かなり 実録 バレー部物語

・好敵手

負けた。1996年都市対抗県予選決勝はストレート負け、第1回から守り続けてきた全日本都市対抗出場権をついに明け渡してしまった。
ここぞの場面で細かいミスを連発、チャンスボールを確実に決められては、こっちに流れはやってこない。相手HCからの攻撃を止められず、意識すると他の攻撃の対応も疎かになってしまう。リードされて焦りもあった。
「これだけは死守したかったが・・・」思った以上にミスが目立ち、リズムに乗ることができなかった。
東北リコー 0(18−21、19−21)2 ささにしきクラブ

県の強化指定を受けなければ宮城国体へ出場することは難しい。東北リコーとささにしきクラブは過去の実績から仮強化指定を受けていた。ここで見極めが行われ、来年正式に強化チームとして認められるのだ。
一番負けられない相手に負けたという事実。しかしまだ挽回のチャンスはある。気持ちを入れ直し、実業団県予選はNTT仙台を圧倒して優勝、そして国体県予選。決勝はもちろんささにしきクラブ、春の雪辱なるか。

都市対抗県予選と同じような展開であった。東北リコーは相手HCのサーブと時間差に相変わらずてこずっていた。しかしそれで連続失点してもまだリードしているという余裕が前回とは大きく違う。
チームワークで勝る東北リコーは厳しい場面をなんとか断ち切って反撃に転ずるとコンビが冴え始め、リードを広げて優勝、借りを返した。早いうちに負けのイメージを払拭できたのは大きい・・・

7月、2001年の宮城国体が内定、準備は着々と進められている。あと5年は長いのか短いのか・・・


・熱闘88分

全日本実業団
堂々の入場行進。=福岡市民体育館
またまた暑い全日本実業団(福岡)、予選グループ・対動燃東海(茨城)戦はフルセット、超パワー溢れるレフトエースに最後まで苦しんだが、安定した守りで攻撃陣を支え、勝つことができた。
決勝トーナメントは初戦の2回戦、九州電力鹿児島対NKK福山(広島)の勝者に決まる。
恐らく鹿児島が上がってくるだろう・・・3年前の都市対抗で粘り負けしたあの相手。この気候、地元と言ってもいい開催地、不利な状況ばかりが揃う・・・

翌日、予想通り九州電力鹿児島との対戦、蒸し暑い会場で試合は始まった。東北リコーは右打ちの中村、左打ちの佐藤の速攻からコンビへ展開、九電鹿児島は堅い守りとHRエースの強打で応戦、両者持ち味を遺憾なく発揮し、互角の展開を見せる。
相手はノーマークやブロックの脇から抜けた強打を幾度となくレシーブし、切り返す。
拾われようがつながれようが、こっちはとにかく強気に攻めるのみ、攻め続けなければ活路はない。
多少のミスは仕方なかったが、デュースとなった第1セット、そのせめぎ合いの中でミスが出て先取される。こういう時ほどミスは出やすく、また肝心な場面でのミスは後に響きそうだ。

案の定第2セット、勢いそのままに九電鹿児島が序盤から優勢、リードする。
ここで監督の大沢はFR佐藤とベテラン岡崎をメンバーチェンジ。「この場面、今は攻撃力よりも安定性重視、崩れたリズムを立て直すことが先決だ」
超攻撃的布陣から予選と同じフォーメーションに戻したが、期待に応えて岡崎がいきなり相手強打をブロック、流れを呼び込む。息を吹き返した東北リコーはレフト門脇にボールを集め、このセットも接戦ながら逆転し、フルセットにもつれ込んだ。

第3セットは東北リコーHL門脇と九電鹿児島サウスポーHRの対決という様相を呈してきた。
ノーガードの打ち合いみたいな壮絶な試合、どちらも見事な決定力を誇り、なかなか抜け出せない。
ついにシャットアウト!と思いきや無情のオーバーネット、しかし気落ちはしない。苦しい展開ながらも集中力抜群、つまらないミスは見せなくなった。
第1セットに続きデュースにもつれ込んだが、最後の最後で門脇、岩渕、中村の3枚ブロックが炸裂!ようやく相手HRをシャットアウト、大激戦の末に東北リコーがなんとか逃げ切った。
「もう死にそう、暑くて長かった・・・」と門脇。試合時間88分は今大会最長試合となった。
久しぶりの全国大会ベスト16、1勝がこれほど大変だとは・・・この状態で次の試合は大丈夫か?

