いつか 2010.2.20

幸せな人などいない
幸せを数えようとするだけで

強い人などいない
強くあろうとするだけで

生きる意味などない
意味を作ろうとするだけで

志の先で
己に似た誰かが
笑うならいい

嘲りにしろ
賞賛にしろ
行ったり来たりで
上等だ



私はここにいる 2010.2.20

幸せだった記憶を思いおこす
例えばそれは頬杖をつく老婆のようで
もしくは
幼い日に命を落とした
迷える少女のようで

ゆるむことを
研ぎ澄まされた神経が
いつも邪魔をする

引き戻された目前には
コンクリートの荒野に
どぎつい赤いネオン
血よりもずっと軽く汚い
死ねない街に
死んだ人が横たわる
ゾンビのように蘇えった
細い手をとって
気のないダンスを踊る

ああ、どちらでもいいけれど
わたしは、踊り、歌い、飲み、吠える、

呼ぶ声が聞こえた気がした
どこからか、仲間の遠吠えが
最後の息に交じって
泣く声が



椅子 2010.2.20

ものは傍にいた人を好きになる
我が家の椅子が
座って
と、あなたを恋しがる



なんでも 2010.2.20

あなたが走り寄ってきたら
抱きしめかえすのに
あなたがキスしてくれたら
舌を出すのに
あなたが胸に触れたら
腰をそらすのに

あなたがいたら
ねえ、わたし
なんでもするよ



やってくる 2010.2.20

横断歩道を見ると
あなたが渡ってくる
気がしてしまう

目をそらす
空をみる
あなたが降りてくる
気がしてしまう

あなたはどこからかやってくる
わたしに向かって



雪みたいな 2010.2.20

降ってもない
雪が見える
なに?
夢の残像
あなたの思い出

追いかけたい
叶わない
そんな

みたいな



雪 2010.2.20

音がないからわからないじゃない
降ったなら教えてくれなくちゃ

傍にいるなら伝えてくれなくちゃ



セックス 2010.2.20

この世にいないはずのあなたとセックスして気持ちよくて泣いた。



あなたなのに 2010.2.20

写真の中のあなたはワインを飲んでた
楽しそうに笑って
わたしを見つめてた

今あなたは
ワインも飲まないし
なにも食べないし
声も出さないし
わたしを抱かない

肉体がすべてではないけれど
あなたを奪われた

写真の中のあなたは誰だろう

あなたなのに
あなたじゃないみたい
死んだのに死んでないみたい

今わたしは
生きてるのに・・
そうじゃないみたい



カップル 2010.2.20

あなたと寄りを戻したい
やけぼっくりに火をつけたい
でも
あなたはこの世にいないから
無理だよね

いつまで
待てばいいのかな・・



裏切り 2010.2.20

悲しみに溺れるのは
誰にでもできるから
そうはしない

けど、
あなたに会いたい気持ちは
どうにもならない

慣れて行く
諦める

そんなこと
できていいのかな?

永遠を誓った愛を
裏切ることにならない?



