かなり 実録 バレー部物語

・王者たる所以

9月下旬、初めての沖縄合宿を行う。沖縄と言えば沖縄銀行、沖縄国体強化チームとなってから地元国体優勝以後も常に9人制のトップグループに君臨する強豪チームとの練習試合だ。
過去多くのチームが沖縄を訪れ、そして日本一となった。沖縄県では“全国で優勝するより県で優勝する方が難しい”とまで言われている。“沖縄に来ずして日本一はあり得ない”沖縄の魅力とは、沖縄県の強さとは何か?

本当に青い海と空。しかし9月末だというのにこの暑さ、「え?この時期にしては涼しい方だよ」
息苦しい中でのゲーム、汗が滝のように流れる。試合中の突然のスコールは体育館の屋根を打ち、声が聞こえないぐらいの大反響となる。相手はこんな状況でも沈着冷静、取れる1点を確実に取ってくる。

近くでママさん大会があり、ちょっと観戦。「おお、すげぇ」なんと超満員の観客席、沖縄の9人制はメジャーなスポーツだった。
いつもの生活とはどこか違う。五感は驚きの連続・・・選手・スタッフは試合、交流会そして沖縄の空気に触れその強さを実感することになる。
「とても参考になった。しかしだからって全てが実行できるわけじゃない。こっちの特長を生かしたレベルアップをしていかなければ・・・」

翌週の総合県予選、男女見事に優勝し2年連続アベックV(何故かスポーツ界では死語じゃないね)を果たす。これで全国大会最終日は堅い?


・おお汗白熱!神奈川国体

神奈川国体
開始式、未来へつながる勝利を目指して・・・=藤沢市秋葉台文化体育館
神奈川国体、準々決勝の相手は東京(JT東京)。都市対抗で破った相手だけに今度は死にものぐるいで臨んでくることだろう。それに負けない気迫が大事だ。会場は藤沢市、リコー厚木からも応援をもらい、初戦勝利を目指す。

準々決勝は第1試合からフルセットで白熱の展開、第1シード大阪(住友電工)vs 沖縄(沖縄銀行)は、沖縄銀行が“あわや”のところまで追いつめたが住友電工が辛くも逃げ切り準決勝進出。
会場もヒートアップ、第2試合、東京vs宮城の試合が始まった。

展開は劣勢、8−11と常に追いかける苦手な試合運びとなってしまった。しかし速攻とブロックで追いつき16−14と逆転。ここからリズムに乗るかと思われたが、凡ミスの連続で18−18から18−20とセットポイントを握られてしまった。 ところがこの場面で相手がダブルフォルト、これで流れが変わり更に連続ポイントで逆転。最後は岩渕のサービスエースが決まり、ワンチャンスを見事モノにして第1セットを先取した。

しかし第2セットも同様に3−9と序盤リードされる展開、今度はこちらのミスも挽回できずに自滅、8−17と更に点差は広がり、エンジンがかかってきたJT東京の前に沈黙しタイに持ち込まれた。
第1セットはなんとか取ったが2セットとも同じようなリズムでは、そううまくいくわけがない・・・そしてそれは第3セットも同様だった。

またまた追う展開ではいつものらしさが発揮できない。序盤こそ5−5であったが、ほとんど相手が主導権を握り、8−10とされる。東北リコーはひたすら耐えるしかなかった。流れを一変する頼みのサービスエースも炸裂しない・・・反撃の糸口は掴めずそのままゲームセット、念願の準決勝進出はまたも夢と消えた。

「失望から希望へ気持ちを切り替えなければならない。順位決定戦は何としても勝つ」
奇しくも直前の合宿でお世話になった沖縄銀行との5、7位決定戦、どちらもフルセットで負けているだけにメンタル面での戦いになりそうだ。

気持ちの切り替えでは東北リコーが優っていた。両サイドの強打で3−2から8−4とリード。相手も前衛をフルに使って反撃してくるが、最後はレフトエースをシャットアウトして第1セットを先取した。

