かなり 実録 バレー部物語

・ファーストチャンス

東北総体(ミニ国体)は山形県酒田市で行われた。“ミニ”ではあっても国体の雰囲気は味わえるはずだ。国体とはどういうものなのか・・・

「暑〜っ!」暑さに弱い東北リコーの部員はどうにも耐えきれない様子。しかし、「最近の宮城代表は決勝までいっている。オレ達が予選で負けたら恥ずかしい」

やはり他の全国大会とは違う。全試合時間がキッチリ決められており、しかも試合前の練習会場まで割り当てられている。ギャラリーも多い。選手としてはやりがいがある。

予選リーグ2試合をストレートの完勝で翌日の決勝に進む。そして・・・「東北大会とはいえ、ついに山形と対戦できるところまで来た」。相手はあのJTクラブ山形、全国でもシードとなる強豪と公式戦初対決。最近の練習試合でも殆どセットは取れていない。
東北リコーに失うものはない。思い切りぶつかるだけだ!

◇  ◇  ◇

試合開始、とにかく序盤に離されないことだったが、相手のファーストサーブが入らなかったのが幸いし、コンビで互角、しかも山形に信じられないような凡ミスが続く。
逃げる東北リコーに追うJTクラブ山形という展開は終盤、もう少しのところで追いつかれてしまった。
しかしデュースの攻防に必死に耐えた結果、またもやミスに助けられ、最後は相手ブロック吸い込みで23−21、かろうじてこのセットをもぎ取る。「うっしゃー!、いけるぞ!」 いよいよ国体まであと1セット、東北総体初挑戦で大金星を上げるかと思われたが。。。

相手の形相が変わった。僅か数分間のインターバルで眠りから覚めた山形は猛攻を開始、ファーストサーブが入り始め、2段トスになったところをブロックで封じ、レシーバーがコースに入って決定打を許さない。ミスも全くなくなった。
これが強いチームなのか・・・第1セットの勢いを完全に断ち切られ、第2セットを簡単に奪われた。

第3セット、なんとか気力でカバーしようとするが、実力差は如何ともしがたく、単発で決まるものの、もはや相手の攻撃を防ぐ術はなかった。・・・・初出場で準優勝、しかし目の前にはどうにも乗り越えられない高い山がそびえ立っていた。

だが遙か彼方であった“国体”が、そこへ片手をかけるまでに成長、東北リコーにとって国体出場は手が届く目標となった。「夢で終わらせない。必ず行くぞ、国体!」


・来季への収穫

総合県予選を優勝し、国体は全国出場していないが、これで県予選の全てを制覇、今年から開催された宮城県実業団選手権大会(全国大会なし/10月開催)を含めれば5冠、もう宮城県のトップと言っても異論はないだろう。
ちなみに、宮城県実業団ではスパイク賞が中村、サーブ賞を大沢が獲得している。

◇  ◇  ◇

通年で安定したプレーが発揮できるようになった。確実に実力と自信を付けて臨む全日本総合は大分県で開催。
予選を突破、注目の決勝トーナメント初戦の相手は・・・「すみともでんこう!?」「うっそーっ くじ運わるっ!」
全日本実業団では対戦前に負けてしまった。今年最後の大会での対戦とは願ってもないチャンスだ(と思うしかない)。
県内無敵となった東北リコーの実力が強敵相手にどこまで通用するか?

最後の最後にその片鱗を見せる。第2セット、マッチポイントを握られながら速攻や時間差、ブロックなどの連続得点で猛追し、19点まで迫った。
「住電は本気ではなかった。しかし今まではそれでもトップクラス相手に完敗していたからな」。監督の植田は逞しさを増した選手達に熱い視線を送る。
全国での試合はまだ粗が目立つが、全体的にはだいぶバランスがよくなってきた。速攻・時間差は十分通用する。弱気になったり、集中力を切らさなければ、それなりの試合にはなるはずだ。
来年に期待できる1戦となった。