(コメント)この内容は、「THE HANDBOOK OF AUTISM;2nd Edition; A guide for parents and professionals 1999」という本の、療育とカウンセリングというタイトルの最後にでていた、実地上の助言というパラグラムを訳したものです。

実地上のいくつかの助言

自閉症児の療育に関する以下の記述は、その子の発達のレベルに関わらず、その原則を理解するための架け橋となるようなものである。自閉症児は自分の周囲の世界を感じ取ることが困難であることを十分に理解しながら、彼らの周囲のものを意味のあるものにする努力が、彼らが学んでいくうえで必須なことである。そのことを援助する目的で、いくつかの助言を載せる。

社会的理解のために

・行動上のはっきりしたルールを示すこと。それには、長い説明は不要で、「悪い子ね」とはいわず、自閉症児がその意味を理解する努力をする必要のないような簡単なもの。
・攻撃的な行動はやめさせること。それは、たとえ無意識であっても、他の子どもになんら影響がない場合であっても同じである。
・共有することを促す。他の子どもが玩具を-その玩具は自閉症の子どもにとって強迫的な興味の対象であるかもしれないけれど-その玩具をひっくり返しても許さなければならないことを。
・食事時間が楽しく社会的なことであることの重要性を強調すること。そこでは適切な行動と許容可能なテーブルマナーが必要であることを。食事時間は日常生活上また時刻の理解を強化するためにも節目として利用する。これらの理由から、「イヌ食い」したり動きながら食べるのをやめさせる。保育園や私設保育園でのおやつもまたこれらのスキルを学ぶうえで良い機会となりうる。
・子どもが通常の幼稚園や学校にいる場合には、自閉症の子どもにとって何が困難であるかを簡単に説明してあげることで、支援してくれるスタッフにとって助けになるだろうし、通常とは違ったりあるいは不適切な行動ヘの誤解を防ぐことができる。
・子どもが自分自身で選ばなかったからといって、種々の活動から手を引かせないようにすること。このことは自閉症の子どもが新しい環境への抵抗を克服したり自分の世界を広げるための唯一の方法かもしれない。
・予想をすることによって、不安が生じるのを軽減させること。子どもは、訪問したり、休日を過ごしたり自分の家の中を移動するといった、環境の変化で予測されることを知る必要がある。次から次へと絵画や写真を見せることは、ときどきだけでなく日常的にもそうすることによって、変化というものに対する理解を強化するための簡単な視覚的タイムテーブルとなりうる。


社会的コミュニケーション

・子どもの注意を得るためには、名前を呼んだり触れたりすること。
・子どもとは単純な言葉で話をすること。質問攻めにしたり長い複雑な説明はしないこと。
・プロンプト(補足)やキュー(合図)を用いて子どもに理解させるようにすること。これには、ジェスチャーや表情、話している内容について注意を向けさせるすべてのことが含まれる。
・社会的な場面で子どもに適切な言葉を使うように教える。たとえば、ものを尋ねたり、探しているときに助けを求めたり、どうぞ(please)やありがとうを言ったりすることである。
・子どもに考えつくまでの時間を十分に与えたり、一緒になって考える時間を持つこと。考えはじめるために援助が必要な子どももいる。
・子ども自身のコミュニケーション法を知ること。しかし、それが不適切である場合には、きちんと示してあげること。そうでなければ子どもは、何が問題となっているか学習できないだろう。子どもには「だめ、今はそのことについては話していないの」と言われることが必要な場合もある。
・子どもの言っていることが、その言葉がたとえその場にあったものでなくても、何を意味していることかを考えること。反響言語のような言葉であっても、特定の不安に関連したような意味を持っていることがあります。
・子どもが要求するときに使う言葉を教えてあげること。「mapping」という言葉は、時にこのことを説明する場合に良く用いられる。例を挙げると、「あなたは今わたしにチャックを締めて欲しいのね」
・子どもは、質問や要求の代わりにその状態を用いることがある。たとえば、「今そこに置いて」という意味が実は、「そこに行くの?」あるいは「きちんと固定して」という意味のことがある。「それを上に持っていくの」このような言葉は、「mapping」のよい機会を与えてくれる。
・いろいろな解釈のできる質問は、子どもが理解したりその言葉に反応しづらいため避けること。たとえば、「今日学校で何があったの?」といったことである。
・自閉症の子どもにとって、より小さい子どもは、自分と同年齢の子どもと比べよりよい「会話パターン」を得るのに適していることがある。弟妹の存在は、自閉症の子どもにとって言葉やコミュニケーションのスキルの発達をしばしば促進する。
・皮肉は言わないこと。子どもはそれを理解できず、混乱することがある。
・子どもをからかわないこと。たとえば、「車はあなたの部屋ではないのよ、歩くなら自分の部屋にしてちょうだい」。子どもが文字どうりに理解することに注意してください。
・子どもは意味のはっきりしていて間違いの起こしそうもないようなことには混乱しないということに配慮すること。たとえば、小さい子どもは熱いものに触ってはいけないことを教えられます。彼がビデオレコーダーをいじるのを止めさせるために、彼の両親はそれはとても熱いと言います。この試みは、「熱い」という意味が何なのかというのを混乱させる点で、有効な方法ではありません。もっと言い方法は、いつも「だめ!」と言うことです。


社会的行動

・幼児期には子どもと一緒に指し示すゲームや分けることに注意するようなゲームをすること。このことは、はぐくむ遊びへと広がり、新生児期から発展し、継続していくべきものである。
・感覚的な活動(匂い、味覚、感覚)や言葉を使用するもの(バリバリ、まずい、甘い、すっぱい、ざらざら、滑らか、硬い、柔らかいなど)を促すこと。
・子どもに興味やいつもしていること以外の遊びをさせること。
・「ごっこ遊び」はとても大事な遊びであるが、(人形などに)役割を持たした遊びが、必ずしも「ごっこ遊び」ではないということを知っておくこと。子どもの単純な遊び-たとえ学習したものであっても-目的のない活動よりはずっとよい遊びである。
・特に強迫的であればなおさら、テレビやビデオを見る時間をコントロールすること。
・子どもがものごとの違いを十分に理解しているほど成長しているときには、何が本当で何が架空のことなのか話してあげてください。
・簡単でもルールのある遊び(たとえばボードゲーム)や屋外でのスポーツ(体操クラブなど)を勧めてください。

 このリストは、包括的なものではなく、必ずしもすべての自閉症者に当てはまるものではありません。それぞれの子供たちは、自分の中に味覚や興味、そして長所や欠点を持っています。
 親は子供たちの要求の範囲内にある活動や、クラブ、プレイスキームなどを探す努力をするべきです。必要なコストは、政府や官庁、寄付金などによって賄われることがあります。