かなり 実録 バレー部物語

・ZAOカップ開催

都市対抗の県予選は宮城桜会、NTT仙台、ささにしきクラブに対し、1セットを除いて全てひとケタ失点に押さえる。実業団県予選も圧勝、代表権を得た。

都市対抗と実業団の県予選の間に行われていた東北リコー主管の強化ゲームがZAOカップとして開かれることになった。より公式戦に近くなり、白熱したゲームが予想される。
第1回参加は12チーム。4チーム3ブロックに分かれて予選リーグを行い、各順位別に4ブロックの決勝リーグが行われた。 一応カップ戦なので3セットマッチの完全決着の方式にした結果、予選リーグ18試合中7試合、決勝リーグ12試合中9試合がフルセットとなる激戦となった。最終日の終了時間が予定より大幅に遅れてしまったが、東北リコーが7戦全勝で優勝、ホストチームの面目を保った。
「いや、それにしても大会を運営するって大変だ」。裏方になってみてその難しさを実感する。「宮城国体では是非とも優勝して欲しい。ウチにできることがあれば遠慮なく言って下さい」。他チームから心温まる励ましを受ける・・・もはや悲願は東北リコーのものだけではなくなっていた。

第1回ZAOカップ最終成績
優 勝 東北リコー 宮城   第7位 伊勢崎排工会 群馬
準優勝 JTクラブ山形 山形 第8位 山王球友会 茨城
第3位 富士通小山 栃木 第9位 日立米沢電子 山形
第4位 北上 岩手 第10位 ささにしきクラブ 宮城
第5位 日立金属熊谷 埼玉 第11位 NOK福島 福島
第6位 リコー厚木 神奈川 第12位 山武 神奈川

東北リコーは未だシードになったことはないし、優勝経験もない(4強さえない)穴馬レベルの地位ではあるが、他のトップチームからは怖い存在の1番手に名が挙がるようになってきた。その評価は−
「国体強化チームで力を付けてきたし、ハマったときの破壊力は凄い。早い段階では当たりたくない」
くじ運に左右される東北リコー、シードチームとしてはモチベーションが今ひとつの1、2回戦で対戦するのは避けたいということだろう。裏を返せば、それ以外なら勝てるという意味にも受け取れる・・・確かに爆発しても2セット続かず、地道につながれると弱さをさらけ出す現在のチーム力では妥当なところか。

((( Idle Talk )))
1997年都市対抗から1998年櫻田記念までの全国大会においての成績は29戦16勝13敗。この内、相手に1セットでも取られた場合の成績が0勝13敗! つまりここ2シーズンほどフルセットで勝っていないことになる。
2−0勝ち:16勝
2−1勝ち:0勝
1−2負け:6敗
0−2負け:7敗

それだけ格下相手に取りこぼさなくなったと言えるかも知れないが・・・さて、今年は?


・勝つチーム、負けないチーム

全日本都市対抗1回戦は京都と対戦。佐々木の連続サービスエースと相手ミスで6−4から14−6と大量リード。最後はブロックが決まり先取。
第2セットはファーストサーブが入らず、中盤で14−15と逆転されるも慌てずにプレーを展開、結局ストレートで2回戦に進出した。

都市対抗
強化チーム同士の対決、江口のスパイク。=大阪府立体育会館
2回戦は北陸電力(富山)と対戦した。北陸電力は宮城国体前年、つまり来年開催の富山国体の強化チームであり同じ実業団、その動向は気になるところ。
第1セット、スパイクとサーブが決まり6−3とリード、更に江口の3連続サービスエースで10−5。このリードが余裕を生み、17−12と一方的になりかけたが北陸電力も反撃、連続サービスエースと東北リコーのオーバーネットで19−18まで詰め寄られた。しかし頼りのエース門脇のスパイクと佐藤のサービスエースで振り切る。

第2セット、好調・佐々木の連続サービスエースでいきなり3−0。相手はタイムアウトを取るが、この後またもやサービスエースを奪い4−0と完全に東北リコーペース。
北陸電力のミスも目立ち10−3、あとはこのままシーソーに持ち込み完勝で3回戦進出を決めた。

昨年と同様、2回戦で国体強化チームとの対戦の後、3回戦でJT東京との対戦になった。東北リコーとしては昨年の都市対抗で勝ったものの国体では敗れており、今回はと雪辱に燃える。

第1セット、両エースの対決で6−6と互角。ここから時間差と相手ミスで10−6、そして15−8とリードを広げる。JT東京も反撃、3点差まで迫るが時既に遅く、東北リコーが逃げ切る。
第2セットは今野の連続Aクイックで抜け出すと、ブロックとスパイクで加点し12−7とする。もはや東北リコーのリズムは崩れず、最後は佐々木の時間差でとどめを刺した。

◇  ◇  ◇

次は鬼門の準々決勝、しかも相手は強敵富士通(兵庫)。果たしてどこまで通用するのか−。

相手ミスから今大会好調のサーブが威力を発揮、岩渕の連続サービスエースで5−1と理想的な出だし。 しかしこのリードを守りきれず、富士通はフェイントを折り交ぜた巧みな攻撃で8−8と追いついた。再度10−8と引き離すもまた追いつかれ、そして今度は11−13と逆転された。 相手に傾く流れを必死に食い止めようとするが、小さなミスで13−17とリードを広げられてしまう。 コンビで2点差まで追いすがるが、粘りもここまで。終盤はあっけなく引き離され第1セットを落としてしまった。

