2歳から42歳までの海馬形成の進展
  O Saitoh(国立精神神経センター)他
  Brain2001;124(7):1317-1324

 自閉症では、従来から辺縁系と呼ばれる脳の一連のシステムが障害されることにより記憶や認知機能の障害が生じていると考えられており、この辺縁系の発達段階の障害が、種々の自閉症の症状に関連しているとの仮説がある。しかし、辺縁系の発達段階における変化については検討されていない。そこで、著者らは、MRIで脳の画像をとり、海馬のarea dentata(AD)、subiculum(岬角部)、CA1およびCA3(CAS)の水平断面積を算出した。自閉症例は29カ月〜42歳で、正常対照群と比較した。自閉症群では、正常対照群と比較してarea dentataの横断面積が有意に小さかった。正常と最も大きく差があったのは、29カ月〜4歳の小児自閉症例だった。CASの横断面積は年齢と強い正の相関がみられたが、自閉症例と正常対照群では有意差がなかった。この結果は、辺縁系の解剖学的な異常が、早期の自閉症例から認められた最初の直接的な証拠である。この変化は、発達期から中年期に至るまで存在している。