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戦後処理問題の現状



 
 
 
 
 
 
 
 
 




 

1999年08月28日 共同から

戦後処理、清算できるか負の遺産
〈全面解決なお遠く〉
 

 小渕政権は、国旗国歌の法制化や靖国神社への首相公式参拝に向けた環境整備などに乗り出す一方、在日韓国人の元軍人・軍属への補償など「負の遺産」の清算にも着手しつつある。自自公の安定した政権基盤を背景に「二十世紀中に戦後政治の総決算を」と意気込む小渕恵三首相だが、歴代政権がなかなか果たせなかった戦後処理問題の解決を目指し、どこまで道筋を付けることができるか―。

 小渕政権のけん引役の野中広務官房長官は「アジアの国々の人々には、戦後処理の残った問題があり、その傷をどのように埋めていくか、わが国の重要な任務だ」と、戦後処理に意欲を示す。戦後処理問題については一九九五年、当時の自社さ政権に「戦後五○年問題プロジェクト」を設置。九六年三月に十二項目の合意をまとめ、従軍慰安婦問題解決を目的に設けられた「女性のためのアジア平和国民基金」や中国での遺棄化学兵器処理問題を盛り込んだ。
 小渕政権は発足以来、遺棄化学兵器廃棄に関する日中覚書に署名し、来年度予算に処理作業経費五十億円を計上するほか、@在日韓国人の元軍人・軍属に対し、特別立法による一時金支給Aアジア歴史資料センターの設立準備―などの方針を固めている。
 しかし、野中長官が解決すべき問題の一つとの認識を示した香港の軍票問題については、まだ検討されておらず、「女性のためのアジア平和国民基金」は行き詰まっている。
 戦後五○年問題プロジェクトの合意から外された「旧植民地出身の軍人・軍属の補償問題」は、台湾人については既に一時金の支給がなされ、在日韓国人についても支給の検討が始まっているが、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)国籍の人については手つかずのままで、全面的解決には程遠いのが実情だ。

▽遺棄化学兵器処理
 旧日本軍は第二次大戦中に、中国に約七十万発の化学兵器を遺棄したと推定され、化学兵器禁止条約により、日本は二○○七年までに処理を完了するよう義務付けられている。
 政府は、毒性と爆発の危険性の低いものから三段階に分けて処理する方針で、二○○○年度から「赤筒」と呼ばれる嘔吐(おうと)性ガスの処理を先行して開始する。
 初年度の処理経費として五十億円を計上する方針で、総額では二千億―五千億円が必要とみられている。日中両国政府は七月末、処理の枠組みを決めた覚書に調印、解決に向け動きだしたが、期限内の処理は困難とみられている。

▽軍票
 「軍用手票」の略語で、旧日本軍が物資調達などのために発行した特殊な紙幣。占領地住民に対し強制的に現地通貨と交換させた。日本は敗戦直後に無効を宣言。住民らは、無価値となった軍票の換金を求め提訴したが、「損害を補てんするかどうかは立法政策の問題」などとして、現時点では請求はいずれも棄却されている。
 大蔵省によると、軍票は香港、インドネシア、マレーシアなどで計約四十五億円分(当時)を発行。香港住民の被害が最も大きく、香港を含む中国方面の発行額は約三十四億円(同)に上った。

▽軍人・軍属問題
 旧日本軍の軍人、軍属だった在日韓国人は、日本人並みの恩給支給など戦後補償を求めている。日本の敗戦により、約二十万人に上る朝鮮半島出身の軍人、軍属は日本国籍を失うと同時に、日本国籍を前提とした恩給法、戦傷病者戦没者遺族援護法上の受給資格を失った。加えて政府は一九六五年の日韓請求権協定により「日韓両政府間では請求権の問題は完全かつ最終的に解決された」との立場を取っている。しかし「個人の請求権は失われていない」として訴訟が起こされ、裁判所もたびたび法的救済措置の必要性を認めている。戦争犯罪を問われ日本軍のBC級戦犯として処罰された人も含まれている。

