15染色体長腕近位側でのinterstitial duplicationをもつ自閉症スペクトラムの表現型

Bolton PF(ケンブリッジ大学)他
Am J Med Genet2001;105(8):675-685

この研究は、Prader-Willi症候群/Angelman症候群の関連遺伝子領域(PWACR)を含む、染色体のinterstitial duplicationを持つ例での表現型について検討した。 6家系22例の患者について、知能検査、精神学的検査、身体奇形などを詳細に評価した。 自閉症スペクトラムの頻度とともに親由来の重複効果(duplication effect)と表現型効果との関連について 特に注目した。患者の評価は、同一家系内の非患者と比較した。 結果は、この領域の重複は種々の程度で知的障害や運動調節障害と関連していた。 対象者のうち4例は広範性発達障害と診断されていた。この4例中3例は発端者であり、1例のみ古典的自閉症の診断基準を満たしていた。重複と自閉症スペクトラムの診断が分離しているという証拠はほとんどなかった。 父親由来の重複はほとんど表現型効果を増加させなかった。この所見から、PWACR領域での重複は、 発達遅延を引き起こすが、必ずしも自閉症スペクトラム異常は生じないことが示された。 また、表現型の発現は親由来の重複に依存しており、発達障害の病因として母親由来の遺伝子が重要であることが示唆された。 表現型の範囲とその機序を明らかにするには更なる検討が必要である。

(コメント)第15染色体長腕での遺伝子異常の特徴の報告です。Angerman症候群はご存知の通り、自閉症症状を起こす疾患です。この報告では、15染色体長腕の異常が必ずしも自閉症スペクトラム異常を起こすわけではないとしています。