民主党の「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」

その意図と背景、成立可能性



 
 


 

民主党議員とのメールやりとり

 戦時柱的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案の発議者に名を連ねている民主党の国会議員に、ホームページ、メールによってやりとりした。
 

「慰安婦」問題「解決促進法律案」についての見解を  はらだしんいち 
2000年4月21日(金)02時06分

同法律案の発議者として以下のことにご見解をだしてください。
アジア女性基金について、謝罪と補償について、法律案がアジア女性基金より前進である点、これまでの「慰安婦」訴訟判決について、法律案が「解決」となる見通し、法律案の成立可能性、生きているうちにという「慰安婦」被害者の要望に応えられるかについて。
 
 

はらだしんいちさんへ(慰安婦問題)   江田五月  
2000年4月21日(金)23時06分

「はらだしんいち」さん、書きこみ有難うございました。岡山の自宅で、お答えを書きこみます。資料がないので、細かなことはお許し下さい。
民主党提出の「戦時性的強制被害者法案」の核心部分は、従軍慰安婦問題への軍部と政府の関与を認め、かつ戦後の外交的処理では解決がついておらず、従って「国の責任」で謝罪し個人補償することが必要と認めていることです。そこで国権の最高機関である国会が、法律で解決の枠組みを作ろうというものです。
「アジア女性基金」のみなさんのご努力には、心から敬意を表します。しかしこれは、被害者のみなさんに心底から喜ばれなかったようですね。それは、国の責任と謝罪がはっきりしていなかったからではないでしょうか。だから本当の解決にならなかったのではないでしょうか。原文兵衛さんがおなくりになった後、どうなっているのでしょうか。
問題の所在は、はっきりしているのです。民主党案が成立すれば、歴史の前進と真の解決に繋がります。もっともご指摘のとおり、成立可能性は、これからの私たちの努力と国民の選択にかかっています。すぐ総選挙です。ぜひご支援下さい。
 

江田議員からのメール
2002.4.22

メール、有難うございました。いろいろお教えいただき、恐縮です。
皆さんのお考えを、大切にしたいと思います。
私は、「新左翼」でも「旧左翼」でもありません。また、人数の事は、判っています。
同じ方向を向いているものは、違いはあっても、なるべく激励しあう方がいいと思っています。
失礼しました。
江田五月
 
 

再度、江田五月議員へ
2000.4.22 江田議員ホームページ掲示板に書き込み

「慰安婦」被害者に対し、「国の謝罪と個人補償」が必要だということに異議はありません。民主党「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律(案)」のねらいでしょう。けれども、ただの目標で、選挙で多数をください─では、待っている被害当事者に説明もできません。政治は実行であり責任をもつことです。「国の謝罪と個人補償」の要求に答えを出すのか、出せないのか、説明する責任があります。
現実に進んだのはアジア女性基金(以下「基金」)事業です。想定対象者の過半をおおきく上回る160人以上の「慰安婦」被害者が「総理のおわびの手紙」を受け容れ、「償い金」と政府の医療・福祉支援事業を受け取っているのです。
この被害者の気持ちを否定せず、「基金」の意義・実績を認められますか──質問1

「見舞金支給によって国の法的責任を回避している」と法案「趣旨説明」はいたずらに「基金」を批判して、「基金」批判の運動体の文書丸のみとさえ読めますが、個人補償を実現できなかったのは国会の責任(広義の政府)ではないでしょうか。──質問2
政策として予算措置を認めてきた「基金」を他人事のようにいま批判して、「同じ方向ならお互い激励しあって」というのは、質問忌避、責任回避ではないでしょうか。より強い「戦後補償」の合意をつくるためには、「謝罪必要なし・売春婦だった」論者までを相手にしなければならないのです。
「問題の所在ははっきりしている」といわれる。では、なぜ今度の法案に「国の法的責任」「個人補償」は明記されていないのですか。再度、お聞かせください。──質問3
司法のこれまでの判決は、国の法的責任(当事の国際法、国内法による違法・不法行為)を認めず、国際法による個人の訴え自体を根拠がない、と退けています。政府、当局との協議、調整を重ねてやむなくこのような法案になったというなら、そのように説明してください。

【提案】
「解決促進法」というすっきりしない後追いの「目標」より、アジア女性基金の現実の実績を認めて、さらに「アジア女性基金の改組、戦争被害者補償基金」へとつなげるのが現実的ではないのでしょうか(田中宏一橋大名誉教授もそう提案しています)。「基金」の発展的改組・補償基金を構想することについて──質問4

補償はいつかわからないから、アジア女性基金を選択──という結果が、受け取り数過半を超える160人以上。被害者に向かって「基金」を受け取るなといってきた韓国、台湾の運動体がこの際、姿勢を転換して被害者が自由に選択すべきだといえば、「基金」受け取りはさらに進むでしょう。被害者に対する措置という姿勢からも、被害者の意思が第一であるとの「原則」を民主党として確認していただきたいが、いかがでしょうか。──質問5

