夕凪の街 桜の国
この作品は、平成16年度文化庁メディア芸術祭、漫画部門の大賞を受賞した漫画です。
「ヒロシマ」が舞台になっています。
俺が初めてこの作品を読んだのは2005年の夏、折りしも広島に原爆が落とされて60年目の事でした。
この物語は昭和30年、広島に原爆が落とされてちょうど10年後から始まります。人々は普通に生活しているように見えますが、心の中には大切な人を失った悲しみ、助けてあげることの出来なかった人達への罪悪感、そして自分自身にもいつ起こるか分からない体の異変に対する不安などが渦巻いています。何十年たっても生きている限りそう言ったものは付きまとう事になる訳です。原爆の悲劇は今も続いているのですが、なにぶん昔の事なので若い世代の人たちの中には、正確にその事実を知らない人がたくさんいるのではないかな、と思います。この本を一人でも多くの人に読んでもらい、ちょっとした幸せさえもつかむことの出来なかった人達の無念さを感じて貰えればなぁ、と思います。
原爆関連の漫画と言うと定番の「はだしのゲン」がありますが、この作品では被爆者のリアルな描写などはほとんどありません。加えて100ページにも満たない短い作品だというのにも関わらず、とてつもなく胸を突くものがありました。俺はこの作品を今でも思い出した様に何度も読み返していますが、その度に何てことのない幸せの大切さを実感し泣けてきます。
当作品は映画化(実写)される事となり現在は撮影がスタートしたばかりだそうです。2007年夏に公開予定です。
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