((( Idle Talk )))
<その1>とにかく気合い負けした方が終わりの九電鹿児島戦、第1セットを奪われ後がない場面、見事にブロックを決めた・・・と、見事なフォローで拾われてしまう。しかし決まったと勘違いして喜びを爆発させ、エンドラインへ向かって走り出す選手1名!
相手が返球にミスったから助かったものの、ボールはよおく見ましょうね。

<その2>こういう激戦は集中力の切れた方が負け。全員で必死に声を掛け合い、立ち向かっていた。しかし・・・確かに口は開けているのだが、よくよく見ると声が聞こえてこない選手が約1名。
「オイ!声出せぇ!」と胸を突かれて、ここから一致団結、勝利を手にすることができた。
「もう、いっぱいいっぱいで・・・声出してるフリしてました。スイマセン」
そうしたくなるほど、苦しく厳しい試合だったわけだが・・・サボりはダメよ。

3回戦は旭化成水島(岡山)、ここもエース(レフト)の強力スパイクが武器のチームだ。第1セットは互角、東北リコーは強打がウリのチームには強いようだ。
疲れなど全く見せない緊迫した展開、2回戦に続きサーブが安定し終盤のサービスエースで20−17とする。しかし、ここから勝利を焦ってスパイクミスを連発しデュースの末逆転されてしまった。

第1セットを失って集中力が切れそうになる。そして2回戦での疲労が選手を徐々にむしばんでいく。「勝ってベスト8へ・・・」リズムは悪くなくてもいつものような軽快な動きは見られない。
必死に挽回しようとするが、少しずつ押され始め最後は力尽きた。無念・・・しかし、この粘りは次に生きるはずだ。


・奪取、東北一

東北総体は山形市で開催された。国体に出場できるのはもちろん1チームだけ。昨年の国体準優勝の福島(東北電力)、雪辱に燃える山形(JTクラブ山形)、今度こそと意気上がる岩手(北上)と激戦は必死だ。

しかしJTクラブ山形、北上との予選リーグ、東北リコーは見事にストレートで下し、決勝に駒を進めた。調子は上々、やはり実業団での厳しい試合が一回り大きくしたか・・・混戦と見られた試合を危なげなく突破し、決戦を迎える。
東北No.1で出場して実力を証明する。それでこそ昨年の国体出場の意味がある。しかし相手は東北電力、一筋縄ではいかない。

試合は東北リコーペースで進んでいった。サーブカットが安定し、コンビが自在に決まる。
「いいぞぉ!」応援団から拍手を浴びる中、第1セットは快勝、選手には自信がみなぎっているようだ。
第2セットも東北リコーが攻勢。東北電力も終盤反撃に出るが、目標である国体が過ぎ、モチベーションが今ひとつの感がある。 結局、失セット0の堂々とした戦いぶりで東北総体初優勝、東北一に輝いた。

宮城県勢として久しぶりの栄冠であった。「バレー部創生期、夢に描いた東北一。ついに後輩達がやってくれた」応援で駆けつけたOBが感慨深げに見つめる。・・・今や東北リコーは全国上位へ羽ばたこうとしている。
真の東北代表として挑む国体、背中に背負うものは大きい。

◇  ◇  ◇

総合県予選、今回の全国大会は地元・宮城県で開催される。決勝に進出したささにしきクラブと東北リコーは出場権を獲得していたが、東北一のチームとなった今、県レベルで負けるわけにはいかない。「ここで負けたら、国体のレベルまで下げて見られてしまう」

手の内を知り尽くしているチーム同士の激突。しかしサーブとブロックでプレッシャーをかけ続ける東北リコーに、ささにしきクラブは耐えきれずスパイクミスを犯してしまう。結果、東北リコーがストレートで下し、第1代表として地元大会に挑むことになった。
春には同等の実力だった両チームも秋にはその差が目に見えて広がった。厳しい試合で揉まれることは、選手をより逞しくさせる・・・
- 準決勝 -
東北リコー 2(21−11、21−11)0 NTT仙台
ささにしきクラブ 2(21−15、21−12)0 中新田クラブ
- 決勝 -
東北リコー 2(21−14、21−13)0 ささにしきクラブ