かなり 実録 バレー部物語

・志津川へ

今年度は多くの新入部員で活気がある。この中からスタメンで活躍する選手もいるだろう。いつものことながら心配なのは9人制への対応。6人制で実績があるプレーヤーであっても、そう簡単に9人制には慣れないものだ。

不安が残る都市対抗県予選、決勝はささにしきクラブを破り好調の宮城桜会が相手。このチームには東北リコーのOBもおり、決してあなどれない。
しかし先日の練習試合で楽勝したばかりの相手を甘く見て第2セット中盤、つなぎのミスで9−13とされてしまった。タイムアウトで目が覚め、なんとかここから地力を発揮、連続得点で退けた。
新戦力の見通しも立ち、気を引き締め直して全国大会に挑む。
東北リコー 2(21−13、21−15)0 宮城桜会

実業団県予選は参加チームが年々減少、東北一の激戦区と言われた宮城県もそれは昔の話、今年は4チームの出場となった。(東北リコーが優勝)

◇  ◇  ◇

5月下旬、宮城県志津川町で初めて合宿を行う。まだ完成したばかりで駐車場などは完全に整備されていないが、志津川ベイサイドアリーナは宮城国体男女9人制バレーのメイン会場となるのだ。
アリーナの客席は約1000席、さらに国体の時はコート脇にも椅子が用意される予定だ。部員は会場の雰囲気を体になじませながら泊まりがけで練習、そして北上、ささにしきクラブと練習試合を行った。地元の優位性を生かし、今後幾度となく訪れることになる。

地元宮城県とは言っても県北の志津川町へ県南部に位置する東北リコーからは移動にかなりの時間がかかる。国体成功への実際の運営、打ち合わせも大変だろう。そして見慣れない“東北リコー”というチームにどれだけ声援があるのか・・・
真新しい体育館に、「ここで必ず優勝する」という思いと、「本当に勝てるのか」という不安が交錯する・・・


・新進気鋭

そして迎えた全日本都市対抗。1回戦のNKK福山(広島)戦、第1セットは大苦戦。チームとして成熟していない脆さか、一時は11−15まで離されたが、徐々に挽回、相手セットポイントを江口の強打と岩渕の時間差でなんとかひっくり返して奪うと、第2セットは見違える安定度で勝利した。

2回戦、今年の神奈川国体強化チームが相手だ。Vリーグ経験者や元全日本選手もおり、ネームバリューは完全に向こうが勝っているが、エリート集団的なチームに対しては燃え上がる何かがあった。
第1セットは高い打点のスパイクとブロックに苦戦を強いられ9−15と1回戦と同じようにリードされるものの、サーブ力で勝る東北リコーが相手のミスに乗じて攻め、デュースを制し先制。
第2セットは手こずっていた相手HRをシャットアウト、圧倒的なコンビ力で3回戦進出を決めた。

相手は今年本番を迎える最初の大会で実力を発揮できず敗北・・・「あっちはこれから大変だな」そう思ってはみても、真のプレッシャー、気持ちは今は知る由もない。

3回戦、相手は第6シードのJT東京。相性がいいのか悪いのか、過去2度の対戦は各上の相手にいずれもフルセット負けを喫している。
出だし好調、サーブで崩してコンビで決める得意の流れに乗り10−3とリードするが、相手レフトエースの驚異的な打点からのスパイクで挽回され16−16の同点に追いつかれてしまった。
連続失点により苦しい展開ではあったが、JT東京ピンチサーバーのダブルフォルトで一息できた東北リコー、最後はラインギリギリ(見た目アウト)に落ちる岩渕のサービスエースで逃げ切った。

第2セットも調子を持続、江口スパイクで15−10の5点差と広がる。
工藤のトスワークも冴え、その後もサービスエースと門脇のスパイクが随所に決まり20−12と王手、最後は今野のBクイックで強豪JT東京をストレートで破り、都市対抗初のベスト8進出を果たした。
「やったぜ!シードを倒したぞ!」。リズムに乗った東北リコーの強さが際だつゲームだった。

◇  ◇  ◇

いよいよ準々決勝、第4シード・九州電力福岡との対戦だ。
その第1セット、序盤0−3とリードを奪われ、苦しい立ち上がりだったが相手エースをブロックして波に乗り、9−9の同点に追いついた。息詰まる攻防から小林、岩渕のサービスエースで18−16、江口、門脇のスパイクで20−17とセットポイントを握る。
強い! 強敵相手に全く引けを取らない試合運び、今大会はもしかするともしかするか!?

