この作品は、平成16年度文化庁メディア芸術祭、漫画部門の大賞を受賞した漫画を実写化した映画です。
広島の原爆の被害に遭った人たちを通しての平和への願いと愛がテーマであると思います。簡単に言ってしまうと。
俺はこの作品の映画化を心待ちにしていました。
めずらしく原作を熟読した上での鑑賞でした。
原爆が落とされた年から13年後の昭和33年の広島が舞台になっている「夕凪の街」と、平成19年の東京が舞台になっている「桜の国」の2部構成的に物語は進行します。
両親と妹と、茨城の水戸に養子に出していた弟の5人家族だった平野皆実(麻生久美子)は、原爆で父親と妹を失くします。
その惨劇を目の当たりにしたショックで、彼女は自分が幸せになってはいけないものだと感じてしまいます。
そんな彼女の頑なな心を和らげてくれたのが打越豊(吉沢悠)です。
「自分は生きていてはいけない」と思っていた皆実に対して、打越は「生きとってくれてありがとう」と彼女に声をかけます。
皆実はその打越の言葉でとても救われた気持ちになったのでした。
時は流れて平成19年の夏。皆実の弟である石川旭(堺正章)の娘、石川七波(田中麗奈)は、行動が怪しいと言う父を尾行するうちに広島に辿り着きます。
そして彼女はこの地で昔の事を色々知っていきます。
原作漫画を実写は超える事が出来ないと言うのが俺の持論ですが、この映画はそんな俺でも納得出来る作品でした。
原作が100ページにも満たないので、映画では何点かのエピソードが加えられていた事と、家族構成が原作と少し違っていましたが、全く違和感はありませんでした。
映画化に当たっても、原作にあった柔らかい雰囲気と登場人物のそれぞれの思いがそのまま描写されていたのが何よりも俺は嬉しかったです。
皆実役を演じた麻生久美子は、正に俺の皆実のイメージにぴったりの女優でした。
七波役の田中麗奈も良い演技をしていたと思います。
全く予備知識の無い人がこの映画を観てどう思うか、俺には想像がつきません。
しかし、ただ反戦や原爆を強く訴えるだけでなく、人の温かみや深い愛を表現しているこの作品は秀逸と言えると思います。
原作を何度も読み返した様に、映画もあと何回か観てみようと思います。
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