かなり 実録 バレー部物語

・崩れた自信

1992年、この年は大きな目標があった。
“国体出場”・・・今年の国体は山形(べにばな国体)で開催されるが、開催地代表の他、もう1チームが東北代表として国体に出場できるのだ。練習も気合いが入る。

都市対抗県予選は優勝したものの、実業団県予選決勝では接戦の末、5連覇を逃す。
「え?優勝!?」女子は9年ぶりに優勝、祝勝会は男子が引き立て役に回った。「いつも男子ばっかりなんだから、たまにはいいでしょ!」・・・今回ばかりは神妙にするしかない。
男子
東北リコー 1(16−21、21−11、22−24)2 アルプス電気涌谷
女子
東北リコー 2(21−16、21−12)0 アルプス電気古川

春は絶対的な強さを見せていたことと、山形国体目指して強化を進めていた東北リコーにとっては思っても見なかったつまずき。自信が気の緩みを招いたか・・・リードされると急に焦りが見られ、余裕がなくなってしまった。
まだまだ器が小さい・・・

((( Idle Talk )))
女子の実業団全国大会は香川県で開催されたが、この大会は東四国国体(1993年開催)のリハーサル大会に割り当てられていた。
つまり、女子の方が男子よりも先に“国体を体験”したってわけ。

「やっぱり対応が違います。至れり尽くせりって感じですね」「こういう大会に男子がチャレンジしているのは凄いと思います」 国体とは9人制にとって最大のスポーツイベントであり、地元の期待を一身に背負うことになる。

ちなみに、金比羅さん(石段登り)の方が試合より数倍疲れたとのこと。

◇  ◇  ◇

都市対抗の全国大会、対松下電工津(三重)との第1セットは見事な集中力を発揮して圧倒したものの、リズムが悪くなったときの対応が悪く、続く2セットを簡単に取られて1回戦敗退となった。

強豪相手に善戦と言えるかも知れないが、ここ最近は予選を含め最低でも1勝は挙げていただけに、悔しさは隠せない。しかし、1セット目と2・3セット目、こうも極端に変わるとは・・・あっけない取られ方に不安が募る。相手はベスト8まで進出、勝ち上がるチームとの差は小さいようで大きいのか・・・
国体県予選は1ヶ月後だ。大丈夫か?


・セカンドチャンス

体制を立て直し、今年最大の目標、その第1関門である国体県予選は宮城クラブ、アルプスクラブ、大河原体協をそれぞれストレートで下し3連覇を達成、攻め続けるときの強さは文句がない。そして迎えた東北総体(花巻市)。
通常ならば3県2組に分けて予選リーグ、成績1位同士による決勝が行われるのだが、今回は6県参加で東北選手権を行い、その後国体開催地を除いた5県で改めて国体予選を行う(全てトーナメント)という変則的な日程となった。
国体予選優勝は2年連続準優勝の東北リコーが最右翼と見るのが妥当、「今度こそ国体へ」・・・当然選手もその意識はあった。

その選手権、準決勝で岩手(北上)と対戦。しかし、何かがおかしい。相手エースを止めきれず、波に乗ろうとするところで凡ミスを犯す。結果、フルセット負けで決勝に進むことができなかった。(優勝は山形)
まさか山形と対戦する前に負けるとは想像していなかっただろう。「しょうがない、本番は明日だ。次勝てばいいんだよ」応援に駆けつけたOBがねぎらいの言葉をかける。選手は平静を装っているように見えるが、これが目に見えないプレッシャーというものなのか・・・

その夜、旅館では負けたショックか?異様な盛り上がりを見せ、とばっちりを受けて泣きを見た部員がいると聞く・・・(ToT)

◇  ◇  ◇

翌日の国体予選、準決勝で秋田(鷹巣クラブ)をフルセットながら振り切り、なんとか決勝進出を果たすが、やはりいつもの調子とはちょっと違う。そして相手は・・・岩手を破った福島(東北電力)だ。
しかしこの福島、なんと3年後に国体が開催されることが決定していたのだ。今回は本格的に強化を始めたチームで臨み、東北リコーの前に立ちふさがる。

「急造チームに負けるわけにはいかない。9人制のプレーをすれば勝てるはずだ」
だが、そのプレーがなかなかできない。相手の猛攻にムキになっていたのかも知れない。体も思うように動かず、第1セットは“らしさ”を全く見せないまま落とす。
気合いを入れた第2セットは互角ながらもミスで少しずつ離されていく展開。自分達のプレーが発揮できず、いらだつ状態が続く。「こんなはずじゃない」・・・結局、終盤の反撃もむなしくストレートで敗れてしまった。

呆然とする選手たち、周囲の期待に応えられず、ふがいなく情けない思いでいっぱいであった。

「国体予選の悔しさは勝って晴らすしかない!」