第2セット序盤、富士通のお株を奪うサービスエースがまたも立て続けに決まり、ブロックも冴えて6−3とリード。 しかし第1セット同様、またも富士通が徐々に追い上げ7−6と迫り、緊迫した長いラリーが展開される・・・ここが勝負の分かれ目、絶対に同点にされたくない東北リコーは全精力をもってボールを追うが、最後は富士通のうまい切り返しによってついに7−7とされてしまった。 同点にされたというより、長いラリーを落としたダメージの方が大きかったかも知れない。9−9から4連続失点、ついに集中力が切れた。ここからわずか4点しか奪えず大差で敗れてしまった。

「まだまだ前半しか勝負させてもらえない・・・」相手よりも多かったサーブポイント。しかしダブルフォルトも多すぎる。また、精神的もろさで連続失点も生んでしまった。

「前日の北陸電力やJT東京との試合のように、思い切り出来なかった。みんなガチガチで、サーブなんかは本当に駄目でしたね。国体のような特別な雰囲気じゃなかったのに・・・やはり、経験不足なのかな?」
欲しいところで取れる1点、与えない1点。1人1人がやるべき術を知っているかどうかが勝敗を分けた。


・ステップアップ、ベスト4!

国体県予選は七十七銀行、宮城桜会、ささにしきクラブをストレートで下す。余計な失点は少なくなってきた。「もう宮城県でセットを落とすことなんてできないだろ。もっと圧倒しなくては」

全日本実業団は福島市で開催された。東北リコーからしてみれば、地元と言ってもいい距離だ。
予選を圧倒的な力で勝ち上がり、翌日の決勝トーナメント初戦の2回戦は三菱電機(兵庫)との対戦となった。過去に実業団5連覇を誇る強豪であり、苦手な近畿勢に食らいついていけるか?

第1セットは攻撃力に勝る東北リコーが押しまくり、なんとひとケタに封じて先取!
第2セット、地力を発揮し始めた三菱電機に9−12とリードを許すが、相手がなんでもないボールの返球をアウトにさせて流れが変わり始める。ピンチサーバー・中村の起用が的中しサービスエースで追い上げ、更に相手のミスも重なり15−15、ここで東北リコーの4連続ブロックが炸裂し、ストレートで下して3回戦進出を果たした。

3回戦はまたも近畿勢・第4シードの造幣局(大阪)との対戦だ。ここが第1の関門、突破すれば大きく道は開ける。
2回戦同様、第1セットは東北リコーが突っ走る。打てば面白いように決まった。シード勢を物ともしない完璧な内容で先取したが、第2セットは造幣局が持ち味を発揮、ブロックアウトや僅かな隙を突いて巧みに切り返してくる。
中盤まで接戦、しかし相手の揺さぶりに動じることなく、終盤はコンビで突き放して見事な快勝、準々決勝に進出した。

◇  ◇  ◇

最終日、準々決勝の相手は東芝京浜(神奈川)、どちらかといえば見下ろせる相手だ。勝てば初の準決勝、そしてその可能性は非常に高い。それでも今まで多くの大魚を逃してきたことを考えれば決して楽観はできない。
案の定、動きは堅かった。相手ライトのスパイクに手を焼き、なかなかリズムに乗れない。しかし相手ペースで展開しても慌てないところが今までと違う。流れがくるのをじっと待ち、相手のミスでチャンスと見るや一気にポイントを奪い、頭一つ抜け出すとそのまま第1セットを先取。
第2セットも相手時間差とライト強打に手こずるものの、総合的な実力で上回る東北リコーがストレートで下し、ついに念願の準決勝進出だ!
何度も弾き返されてきた壁をいとも簡単に越えた。ここは余勢を駆って頂点まで上り詰めたいところだ。

全日本実業団
うれしい第3位、強化が実を結ぶ。=あずま総合体育館他
準決勝は住友電工(大阪)戦、“準決勝”という舞台が選手の目の色を変えるか。
東北リコーは佐々木の時間差と佐藤の速攻を多用して圧倒、18−13と大量リードで終盤を迎えた。
しかしちょっとしたミス、わずかな気の緩みは上に進むほど許されない。住友電工はここから猛攻を仕掛けデュースとされてしまった。アゲインを繰り返し、かろうじて先取したが、悪いリズムで第2セットを迎えることになる。

第2セットは住友電工が攻守にわたり東北リコーを上回る。だが、このまま終わらないのが今大会好調と言えるところ、12−16から反撃開始、ブロックワンタッチからの切り返しを門脇、佐々木が決めて追い上げる。
ところが連続ポイントでリズムに乗ろうとした矢先にダブルフォルト。19−20まで追い上げながら、なんとこの間3度もサーブミスでチャンスを逸しては取れるセットも取れないというもの。勝負は第3セットに持ち込まれた。

第3セット、東北リコーは気持ちの焦りと体力の限界が近づき、全てにおいて精度が狂い出す。百戦錬磨の住友電工はまさに王者の風格にして貫禄勝ち、やはりここ一番では接戦慣れの差が出てしまった。

それでも初のベスト4、櫻田記念出場も早々に確定した。胸に輝く銅メダルは部員に自信をもたらすだろう。そして打倒するは、未だ1勝もしていない富士通、住友電工。ここを破らずして頂点無し、眼中にはこの2チームしかない。