かなり 実録 バレー部物語

・高さから速さへ

1984年、県実業団2連覇を狙ったが、準決勝でアルプス電気古川に惜しくもフルセット負け(23−21、17−21、19−21)を喫すると、国体予選でも3回戦で同じ相手にフルセット負け(19−21、21−18、18−21)してしまう。どちらの試合もあとほんの少しのガンバリが足りなかった。
これで負け癖が付いたのではないのだろうが、産業人も準決勝で電電宮城、総合も2回戦で東和クラブに完敗し、昨年の勢いがすっかりしぼんでしまった。
そして、ここまで一心に打ちまくってきた大黒柱・半澤が今シーズン限りで引退、核の抜けたチームを立て直さなければならなくなった。

◇  ◇  ◇

翌年、レフトは渡辺が務め、パワーで圧倒した。しかし、実業団はアルプス電気古川、国体予選はアルプス電気涌谷に共にフルセット負け。この2チームには競っても勝てなくなってしまった。
「ここ一番で決め手に欠けるというよりも、相手チームの実力が上がった」。 これからは全員一丸となって頑張るしかない。より緻密にコンビネーションを仕上げる必要があった。
「今まではとにかくレフトに上げていればなんとかなったが、これからは違う。全国を目指すためにもコンビネーションプレーは絶対必要。ミスをもっと少なくしなくては」

めげてばかりはいられない。産業人県大会は仙台鉄道管理局に完勝し、東北大会出場を決める。産業人東北予選は秋田県大館市で行われ、見事全国大会出場を決めた。
東北リコー 2(21−13、17−21、21−9)1 大館市役所

女子も全国大会出場はならなかったが、圧倒的不利を跳ね返しての1勝をあげることができた。

産業人東北予選
産業人東北予選、男女揃っての出場を果たす。


この頃、レフトは新人のため最初は9人制にとまどっていた紺野が頭角を現し、平行トスをストレートにクロスに難なく決めていた。2段トスのスパイクは苦手だがキレと速さは抜群だ。
「今までのレフトイメージとは全く違うタイプ。そしてオープン中心からコンビ中心へ・・・チームが生まれ変わったような感じだ」。今後も伸びていくだろう若いチームに、監督となった半澤は期待を抱く。

HRの佐藤、澤にはまだ高いトスであったが、チャンスボールになれば長身を生かしたFL・小野寺のA速攻やFR・大沢のC速攻から、そこへ尾形の時間差が入り込むというパターンが出来上がった。

産業人の全国大会は宮崎県都城市。予選第1セットを取られて後がなくなった第2セットをデュースの接戦で取り返すと、第3セットは一方的に押して予選を突破、決勝トーナメントも強豪凸版印刷(東京)とフルセットの熱戦を演じた。1回戦で負けはしたが、“強くなってきている”ことを肌で感じる部員達・・・

日本産業人
尾形の巧みなスパイク。=対金沢市役所戦

((( Idle Talk )))
「○○のヤツ、遅いな・・・」 実は産業人全国大会出発当日、車で待ち合わせ場所(会社)へ向かう途中、飛び出した動物(猫?)を避けようとハンドルを切ったところ、田んぼへ車ごとダイビングした勇猛果敢な選手がいた。
幸運にも後から来た選手に助けられ、大事には至らず?大会に参加することができた。あれ…車とかどうしたんだろ…ただ大会で彼が活躍したかは定かではない…


・幻のストレート

1986年、実業団県予選は日本たばこ東北に敗れ、まさかの1回戦敗退。
また、うまさにおいて一歩先行くアルプス電気勢に苦杯をなめ続けるも、産業人県予選決勝はNTT仙台をダブルスコアで下し昨年に続き東北大会に出場、初の2年連続全国大会出場を目指す。

東北大会は宮城県古川市で開催された。ブロック優勝すれば沖縄での全国大会に出場できる。張り切る選手、いつになく気合いが入り、引き締まった試合で勝ち進む。いよいよ決勝戦、相手はアルプス電気相馬(福島)だ。

決まる毎に大声を張り上げ、喜びを表現する東北リコー。反対に決まるのが当然のごとく、黙々とプレーをこなしていくアルプス電気相馬。対照的なチームが白熱した展開を見せる。
第1セットをモノにした東北リコー、第2セットはもつれてデュース。そして21−20のアドバンテージから紺野のストレート強打が相手コートに突き刺さった。
「やったー!・・・あ!?」選手、スタッフがガッツポーズをする中、無情にもラインズマンの旗が上がる・・・

僅か数センチの差か?つい「なにぃッ!」とラインズマンを睨む者もいれば、ベンチも「あぁーっ」と肩を落として座り込む。それだけ見事なスパイクが決まったかに見えただけに、落胆の表情は隠せない。

打った本人は分かっていたのだろう、至って冷静、同点ながら気落ちするメンバーを盛り上げる。「まだまだ、ここからよ!」
熾烈な打ち合いが続く・・・23タイ、どちらも一歩も引かない25タイ・・・いつになったら終わるのか27タイ・・・・・・「あーっ・・・」どこからか悲痛な叫び、ため息、最後はちょっとしたミスで逆転されてしまった。

「くそう、このまま負けてたまるか!行くぞオキナワ!!」第3セット、いつもなら大差をつけられてもおかしくない状況で、必死に食らいつく。このギリギリの場面こそ、選手が逞しくなるには欠かせない。
しかし体力、気力は限界を超え・・・わずか、ほんのわずかの差で勝利を逃した。が、これを次につなげられるかどうかが問題だ。シーズンオフのトレーニングはますます厳しいものになった。
東北リコー 1(21−15、27−29、19−21)2 アルプス電気相馬

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「あのストレートがなあ・・・」「オレのせいだってか?」
今でも当時のメンバーが交わす言葉だ。あのシーンだけ、何故か鮮やかによみがえる。