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=戦後処理問題の歩み=

1895・4 日清講和条約調印。台湾植民地支配開始
1910・8 日韓併合条約調印。朝鮮植民地支配開始
31・9 柳条湖事件。満州事変始まる
38・4 国家総動員法公布。朝鮮で陸軍特別志願制度実施
39・7 国民徴用令公布
42・4 台湾で陸軍特別志願制度実施
44・9 台湾に徴兵制実施
45・8 日本の敗戦と植民地の解放
46・2 軍人恩給廃止
50・6 朝鮮戦争始まる
51・9 サンフランシスコ講和条約調印
52・4 サ条約発効。主権回復。台湾、朝鮮出身者の日本国籍喪失確定
52・4 日華平和条約締結。台湾が日本政府への請求権を放棄
52・4 戦傷病者戦没者遺族援護法公布
53・8 軍人恩給復活
65・6 日韓基本条約など締結。韓国、日本政府への請求権を放棄
72・5 沖縄返還
72・9 日中国交回復。日中共同声明で中国は日本への戦争賠償請求の放棄を宣言
87・9 台湾人元日本兵の遺族と戦傷病者に対する弔慰金制度制定
90・9 自民党の金丸信元副総理と田辺誠社会党委員長が朝鮮民主主義人民共和国を訪問。自民、社会、朝鮮労働党が三党共同声明
90・10 韓国の元従軍慰安婦などでつくる「韓国太平洋戦争遺族会」が国家賠償を求めて東京地裁に提訴
    *注 91.12.6 韓国・遺族会は弁護士をつけ日本を相手に補償請求、東京地裁に提訴
91・1 日朝国交正常化交渉開始(その後、中断)
91・11 韓国・朝鮮人元BC級戦犯らが国家補償などを求めて東京地裁に提訴
93・8 香港住民が軍票の補償を求めて東京地裁に提訴
95・8 「植民地支配と侵略への反省」をうたう戦後50年の村山富市首相談話を発表
96・3 与党(自社さ)戦後50年問題プロジェクトが「女性のためのアジア平和国民基金」など十二項目の施策を発表
99・7 中国との間で、遺棄化学兵器処理に関する覚書を交わす
99・8 政府、自民党が靖国神社への首相公式参拝実現に向け検討開始
99・8 国旗国歌法成立
 

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共同記事つづき
 

〈田中宏一・一橋大教授に聞く〉
 日本アジア関係史専攻の田中宏・一橋大学教授に戦後処理の在り方を聞いた。

―今回、在日韓国人軍人・軍属の戦後補償問題で政府に動きが出てきた理由をどう考えるか。
 「昨年九月、元軍属の在日韓国人が日本人と同様の補償を求めた訴訟の判決で、東京高裁は『(原告らは)現在、補償面で日韓両国から放置されている。速やかに対応することがわが国の政治的、行政的責務だ』と指摘した。これは一九九○年以降の、戦後補償を求める訴訟の積み重ねの成果で、それが今年になって恩給法、戦傷病者戦没者遺族援護法の金額改定を審議する国会で取り上げられ、野中広務官房長官が前向き答弁することにつながった」

―在日韓国人軍人・軍属への対応が、他の戦後補償要求に波及する可能性は。
 「恩給法、援護法は、軍人・軍属に対して国家補償を行う実定法で、国籍のみで在日韓国人らを排除する問題性を裁判所が指摘し、この点で他の戦後補償問題と差がある。強制連行、BC級戦犯、香港軍票、慰安婦など戦後補償問題の包括的解決の方途を考えるべきだ」
 「一九九五年に発足した元慰安婦のために設けられた『女性のためのアジア平和国民基金』を抜本的に改組して、政府もちゃんと資金を拠出し、なんらかの基準を設けた上で、各種の補償問題に対応したらどうだろう」

―「今世紀中に起きた問題は今世紀中に解決する」という言い方を、政府は国旗国歌法案の審議でつかったが。
 「日の丸・君が代の歴史と、アジアに対する戦後補償問題は表裏一体だ。主要国首脳会議(サミット)参加国のうち、その旧植民地出身者に戦後補償を行っていないのは日本だけだ。靖国神社への首相の公式参拝がずっとできないでいるように、アジアは自民党にとってもまだ、重たいものだ。本来なら、日の丸、君が代が法制化される以前に、戦争と植民地支配に起因する問題を、きちんと解決すべきだった」
 
