恩知らずな月



月が私の真上にいる
私が歩くとついてくる
仕方がないので 家へ連れて帰って
お風呂に入れて ベットで寝かせた
朝起きて隣りを見ると もう月はいなかった
なんて恩知らずな月だろう!

夜 出かけようとしてドアを開けると
ちょこんと白兎が座っていた
もしやこれは鶴の恩返しではなくて月の恩返しかも?
そう思って私は白兎を部屋に入れてご飯をあげた

それから数日 白兎は毛を抜いて機織りをするわけでも
姿を隠すわけでもなく いつも私の隣りでスヤスヤ寝ている
これでは恩返しされたと言うよりも むしろ私が奉仕しているのでは?
まあいっか そう言って私は白兎の頭を撫でる
ふわふわの柔らかいおなかに顔を埋める

白兎が私の隣りにいる
私が歩くとついてくる
仕方がないので ポッケに入れて
いつでもどこでも 一緒にいる
満月の夜ポッケを見ると 白兎が消えていた
なんて恩知らずな白兎だろう!

あの白兎は 月だったのだろうか?
私は毎日月を見上げて月に祈る
もう何も望まないから もう一度帰って来てと・・

今日も 月が私の真上にいる
私が歩くとついてくる
もう 連れて帰ってあげないよ
恩知らずな月なんて!