人魚姫の微笑み



口のきけない人魚姫
あなたは好きと言えません
無垢でおバカな人魚姫
駆け引きなんて知りません

ただ遠くから見つめてた
ただ心から祈ってた
王子様の幸せを
そしていつの日か結ばれる日を

口のきけない人魚姫
せっかく手に入れた足なんて
なんの役にも立ちはしない
純粋で真っ直ぐな人魚姫
美しい目で物語らなきゃ
瞳だって役不足

泡となってもいいなんて
それでも悔いはないなんて
嘘ばっかり

口のきけない人魚姫
あなたに言葉をあげましょう
心を綴り王子への
置き土産にするといい

海の泡を見るたびに
王子の頬を涙がつたい
海の波間に零れれば
風はあなたのために泣き
波はあなたのかわりに踊り
そこでふたりは出会うから

人魚姫
あなたはそれを拠りどころに
神々しく微笑んで
夕日色の指先で
王子の唇を奪いなさい