 


 
 
 

日韓戦後処理─日韓基本条約・請求権協定



 
 


旧植民地出身の日本軍人・軍属の動員と死亡者 *「大東亜戦争」(アジア太平洋戦争) 
 
 

             復員       戦没      合計(動員)

 朝鮮    22万0159人    2万2182人    24万2341人  (1990年厚生省)
 台湾    17万6877人    3万0306人    20万7183人   

                死亡・不明者   動員     
 朝鮮             2万2182人    24万3992人  (1993年返還名簿)
 

 
 *1971年韓国へ返還した名簿では朝鮮半島出身戦死者数 2万1919人

 *「大東亜戦争」
  戦死者  軍人・軍属約210万人 準軍属約20万人、一般日本人80万人(戦災50、外地30)= 計約310万人  
 *連合国側によるBC級戦犯裁判  台湾出身 有罪173人─死刑26人、朝鮮出身 有罪129人─死刑14人
 
 
 


韓国関係戦後処理

1951-1965  第一次〜第七次会談(断続)
 '61「8項目請求権」をめぐって、韓国は補償を要求。
 日本は被害者についても可能なかぎり措置しようと思う、個人ベースで支払うほうがよいと述べた。韓国は「国が代わって解決したい、補償は韓国内で措置する、支払いは韓国政府の手で行う」と主張。日本は人数、金額、被害程度の調査を韓国に求めた。

1965 日韓基本条約、請求権及び経済協力協定(略称)
 有償 2億ドル(720億円)
 無償 3億ドル  (1080億円)
 =生産物および日本人の役務(10年) 
 *別に民間3億ドル

 協定第二条1「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」
 合意議事録2(g)8項目「対日請求要綱の範囲に属するすべての請求」について「いかなる主張もしえないこととなることが確認された」

 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産に対する措置に関する法律 昭和40-法律第144号
「65.6.22をもって消滅したものとする。…以後その権利に基づく主張をすることができなくなったものとする。」
 *日本の国会で条約などの批准と同時に成立
 
 

【韓国政府の措置など】

1966 韓国で 
 請求権資金の運用および管理に関する法律
1971-72    
 対日民間請求権申告に関する法律
 *10か月の申告期限、1945年8月15日以前に日本の郵便貯金、国債、簡易生命保険などの債権を有していたもの、死亡した元日本軍人・軍属の遺族
 同法施行令
1971 
 日本政府、元日本軍人・軍属の名簿を韓国政府に複写返還(韓国政府、確認支払いに使用)
1974      
 対日民間請求権補償に関する法律
 *死亡者に1人30万ウォン(約19万円)等支払いを決める
1975
 韓国政府、申告によって認定した8万3519件(財産7万4967件、遺族8552人)について合計91億8800万ウォン(約58億円=「無償」の約5.4%)支払う。
 *遺族には各30万ウォン(約19万円)支払い実施。総額約26億ウォン(約16億円)
1977.6.
 韓国政府、補償支払い打ち切り
1982.12.31
 対日民間請求権補償に関する法律廃止法律施行

1993.6 韓国で
 日帝下日軍慰安婦に対する生活安定支援法
 7. 同法施行令
 9. 支援開始(一時金支給500万ウォン、毎月の支援金等)
1998.5 韓国政府、予備費から元「慰安婦」に生活支援金3150万ウォン
 
 

【参考・台湾関係戦後処理】

1987.9. (特別立法)
 台湾住民である戦没者の遺族等に対する弔慰金等に関する法律
 '88. 特定弔慰金等の支給の実施に関する法律、施行令

 *日本赤十字社──台湾紅十字会
 *旧日本軍人・軍属の戦没者に弔慰金、重度戦傷者・遺族に見舞金
 *29,913件受付、29,645件給与、268件却下 日本赤十字社が審査・裁定(総理大臣裁定権限委任)
  国債償還金額 529億9,000万円
 *ほかに「確定債務」支払実施


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