第2セットもリズムを持続、絶妙のコンビで14−10とリード。修羅場を何度もくぐり抜けてきた沖縄銀行はここで本領発揮、持ち前の集中力で反撃し、時間差とレフトの強打で14−13から15−16と逆転、シーソーから18−20とセットポイントを握る。
しかしここから沖縄銀行の粘りを上回る攻撃力を披露。合宿の成果を見せ見事なつなぎでデュースに持ち込み、最後まで気持ちが切れなかった東北リコーが押し切ってストレート勝ち! 国体初勝利と共に5位入賞をもぎ取った。

「合宿の恩返しができた。しかし、この調子を前の試合でできてたらなあ・・・」
順位的にも一歩前進、初めて勝って終われる大会となった。
2強(富士通、住友電工)以外ならもはや実力に遜色ない。あとは如何に勝ちへ結びつけるかだ・・・

  宮城国体まで、あと1083日−


・明日を見据えて

全日本総合は鳥取市で開催された。前日の練習でエース門脇が捻挫、予選グループ戦は大事を取って加川がレフトを務めたが見事ストレートで勝利。翌日の決勝トーナメント、2回戦、3回戦ももたつく場面は多少あったもののストレートで勝ち上がり、準々決勝に進出した。

最終日の準々決勝は群雄会が相手。昨年、同じく準々決勝で対戦し敗北した雪辱を晴らしたいところだ。
序盤、互角の内容であったが攻守にバランスの取れた群雄会相手になかなか突破口を見いだせない。ミスの差で第1セットを奪われる。

第2セット、強力サーブが音沙汰ナシ、相手のコンビとパワフルなエースに確実に決められると、東北リコーは全く対抗できずにまたも準々決勝で姿を消した。
「実力は去年に比べれば確実に上がっている。しかし、チームワーク、意思の疎通において技術に追いついていない。ここぞというときに違いが出る」
この弱点は一夜漬けで直るものではない。如何に短時間で昇華していくか、部員全員の気概が試される。

◇  ◇  ◇

櫻田記念は大阪・舞洲で行われた。これで東北リコーは初めて全国大会全てに出場できたことになる。年間を通して安定感が出てきた証拠だ。

予選リーグは住友電工と対戦。やはり全国大会でほとんど優勝をさらっている現在の最強チーム相手に歯が立たない。それでも松下電工津(三重)相手には接戦の末破り、グループ2位で上位トーナメントに進む。

上位トーナメント初戦は沖縄銀行。今度は負けられないという気迫が感じられる沖銀に対し接戦を演じるが、一丸となってプレーする相手にミスを犯し第1セットを奪われる。
第2セットはサーブが爆発、チャンスからの攻撃で全く相手を寄せ付けない。単調になってはさすがに沖銀といえども打つ手なし、追撃を与える暇なく攻め続けこのセットを奪う。この調子が次のセットも続けばよいのだが・・・

第3セット、ファーストサーブが全く決まらなくなった。ここが勝ち続けるチームとの差か、3セット通して一定のパフォーマンスを見せる相手に対し、バラツキの多い東北リコーは水物サーブに頼らざるしかなく、その手が通用しない今はいいようにやられるだけだった。
勝負所を把握している沖銀に対し、なんとかしようと思えば思うほど気持ちはカラ回り、全くリズムを取り戻せないまま国体の雪辱をされてしまった。
「同じ相手に連チャンで負けられねぇ」トップチームの気迫が感じられた。

またしても準決勝へ進めず・・・今後上位に進めば同じ相手と何度も対戦するだろう。強いチームに連続して勝つということは並大抵ではないということを思い知らされた。

◇  ◇  ◇

練習試合を含め300セット弱をこなし全大会に出場、実業団を除けば全てベスト8以上という今までにない好成績を上げた。その上を目指すには・・・
「ベスト4を目標にしているチームが優勝を目指しているチームに勝てるわけがない。だから準々決勝を突破できない」
これだけが原因ではないだろうが、目的意識に差があれば練習内容から試合に臨む気力に差が出てくるのは当たり前。
「対外的には4強でも、チーム内の意識はもう優勝を狙っていく。辿り着く目処は立った」。いよいよ頂点目指して本格的に動き始めた。