かなり 実録 バレー部物語

・都市対抗開催

「都市対抗?ああ、野球でよく聞くヤツだね」。1990年、毎日新聞大阪本社新社屋建設記念として第1回の都市対抗バレーが大阪で開催されることが決定した。
この都市対抗、1962年に6人制に移行(1984年、全日本選手権に改称)して以来ということで、9人制復活の大会となった。
4月に行われる河北新報社主催の河北杯。今までの河北杯は上位大会につながらないので参加を見合わせていたが、これが都市対抗県予選の兼大会になったため出場。春の予選とは絶好の時期! 決勝も東北リコーが終始優勢で初優勝を飾った。
東北リコー 2(21−11、21−19)0 白石クラブ

続く実業団予選も優勝、これで初の年2回以上の全国大会出場が決まる。
前衛はほぼ固定され、いい意味で安定するようになったが、逆に攻撃力は頭打ちに近かった。監督の植田は現状勢力で、より効果的なフォーメーションを求め、苦肉の策ではあるがライトはスタメンでパワー系の澤、第2セットは技巧派の岡崎というように調子の善し悪しに関係なく交代、バリエーションをつけて対応したこともあった。

「強力サーブなくして上位陣の守備を崩すことは難しい」。更に得点力アップのため、前衛はジャンプサーブをモノにしようと練習に取り組み始める。以前からジャンプサーブを打つ選手はいたことはいたが、エースを取れるほどの威力はなかった。
また強いサーブがあってこそサーブレシーブも向上する。弱点を克服するべく努力は続く・・・

((( Idle Talk )))
横断幕をバックに珍しく男女部員が揃って写っているのは、会社案内パンフレットの福利・厚生の項に掲載(だったと思われる)するため。白幡部長を筆頭に、植田男子・日下女子監督、尾形男子・鏡女子コーチの下、“オフタイムにおいても研鑽し合うことにより更なる信頼関係が結ばれることと、よりよい環境作りに力を入れていること”をアピール。しているはず。

◇  ◇  ◇

6月、黒鷲旗全日本都市対抗が大阪府立体育会館で行われた。
全国トップチームが男女揃って同一体育館で試合を行うなど初体験だ。「あんなに連続して動いて、体大丈夫なのか?」女子の練習を見ながら、その運動量に驚く。大会規模は国体にかなわないだろうが、9人制だけで見れば文句なくこの都市対抗がNo.1だろう。
選手たちは現役の時にこの大会が開催されることを幸運に思う。
他大会は数会場に分かれるため、観戦できる試合が限定されるが、都市対抗は時間さえ合えば観戦できるチャンスが多く、とても参考になる。もちろん、各チーム間の交流も深まった。

都市対抗とはその名の通り、チーム名ではなく市町村名で呼ばれ、大きな都市はどこの都道府県代表かはすぐに分かる。
「柴田町が宮城県だということは殆ど分からないだろう。勝ってアピールしなくちゃな」。柴田町在住の中村が先頭に立って町旗を掲げ、堂々と行進した。

華やかではあるが、実業団や総合と違って予選なしのトーナメント一発勝負、記念すべき大会の初戦で負けるわけにはいかない。
その1回戦(都市対抗的には柴田町vs彦根市)、高く明るい天井、賑やかな館内・・・どこかギクシャクした動きが目立つ。
ブロックとつなぎでわずかに勝る東北リコー、実力を出し切ったとは言い難いが、松下電工彦根(滋賀)に苦しみながらもフルセットで勝利し、2回戦へ駒を進めた。
ギャラリーも多く、天井も高く眩しい・・・このような雰囲気で試合をするのは初めてなのでとまどうところが多かったかも知れないが、とにかく勝った。

全日本都市対抗
第1回都市対抗、柴田町旗と共に。=大阪府立体育会館
全日本都市対抗
対松下電工彦根戦、3枚ブロック。

翌日、2回戦の造幣局(大阪)戦はサブコート。天井も低く、コートも狭い。「こっちの方が落ち着く」。しかしジャンプサーブは助走路が短く、思うように決まらない。(数年後、サブコートは女子だけになった)
序盤は対等ながらも、実力的には相手が上手、攻守にそつがなくいつの間にか点差が開いてしまう。必死の追い上げもむなしく、2回戦敗退となった。

((( Idle Talk )))
スパイクやサーブが決まったとき思わず出る歓喜の声や鼓舞する掛け声。9人揃えば相手に威圧感を与えることもできる。
強いチームは掛け声もオリジナリティがあった。「ウチも“せーのっオー!”だけではカッコ悪いだろ」という訳で、いろいろ考案したものだ。

その中の一つが全日本都市対抗でお披露目された。これは全国大会で1勝することに喜びを感じていた時代、試合に勝ったときのパフォーマンスなのだが、ある部員が昨年の読売巨人軍の優勝祝賀会等でやっていたものを紹介、“それいいね”ってことで取り入れた。

1回戦勝利後・・・「あの、さっきのやつ、もう一度やってもらえませんか?」それをたまたま見ていた女子チームからアンコール、照れながらも再度披露。「ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ハーイ、ハイハイハイハ〜イ、せーの、ハイハイフッ、ハイハイフー!」 ・・・「すごーい!」と拍手喝采をもらったのだった。
ただ、アンチ巨人ファンの部員はさぞやりにくかったことだろう。


・国体県予選突破

唯一優勝のない国体県予選、是が非でも勝ってミニ国体と呼ばれる東北総合体育大会(東北総体)に出場したい。そしてその先へ・・・決勝の相手は宮城クラブだ。
強烈な攻撃とブロック、一発で決める展開の宮城クラブに対し、ワンタッチから2段トス、そしてリバウンドと、つないでつないでモノにする東北リコー。
攻撃力だけなら相手が上でもこれは9人制の試合、「なんかごちゃごちゃやっているうちに得点が入るのはウチのペースだ」
なんで決まんねーんだ?と、宮城クラブが焦って強引に攻めるスキを巧みに利用した東北リコーが、全国大会での経験も生き総合力で優勝、初の東北総体出場権を手にした。
「ついに県内最後の敵と言うべき宮城クラブを倒した。この試合は大きい。実業団全国大会に弾みがつく」

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その実業団、全国大会は北海道旭川市。予選を通過しての決勝トーナメント組合せ、初戦を勝つと第1シード・住友電工(大阪)だ。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ?まずは1回戦だ」。気候的にも今回は期待できたはずだが、国体県予選の集中力はどこへやら、気合いが空回りして1回戦敗退を喫する。
「あの体育館がやりにくいんだよ・・・」アイススケートリンクを体育館として使用しているため、床の反動や音の反響は確かに違和感があったが・・・そんないいわけで気を紛らわせるしかなかった。
気持ちを切り換えて東北総体へ挑む。