欲しいもの 必要なもの



 欲しいものと必要なものは、似ているけれど少し違う。
必要なものとは、ミツバチには蜜とか、河童には水とか、草木には光とか、
絶対になくては生きて行けないもの(なくなったら死にそうなもの)だと思う。
欲しいものは、もっと娯楽に近くて、遊び心を満たすもののような気がする。

 現代社会で生きる人間にとって必要なものは、衣食住だろう。つまりお金。
衣服も食料も住居も、全てお金で買えるから。
と、いうことは必要なものは仕事ということになる。
基本的に仕事をしなければお金は貰えないので、したいしたくないに関らず、
人は皆仕事をしてお金を稼がなければいけない。

 では、必要なものだけで生きて行けるのか?
実質的には生きては行けるだろうが、それだけでは物足りなさを感じる。
そして、今度は欲しいもの探しの旅に出るのだ。
男だったら、地位、名誉、有り余るお金、美しい女、気立てのいい妻、安らぐ家族、
外車、行き着けのレストラン、避暑地の別荘、船に飛行機に宇宙船?
魅力的に映るものなど無限にあるだろう。
女だったら、美貌、知性、安定した仕事、刺激的な男、優しい夫、可愛い子供、
ブランド品、装飾品、気さくな女友達、海外旅行に永遠の若さ?
やっぱり、魅力的に映るものなど無限にあるだろう。
お金で買えるものも買えないものも、手に入れようと必死になる人間たち。
基本的には、欲しいものだから手に入らなくても困らないはず・・
でも、ムキになるともうキリがない。

 私にとって必要なもの(なくなったら死にそうなもの)は、比較的安定した精神状態だ。
そのためには、比較的安定した生活環境を整えなければいけない。
もちろん、ある程度余裕のあるお金は絶対に必要。
そして、ある程度の寛容さを持った男も必要だ。
人付き合いが苦手な私にとって、恋人は親のような親友のような愛犬のような存在。
水のような光のような主食のような存在だ。
いなければ、精神のバランスは崩れ、肉体的にも崩壊する。

 少しも自慢にならないけれど、私は物心付いてから今まで、
恋人らしき男が長期間(数ヶ月以上)いなかったことがない。
いないと生きていけないから、自然と見つかるのだと思う。
何もかも依存するとかそういうことではなく、
精神の安定にどうしても必要なアイテムなのだと思う。

 私にとって必要なものが、お金と男だとしたら、
欲しいものは何だろう?
詩を書く才能? 歌を歌う才能? 
そんなものは、欲しがるようなものではない気がする。
もっと言えば、欲しがってはいけない種類のものだと思う。
だとしたら、美貌? 知性? 
それも、欲しがらなくても努力すれば自然と手に入るだろう。
では、何だろう?
わかった! 情熱だ。

 何かをどうしても手に入れたいと願う貪欲な精神。
誰にも負けまいと込み上がる強靭な意思。

 情熱が欲しい。情熱が欲しい。情熱が欲しい。
そう3回唱えているうちに、もうどうでもよくなってしまう。
この情熱の薄さをどうにかしたい。