、尾道三部作(※)ファンの人は是非観ておくべき作品でしょう。
(※)「転校生」・「時をかける少女」・「さびしんぼう」の3作品。綺麗な港町の尾道を舞台にした映画
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