韓国政府の「立場」
「慰安婦」問題に韓国金泳三・金大中大統領、韓国政府はどのようにいってきたか──。
   参考*金泳三 キムヨンサム  1993〜1998 14代  民主自由党 新韓国党
      金大中 キムデジュン  1998〜2003 15代  新政治国民会議 新千年民主党
 
 

アジア女性基金の韓国関連事業再開方針表明に対する
外交通商部当局者論評 東北亜一課

 外交通商部スポークスマン
 2002.2.21

▽日本の女性のためのアジア平和国民基金側が、2月21日(水)に、韓国に対する事業を同日再開し、5月1日に終了させることとした旨発表した。

▽これに対し、韓国政府は、韓国側被害者の大部分と関連団体が、同「基金」の一時金支給に反対している点を認識し、被害者と関連団体が受け入れられる別の方法を講じるよう求める。

▽韓国政府は、被害者に対し、支援金を自主的に支給したことがあり、毎月一定額の生活費を支援している。

(付帯資料)
       韓国政府の旧軍隊慰安婦支援
       ▽生活安定支援法 登録者に一時金500万ウオン、毎月50万ウオン
       ▽支援金支給98.5から 一時金3800万ウオン(うち民間650万ウオン)
       ▽市、道によっては毎月5.6万〜50万ウオン
       ▽生活保護法 毎月15.7万ウオン、死亡者50万ウオン、希望者は望郷の丘安置
       ▽医療保護法 外来、入院無料
       ▽老人福祉法 65歳以上に月4万ウオン、80歳以上月5万ウオン、65歳以上の希望者に健康診断実施
 


 

日本の「女性のためのアジア平和友好基金」設立について

 韓国政府外務部当局者論評(訳)
 1995年6月14日

1. 韓国政府は、従軍慰安婦問題についてのフォローアップは.基本的に日本政府が1993年8月に発表した実態調査の結果により自主的に決定する事項であるが、従軍慰安婦問題の円満な解決のためには.当事者の要求している事項が最大限反映されることが必要であることを指摘してきた。

2. 右と共に、今次日本政府の基金設立は、一部事業に対する政府予算の支援という公的性格が加味されており、また、今後右事業が行われる際、当事者に対する国家としての率直な反省及び謝罪を表明し、過去に対する真相究明を行い、これを歴史の教訓にするという意志が明確に含まれているとの点で、これまでの当事者の要求がある程度反映された誠意ある措置であると評価される。

3. 韓国政府は.今後日本が今次基金設立を契機に、様々な過去史問題に対する真実を明らかにし、右解決のための努力を積極的に傾けていくことによって、正しい歴史認識を土台にした近隣各国との未来志向的な善隣友好関係に発展させていくことを期待する。
 

(注)「基金」設立を、平成7年(1995年)6月14日五十嵐内閣官房長官(当時)が会見で発表。これに対する論評。「女性のためのアジア平和友好基金」は当時の仮称。



 

アジア女性基金支給について、韓国政府外務部スポークスマン声明

 1997年1月11日

1. 日本の女性のためのアジア平和国民基金は、関係者をソウルに派遣し、1月11日、軍隊慰安婦被害者5名に200万円を支給し、橋本総理名義の書簡を伝達したことが明らかになった。

2. これまで韓国政府は、機会あるごとに日本政府に対し、96年4月の国連人権委員会が採択した決議を自発的に履行し、被害者および被害者団体が総意として受け入れることのできる解決方策を講じることを求めてきた。

3. 今回、日本の基金側が問題の深刻さを認識せず、韓国政府および大多数の被害者の要求に目を背け一時金支給等を強行したことは、まことに遺憾であると考える。

4. 今日の国際社会において、新たな地位を追求している日本としては、なによりもまず女性の尊厳を傷つけた恥ずべき歴史を正しく清算せねばならない。

5. 日本政府が問題意識を新たにし、日韓関係も考慮し、わが国の被害者および被害者団体が受け入れることのできる解決策を早期に講じることを強力に求め促すものである。
 


 

生存する元軍隊慰安婦被害者に対する
支援金支給に際しての韓国外交通商部スポークスマン声明(訳)

 1998.4.21
 

1.日帝時代、旧日本軍により表現することのできない苦痛と試練を被り、余生がいくばくもない元軍隊慰安婦被害者たちは、現在も心身の苦痛により不幸な生活を送っている。

2.政府は、このような事実を重視し、自ら被害者たちの苦痛を和らげるために、かれら各々に対し支援金3,150万ウォンを支給することを決定した。また、この支援金とともに、昨年二度にわたって行われた民間の募金額650万ウォンも支給される。

