自閉症例の臨床検体における染色体異常

Wassink TH(アイオワ大学)他
Psychiatr Genet 2001;11(2):57-63

著者らは自閉症遺伝子検索にさらに情報を得る目的で、自閉症者のカリオタイプ(染色体の核型)を多くのサンプルから検討した。対象は、1980年からアイオワ大学精神科クリニックを受診し、自閉症と診断された患者で、アイオワ大学のデーターベースからデーター抽出した。1980年から1998年の間にクリニックを受診した患者のうち898例が自閉症と診断された。その中で278例(30.1%)が細胞学的検査を受け、そのうち25例(9%)が染色体異常を持っていた。その最も多く見られた染色体異常は、脆弱X染色体とそれ以外の性染色体異常、第15染色体異常であった。この結果からは、染色体異常の関与は少ないが、自閉症例では有意に染色体異常の関与が考えられ、その内第15染色体と性染色体が注目されることが示唆される。


コメント:この報告では、自閉症における性染色体と第15染色体の重要性が強調されています。これは、従来の報告を追認したものですが、それ以上に私が興味を持ったのは、精神科クリニックで自閉症と診断された患者の中にかなりの脆弱X症候群の患者さんがいたことです。脆弱X症候群は自閉傾向という知的異常に加えて、特徴的な身体異常で知られています。現在では血液検査で簡単に診断可能です。今後の遺伝カウンセリングの意味でも、是非鑑別すべきものと思います。