「今度こそ勝ってベスト4へ」・・・しかし粘る九電福岡は必死のつなぎでデュースへ持ち込むと、今大会屈指と言われる強力サーブがここで爆発、連続サービスエースを決められ、まさかの逆転を許した。

第2セット、相手ブロックが決まるとタッチネットのミス、そしてサービスエースを決められ3−6。東北リコーは速攻で反撃するものの、動きに精彩が無く徐々に点差が開いていく。またもベスト8の壁を越えられず、残念ながらストレート負けとなった。

新人3名がスタメンとなりチームワークが不安視されたが、いきなりシード勢を破ってのこの成績。実業団は期待できそうだ。

((( Idle Talk )))
東北リコーが敗れた次の日、地元柴田町にうれしいニュースが。
県高校総体において柴田高校が春高出場の仙台育英、強豪の古川工を撃破して初優勝を遂げた。
平均身長175cm、中学時代に実績のある選手もいない柴田高は、猛練習で培った正確なコンビバレーと学校を挙げての応援で創部13年目、仙南地区初の全国代表の誕生となった。
6人制、9人制の顕著な活躍で沸き、この年は大いに柴田町をアピールできた。・・・まぁ話題はほとんど柴田高校に持っていかれたが・・・(^^;

7月14日、日本体育協会理事会において第56回国民体育大会宮城県開催と会期が正式決定、3年後へ向けて大きく前進した。現実味を帯びる宮城国体、いままでもしっかりしたプランは立てていたが、更に逆算して細かいスケジュールを決めていく必要がある。これが狂えば全てが狂う・・・スタッフ陣の腕の見せ所だ。


・より逞しく

国体県予選決勝、気迫溢れるささにしきクラブに押され第1セットを取られる厳しい展開。しかしそのまま引きずることなく気持ちを切り替え連取、東北総体出場を決めた。
その他の強化チームは圧倒的な実力差を見せつけ優勝しているだけに、関係者は不安定な戦いを見せる東北リコーにちょっと心配気味。
成年男子6人制決勝
NTT東北 2(15−1、15−1)0 SENDAI HIROSE CLUB
成年女子6人制決勝
東北福祉大クラブ 2(15−3、15−3)0 友遊会
成年男子9人制決勝
東北リコー 2(21−23、21−16、21−14)1 ささにしきクラブ
成年女子9人制決勝
白謙クラブ 2(21−6、21−4)0 気仙沼クラブ

全日本実業団は富山県魚津市で開催された。ここもうだるような暑さ、意識が飛んでしまいそうだ。
決勝トーナメントは2回戦からとなった。そして当日、相手は過去2回いずれもフルセットの試合を演じた九州電力鹿児島が勝ち上がってきた。
案の定、第1セットを破壊力ある攻撃陣で東北リコーが先取すると、持ち前の集中力と粘りで九電鹿児島が第2セットを取り返し、またもやフルセットに持ち込まれた。
タフな試合は相手が有利、2セットで力尽きた感がある東北リコーはプレーの精度が落ち、動きがバラバラになる。ここを見逃さない九電鹿児島に走られてしまい、都市対抗に続く最終日進出はならなかった。
「都市対抗みたくいつまでも勢いだけでは勝てないということだ。小さいミスが命取りになる」大事な場面になってチーム完成度の差が出た。

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東北総体は岩手県花巻市で開催された。
予選リーグは福島(東北電力)、岩手(北上)をストレートで破り、決勝は予想通り山形(JTクラブ山形)となった。今年は絶対負けられない。

門脇の強打で4−0、好レシーブから展開し序盤をリードするが、サーブで崩され10−11と逆転を許してしまった。
だが、相手オーバーネットのミスに乗じて一気に加速、佐藤のC、江口のブロックとスパイクで14−11。今野のB、門脇の強打が山形選手の顔面を直撃19−13。そのまま押し切って第1セットを先取。

このまま突っ走りたい第2セット、0−3と離されるも、門脇のスパイクで同点に追いつきここから一進一退の攻防が続く。
今野のフェイント、岩渕のサービスエースで15−12と中盤リードしたのもつかの間、後がない山形の反撃を受けて1点差に詰められると流れは完全に山形ペース。苦手とする相手ピンチサーバーの登場となった。
ここで監督の大沢はサービスのセットに入る直前に絶妙のタイムアウト。緊張が緩んだピンチサーバーは痛恨のダブルフォルトで16−14、風は東北リコーに吹き始めた。
このチャンスを生かしてスパイクとブロックでマッチポイント、山形最後の猛攻を全員必死のプレーでなんとか凌ぎ、最後は佐藤のCクイックで勝負を決めた。
冷や汗ものの試合だったが、これこそチームワークの勝利、今後の大会に勝機が見えたか?