3.日本は過去に行った反人道的な行為に対し心から反省し謝らなければならない。
 

(*この項、4.14発表予定文では──
3.わが国政府は、日本政府に対し、被害者個々人に対する賠償を要求しないつもりである。しかし、日本は過去に行った反人道的な行為に対し心から反省し謝らなければならない。
 ──となっていた。4月14日の国務会議で「日本の賠償に代わって」の趣旨で支援金提案がなされたが異論が出て決まらず、21日同会議で「日本の賠償に代わって」の部分をなくすなどして支援金支給を決定した。声明文も、挺対協が外交通商部に訴えて同部が前段を削除したと伝えられた。しかし大統領スポークスマンは、政府として日本に賠償要求はしない立場表明。)
4.日本が過去の歴史を正しく認識し、謙虚な姿勢で反省してこそ、韓日両国が真の親善友好関係を発展させることができるという点を、われわれは再度強調するものである。
*4月21日、朴智元(パク・チウォン)青瓦台スポークスマンは「民間団体が日本政府に賠償を要求し続けることに対して、政府は介入しないつもり」だと述べた。「韓国政府として日本に個人賠償を求めるつもりはない」との立場を、その後も公言している。

 


 

韓国政府の立場

1998.6.11
 

 わが政府の支援金支給の決定は、韓日間の最大の懸案問題である軍隊慰安婦問題が、両国の発展にこれ以上障害にならないようにするための積極的な措置であり、「基金」事業を阻止することを目的としたものではない。

 当初、前政府では「基金」事業を阻止する目的で政府支援金支給の方策を検討したことは事実であるが、新政府出帆後の支援金支給の目的は「基金」事業の阻止ではなく、対日賠償問題の解消との次元へ肯定的転換をすることによって、過去史に関わる最大の懸案である慰安婦問題を韓国政府の一方的措置により妥結しようとするわが新政府の決断であることを改めて示すものである。われわれはこのような措置の背景について去る4月18日、アジア太平洋局長の訪日の際に説明したが、これに対し日本側は評価より、かえって今後「基金」の使用問題に対する「基金」側の不満を通報していることに内心失望している。

 被害者への支援金支給の際、「基金」の一時金を受け取らないとの誓約書を求めたのは、韓国政府の支援金を受け取って、また「基金」の一時金も受け取るのは、他の被害者との衡平の上で不適切であるという点と、「基金」の一時金支給に反対する国内関連団体の立場を考慮した結果によるものである。また、既存の一時金を受け取った被害者に対しては、「基金」側に返却する場合、支援金を支給し、同意しない場合には一時金返却を強要しない。なお、一時金を返却する場合にも実際に支援金と一時金との差額の300万ウォンを追加支給することになる。

 このようなわが政府の措置にもかかわらず、「基金」側が既存の一時金支給方式を固守する場合、これはわが政府の前向きな措置を正面から否定するものであり、慰安婦問題を韓日間の賠償問題に戻すことであることを「基金」側が十分認識すべきである。

 わが政府としては「基金」事業自体を否定するのではなく、一時金支給方式に反対するのである。したがって、日本側はこのような点にかんがみ、「基金」が現在の一時金方式から発想を転換し、韓国の関連団体と大多数の被害者たちの要求通り、軍隊慰安婦問題を歴史の教訓とするための事業(たとえば慰霊塔、記念館設立など)に基金方式を変更すべきである。

 わが政府は、「基金」に参加した日本の有識者の多くが良心的な方々で韓日間の過去史問題の解決のため、その間、関心を持って努力してきたことを高く評価している。21世紀に向けた新たな韓日関係を築いていく上で過去史問題が円満に解決されるためには、日本内の良心的な有識者たちの努力が何よりも重要であるだけに、今後「基金」側がわが政府の立場に十分かんがみて前向きな対応を講ずるよう願う次第である。


 

金大中大統領の関連発言
 

韓国・金大中大統領
1998.4.29 ソウル訪問中の日本の報道各社政治部長と会見(青瓦台)

韓国政府支援金支払いについて
 大統領はその趣旨について、「日本の女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)からの償い金を受け取りたくない人が、受け取らなくてもすむようにした」と説明した。(朝日4.30.若宮啓文)
 
 

金大中大統領
1998.12.
 この(「慰安婦」)問題については訪日前(98.10.の首脳会談)、私には大変な圧力がかかりました。しかし、この問題も取り上げないことにしたのです。政府は被害者に支援金を渡しましたので、それ以上日本から受け取るなとか、受け取れとかは、いわない方針です。
 運動団体や被害者とよく話してみて、受け取りたいというなら受け取ればいいし、慰霊塔をたてるのがいいといえば、それをたてるのもいいし、その他の方法があればそれもいいでしょう。一回で話がつかなければ、二回、三回と話してみたらどうでしょうか。

 *これと同趣旨を98年10月(離日する大阪などで)、韓国記者らにも発言し、韓国でも報道されていると伝えられている。