かなり 実録 バレー部物語

・覇権争い激化

国体前の総合県予選、決勝はささにしきクラブ戦。第1セットを奪ったものの、相手HRのサウスポーから繰り出す強打とHCの強力サーブ、時間差攻撃に徐々に圧倒され始め、続く2セットを落としてしまった。「国体への志気にも影響しかねない敗戦。逆に危機感が出ればよいが」
東北リコー 1(21−17、18−21、16−21)2 ささにしきクラブ

国体出場のうれしさで気が緩んでいたのかも知れない。しかし、先の全日本クラブカップにおいて、ささにしきクラブは3回戦まで進出、敗れたもののベスト4チームにフルセットを演じる程の実力を付けていた。
「力が無いから負けた。この事実を真摯に受け止めなければならない」
優勝争いは激化、宮城県は2強時代へ突入していく。


・とべるか!?福島国体

ついに国体の日を迎えた。会場は喜多方市。
「え?開会式出るの?」総合開会式は福島市近辺で開催される種目の選手だけが参加するものだとばかり思っていた。
「まあ、体験してみるのもいいか・・・」シャトルバスに揺られて、あづま陸上競技場へ。
“友よ ほんとうの空に とべ!”がスローガンであったが、本当の空は雲一つない快晴、やたら待たされる背中に否応なく日が照りつける。
見るもの聞くもの初めてのことばかり。疲れなど感じないのかも知れないが、体調維持は大変だ。翌日はバレーの開始式直後の第1試合とスケジュールに余裕がない。しかし「初っぱなで負けたくはない!」

福島国体
大声援の中での試合。
1回戦は来年開催の国体強化チーム・広島選抜。以前の都市対抗で惜しくも敗れた相手だ。持ち味を出せば決して破れぬ敵ではない。大応援団の中、ホイッスルが鳴った!

第1セット、広島選抜の高打点から繰り出される強力サーブに序盤からリードを許し、レフトの強打で点差を広げられる。東北リコーもレフト門脇を主力に応戦し、7−14から追い上げ12−16まで詰め寄った。しかし攻撃ミスも多く、ちぐはぐな展開で先取される。

第2セットも調子が出ず、いきなり4−13と大きく引き離されてしまった。
必死の応援が届いたか、ここから猛反撃、中村の速攻と門脇の強打が決まり出し、更に広島選抜のミスが重なり15−16と1点差に迫った。
いやが上にも盛り上がる展開、「いけるぞー、がんばれ!」大声援が館内に響く。
しかし、広島選抜は両サイドから打点の高いスパイクと連続ブロックで再度引き離し、最後はチャンスボールをFCが決め5連続得点、ゲームセットとなった。

福島国体
猛烈な追い上げを見せる。=対広島選抜戦
福島国体
国体への先駆者達。=喜多方市押切川公園体育館

「前半の点差があまりにも開きすぎた。あそこまでの追い上げが精一杯だった」
負けはしたが、この1戦は大きな財産となることだろう。開会式で体調が崩れていたのかもしれない。“慣れる”“事前に知っておく”ことの大切さが身にしみた。
「こんな大きな大会に出場するなんて凄いです。だんだん男子の存在が遠くなってしまうなーって感じで少し寂しいですが、頑張って欲しい!」女子部員も激励する。
出場したうれしさなど完全に吹き飛んだ。あっという間に過ぎ去った国体、本当のチャレンジはこれからだ。

  宮城国体まで、あと2190日−


・もうひとつの全国大会

「決まったぞ!櫻田記念出場だ!」実業団チームで全国大会上位、各地域ブロックトップのみ出場できる櫻田記念全日本実業団選抜大会。9人制において最もレベルの高い大会と言える。
普通なら12チームが選抜されるのだが、今回は10回記念大会となり、16チームが推薦された。国体出場が決め手となり、東北リコーが初出場を果たす。

4チームが4ブロックに分かれて予選が行われ、予選1位2位が上位トーナメント、3位4位が下位トーナメントに進む。組み合わせ表の1組の最上位に記載されているのが第1シード?だとすると・・・4組の一番下に記載されている東北リコーは16番目、つまり最下位で選ばれたって訳? 滑り込みだな。でもツイてる」
直前の全日本総合にも出場していないチームが櫻田記念に出るなど恥ずかしい限りだ。というか、全国大会も全部1回戦負け・・・
しかし、何かを得なくては出場した意味がない。強豪揃いのチームにどう立ち向かうのか?

予選第1試合からいきなり三菱電機戦。最初から強敵相手に歯車がうまくかみ合わない。相手に終始余裕を持たれながらの展開、ストレートで敗れる。
「このまま終わってもいいのか? 負けて元々、思いっきりやろうじゃないか」

予選第2試合は横河電機戦。初戦で硬さが取れたか?動きは見違える程よくなった。相手も余裕を見せたのか、前半は単調な攻撃しかしてこない。勢いに乗った東北リコーは、そのまま押し切って第1セットを取る。

目を覚ました横河電機の前にいいところなく第2セットは失ってしまったが、第3セットは白熱したシーソーゲームを見せた。
東北リコーの気迫に押されたか、相手は要所でミスを犯し、離しきれないでいる。東北リコーはサーブカットが安定し、持ち前のコンビが炸裂する。
集中して攻め込み続ける時はどんな相手にも引けは取らない。完全に互角の戦いとなった終盤でも集中力を切らさず接戦を制し、珍しい粘り腰で全日本総合前年優勝、先の大会でもベスト4の相手に勝ってしまった。
「昨年の総合優勝チームに勝っちまったぞ!」9人制トップ相手に弾き返されっぱなしだったが、ついに一矢報いることができた。
これで上位トーナメント進出の可能性が出てきたのだが・・・

予選はもう1試合残っていたが、話にならなかった。前の試合で全精力を使い果たしたかのような気力のないプレーが続出し、2セットともダブルスコアで敗退、結局予選最下位で翌日の下位トーナメント戦に回ることとなった。
下位トーナメントでは住友電工相手に初戦敗退となったが、住友電工でさえ上位トーナメントに進めないくらいのハイレベル。そこでの1勝は櫻田記念に参加しただけではない、何かを掴んだ大会となったのか・・・

((( Idle Talk )))
櫻田記念は15名の登録ができ、試合毎にその中から12名をセレクトできる。以降、実業団や総合の全国大会でもこのような方式が採用されることになる。+3名の恩恵により、この大会で全国デビューを果たした選手がいた。
ピンチサーバーで出場したが、「心臓バクバクでした」というほど緊張したようだ。
しかし本人はあまり記憶がないようで、「結果?へろへろ球だったことだけは覚えてます」