しあわせ 2010.2.20

愛し合って
眠り
木漏れ日の中で
ぐずぐずしながら
にやにやしながら
目覚める幸福を
私は知ってる

あなたに会えてよかった
私の何を投げうっても
それだけは言える

だけど、
ねえ、これから
真っ暗な宇宙で
あなたの面影を探し
行きたくもない星に辿り着き
気休め程度の幸せにごまかされ
安穏と暮らすなんて
まっぴらだよ

ねえ、私はあなたといたいんだ
ひとりでも
あなたといるよ



春を待つ 2010.2.8

あなたに出会えて
神様に感謝した
あなたを奪った
神様にあきれた

愛してくれた
あなたに感謝した
ひとりで先に逝った
あなたに怒った

いろんな感情が
流れのない海のように
今 どこまでも広く横たわる

水鳥なら
ここで
毛づくろいをしながら
春を待とうか

あなたも神もいない
この場所で

ただ時折おりる木漏れ日をうけた水面が
きらきらと光るのを
ぼんやり見ながら

春を待とうか



蜘蛛 2010.2.8

木の幹に穴を掘り
じっと獲物が通るのを
待つ
蜘蛛がいる

餌を捕らえる以外は
穴の中で
じっと耳をすませているのか

私も
穴の中の蜘蛛と同じ
生きとし生けるものなら

なにを待ちながら生きようか
どんなふうに耳をすませようか

全てがただの命なのに・・
時々 それを忘れてしまう

この世の全ての生き物の
不思議さと美しさに
逞しさと健気さに
敬服しながら

己のややこしさにぐったりだ



再生 2010.2.8

私は小さく死んだんだな
だから
生まれかわらなくちゃいけないんだ



風 2010.2.8

なにを思って生きればいいかな
ただ意味もなく時が過ぎていくよ
あなたに会えずに時が砂のように指をすり抜けて
ああ、風にさらわれる



いない 2010.2.8

私にはあなたがいる

そう思うけど

あなたは、いない



リング 2010.2.8

笑ったぶん泣きたくなる
頑張ったぶん死にたくなる

無理はよくない
でも、しないと生きれない

どこまで続くのかな・・



少し子供 2010.2.8

「ずいぶん大人になった気がする」

大人はそんなこと言わないから

私はいまだにすこし子供



ひとりごと 2010.2.8

死にたい
と、ついつぶやく

会いたい人が死んだから
会いたいのかわりに
ついつぶやく



闇 2010.2.8

夜がこわい
部屋が広い
あなたがいないことが
じっとりと
押し寄せる

やり過ごすしかない

物音がする
あなたかと思う
嬉しい

そんな一連を
もうやめなきゃ



逃避 2010.2.8

あなたと会うことで悲しみを忘れられた
今はあなたがいないことがなにより悲しい

悲しみから逃れたい
悲しみに溺れたい

どちらでもいいから
一瞬でも
我を
忘れることができれば
楽なのに



無 2010.2.8

なにもしたくない
なにもしたくないと
願うことすら
おっくう



雪 2010.2.8

嬉しくて悲しくて泣いた
雪が降って
泣くしかなかった



祈り 2010.2.1

私にどんな美しさがあるだろう
したたかな強さがあるだろう
生きるために生きる
ほんの小さな覚悟さえ持ち合わせてはいない

花のように
光のように
木のように
風のように

ただ命をまっとうする健やかさを
どこに忘れてきてしまったのか

いま

こころ、ここに

空に祈りを

木漏れ日に愛を



おとこのひと 2010.2.1

男に撫でられたり
キスされたり
抱かれたり
することでしか
癒されない痛みがある

それはすっきりと正しいことだ

ケーキが甘くて美味しいように

満ち足りて嬉しいことだ

お日様を見れば笑顔こぼれるように

明るくて眩しいことだ



恋人 2010.2.1

寂しくて 会いたい
会えなくて もっと寂しい
それで・・
怒ったりわめいたり
できるのを
恋人と呼ぶのかな



P.S アイラブユー 2010.2.1

死んだ恋人から手紙が届く
本を読んだ

あなたからは手紙も届かない
注文してくれたはずの
不毛布団だって
届かない

私にはなにもない
怒ってみても虚しい

思い出
それだけを抱いて
生きていけということか

愛があればいいじゃないか
ということか

残酷で愛しい
男だな



わかってるけど 2010.2.1

死と口に出しては
ダメかな。。

今は逃れたくない
もう少し
死の近くに
あなたの近くに
気分だけでも
いたいのさ



ありがとう 2010.2.1

あなたにはわたしがすべてだった
わたしにはあなたがすべてだった

そんな愛をありがとう



約束 2010.2.1

世界中の誰よりも大事な女だと
何があっても守りたい女だと
思われながら生きるのと
そうでないのとでは

世界が違う

愛されている
それだけで体は浮かぶ
絵の具に黄色が混ざる
足元で小花が揺れる

もう一度誰かに愛される日は来るのだろうか

もしその日が来たら
今度こそ、
胸の中で
終わるよ



つづき 2010.2.1

つづき
があるのは残酷だ
希望という名の
試練じゃないか



自由 2010.2.1

みんな自分のことをわかっているような振りをする

私は自分のことなどわからない
人のことなど尚更だ

わからない
そのことの清々しさに
酔ってみよう

自由だな
いい気持ちだ



どっちだ 2010.2.1

流される
それ以外に生きる道はあるのか?

小船なりに舵をとるなら
明日は
どっちだ?



かいじゅう 2010.2.1

コントロール不可能
そんなの昔からだった



ピリオド 2010.2.1

ピリオド
そう決め付けなければ
生きて来れなかった

愛は愛。
それで終り。



紺碧の海 2010.2.1

論理で辿り着けない
言葉では言い尽くせない
なにかが
私たちにはあるのかもしれない

それは桜の花びらが落ちて少女が泣く
道端のありを踏み潰して
少年が笑う
人々の歩みだろう
業であり性だろう

涙があり皮肉がある
笑顔があり蔑みがある
闇があり光の通り道がある

迷宮という人生を
与えられた
小鳥なら
紺碧まで
突き抜けてしまえ

空か海かガラス窓かを
間違えては
傷ついて
残された羽で
また飛べばいい



無間 2010.2.1

眠りながらあなたを探す
あなたに会いたい
髪をすきながら
綺麗だねと言って
胸に触りながら
可愛いと言って

探しても見つからなくて
疲れ果てたの
寝ても覚めても会いたい私に
随分と冷たい夢だわ

あなたはあんなに優しいのに
その切れ端さえ
掴めないなんて




Top of Page

はじめまして    詩&写真  utatane日記    散文  童話  リンク  BBS