自閉症の分子遺伝
  松島宏(東京慈恵会医科大学)
  小児科診療2001;64(7):1076-1077

 本雑誌の「最新の研究のトピックス」でのショートレビューです。これまでの疫学研究から、自閉症の発症には遺伝的要因が大きく関与してと考えられる。自閉症はおそらく、単一遺伝子異常で生じるのではなく、3〜6つの複数の遺伝子が相互に影響しあって起こると推測されている。明確な自閉症の責任遺伝子は現在まで同定されていないが、近年の5つの大規模な自閉症関連遺伝子座のスクリーニングの結果から、いくつかの遺伝子が自閉症の候補遺伝子として同定されている。比較的共通している遺伝子座は、7番あるいは15番染色体である。特に7番染色体はその染色体異常を有する自閉症の報告があり、自閉症関連遺伝子1(ARG1)と命名された遺伝子のクローニングも行われ、責任遺伝子の存在が強く疑われている。これまでの研究で共通した結果が得られないのは、自閉症という疾患がかなり不均一な病態と考えられ、均一な疾患集団を対象にすることが難しいことによるかもしれない。今後さらに大きな対象の解析が必要である。