運動が主体かのように錯覚して被害者の意思を拘束し、運動のための道具のようにすることは間違いです。「基金」を認めれば裏切りと騒ぎ被害者に「基金」を受け取るな、と拘束しようとして、おばあさんたちから気持ちの離れた運動と激励しあってやっていかれるのでしょうか。

アジア女性基金はすでに日本の政策として実行されている、「慰安婦」被害者は自らの申請で受け取ることは当然である。しかし民主党は、アジア女性基金を基礎として戦争被害者に対し国会における謝罪表明と国から直接個人補償を行うため、措置を具体化していく。
──このように声明し、実行してはいかがでしょうか。──質問6
積極的提案を含めて、今後も、私たちの課題として「広義の補償」と「過去の克服」のために、話し合いなどをお願いしたいと思います。
 


 

弁連協「要綱」、恒久平和議連「国会図書館調査局設置法案」

■「慰安婦」問題裁判 弁護団連絡協議会が賠償法案要綱
 7裁判の弁護団協議会(藍谷邦雄弁護士代表)は2000年4月27日、「戦時性的強制被害者賠償法要綱」をまとめ、発表した。国の謝罪、個人への補償を、「反人道的行為」として「謝罪・賠償」を行う。内閣所管の独立行政法人の「被害者賠償委員会」により、立法後5年以内に賠償金を支給する、という内容。

■調査局法案
 1999年8月10日、超党派の国会議員でつくる「恒久平和のために真相究明法の成立を目指す議員連盟」(会長=浜四津敏子・公明党代表代行と鳩山由紀夫・民主党幹事長代理)が、国会図書館に「恒久平和調査局設置・一部改正案」を衆院に提出。議員百十八人が賛同し、次期国会での成立を目指している。


 

連合、民主党法律案に留保

 連合は5月、民主党の「慰安婦」に関する「促進法立案」について申し入れをし、それへの賛成を留保した。
 


 

アジア女性基金を容認──民主党・本岡昭次座長
 
 

○民主党  本岡議員、アジア女性基金を事実上容認

 民主党「戦後処理問題プロジェクト」チーム座長、、本岡昭次参議院議員は4月、「戦後補償」に関連し、これまで実際に「アジア女性基金に対して妨害にあたる対応をしたが、今後はそうした行動はとらない」と言明して、従来の姿勢を変え、事実上アジア女性基金を容認、「法律案」の実際運用では、アジア女性基金でよいということだと表明した。同党が「戦時性的強制被害者問題解決促進法律案」をまとめ、国会に提案することに関連して、述べた。(4.7.2000)

○韓国・挺身隊問題対策協議会(挺対協)、台湾・財団法人台北市婦女救援社会福利事業基金会(婦援会)が民主党「促進法案」に賛意

 民主党の本岡議員は、同時に、挺対協と婦援会が、同党の「解決促進法」案に賛同し成立を期待する旨、連絡があったことを明らかにした。「促進法案」を両団体に説明し、反対なら破棄するがどうかと回答を求めて、双方から了解するとの回答を得たという。(4.7.2000)
 

■民主党は「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」を参議院に提出する直前、アジア女性基金代表幹部を招いて「ヒアリング」を行った。
 本岡昭次「戦後処理問題プロジェクト」チーム座長、民主党役員の千葉景子議員、竹村泰子議員、円より子議員らが同席した。

 この際、本岡昭次座長(参院議員)は、(1)法律案は第三条が根幹。政府が前面に立つこと、(2)であるなら、実務実行機関はアジア女性基金でよい、(3)私はこれまでアジア女性基金を妨害していたが、今後はそういうことはしない、(4)法律案には韓国、台湾の支援団体などが賛成であると答えてきた(文書を提示)。これ以上のものはできない。賛成しないなら破棄する、といって説明した結果だ、と述べたという。
 この会談の上、本岡座長は、アジア女性基金常任幹部と握手をして、「和解」の意思表示を確認した。

*注 本岡議員の「基金」妨害:本岡議員は従来、元「慰安婦」に対して「原則的に国が補償すべき」との立場から、韓国、台湾、フィリピンなどの支援団体と連携してきた。事務所のある秘書にたびたび各国を巡回させ、いま日本の国会で「賠償法律案」を提案しようとしている、通れば500万円国から出る、2000万円が出る、「基金」申請は待て、と支援団体や被害者たちに説明。他方、「基金」に対しては、活動を始める際、もう少し「基金」の動きを遅らせてほしいとの姿勢をみせていた。関係国側から、「(本岡議員側から)こういう説明だったが、ほんとうか」との問い合わせが日本側にあった…という経緯がある。