かなり 実録 バレー部物語

・試合漬け

2001年−。ついに地元国体を迎える年となった。
今年、新入部員は入らない。過去の経緯から見ても順調なレベルアップをしているし、リスクのある新たな力に頼るより、現戦力の成熟を選んだ。これなら実戦に時間を割ける。
そして今年から工藤が主将となった。エース門脇の負担を減らし、同年代主力の自覚も促す。「果たしてこのメンバーをまとめられるのか・・・このオレが」不安はつきまとうが、やるしかない。頂点目指して。

「君達は国体強化チームであったJTクラブ山形、東北電力よりも強い。十分優勝を狙えるはずだ。自信を持ってやって欲しい」。関係者から激励を受ける。
「国体前の全国大会、都市対抗か実業団でタイトルを取り、自信を付けさせて本番に臨みたい」。大沢にはそういう目論見があった。今年は結果重視、何としてもという意気込みが感じられた。

3月9日〜11日、その年を占う貴重な強化大会、第10回おきぎんカップに出場。工藤主将の選手宣誓は「途中で真っ白になった」くらいの超緊張、言葉に詰まってもう一度やり直す程だったが、これでチームがリラックスできたか?東北リコーは予選で並みいる強豪を撃破、特に住友電工戦は不利な状況から盛り返し、フルセットで破りB組1位で突破。昨年の教訓をしっかり生かしている勝利だ。
決勝リーグも北陸電力、九州電力鹿児島を破りA組横河電機と全勝対決。相手の素晴らしいデキにストレート負けを喫したが準優勝に輝き、順調な仕上がりを見せる。
しかしこのおきぎんカップも今年限りという話。一抹の寂しさを味わう。

3月17日〜18日は茨城の強化リーグに参加、順位を付ける第10回の記念大会で9戦失セットゼロの優勝。国体3位の実力を遺憾なく発揮した。

3月24日〜25日、強化リーグが埼玉で行われた。2セットマッチの5戦で東京電力埼玉とJT東京には引き分けた。3週連続の遠征で疲れもあるだろうが、これも悲願の優勝のためと、一心不乱にボールを追いかける。

3月31日〜4月1日、日本バレーボール協会主催の平成13年度全国9人制審判講習会が仙台市体育館で行われた。毎年国民体育大会開催地で実施されるもので、男子は横河電機、東京電力埼玉に地元東北リコー、女子は群馬銀行、山形しあわせ銀行に地元白謙クラブが実技のモデルチームとしてゲームを行った。
東北リコーとしては4週連戦であったが、以前より粘り強くミスも少なくなってきた。

4月7日と8日、東北リコー体育館にて日立米沢電子、JTクラブ山形と練習試合を行った。2日合わせて16セット、今が疲れのピークか。試合を追うごとに調子は上がったが、本番は出だしが重要・・・

4月22日、都市対抗の県予選は国体選手選考の兼大会になった。東北リコーは危なげなく優勝し、単独チームとしての出場権を獲得。これで国体出場への全ての障壁は無くなった。あとはもう、その日に向かって日々努力するのみ・・・
東北リコー 2(21−8、21−10)0 ささにしきクラブ

  宮城国体まで、あと174日−


・リハーサル大会

4月29日〜30日、東北リコー主管による第2回ZAOカップが志津川町、津山町で開催された。
昨年は日程の調整がつかず開催できなかったが、今回は新世紀・みやぎ国体 バレーボール競技成年男子9人制リハーサル大会に設定されるという大事な大会だ。

マネージャーである澤が統括責任者として東奔西走、各地区バレーボール協会、競技運営連絡会や国体南三陸実行委員会と連絡を密にし、準備を進めてきた。
津山会場、志津川会場の2体育館として初めてのリハーサル。細かい不具合は多々あったものの、大きなミスはなく大会は成功、関係者は本番へ向け自信を深めた。(優勝は8戦全勝で東北リコー)

ゴールデンウィーク中には大阪へ遠征、5月末の実業団県予選優勝を経て、6月2日〜3日に開催された静岡県伊豆長岡町での静岡プレ国体に参加、6チーム中3位となる。(優勝は住友電工)
静岡県は2003年の国体開催地、2年後の優勝目指して強化の真っ最中だ。同じ強化チームとして懇親を深めるが、自分達が歩んできただけに今後国体を迎えるチームの大変さがよく分かる。この競技が続く限り、これからも多くの強化チームと対戦していくことになるだろう。それにしても国体はビーチバレーを追加して9人制を廃止するのではないかとか、バレー競技は夏の国体に移動するのではないかというウワサが飛び交っているが、真偽の程は・・・

住友電工、中部徳洲会病院(沖縄)戦はフルセット負けだったが、大きく引き離されたセットもあった。もちろん1位を目指してはいたが、結果よりも思わぬ内容の悪さ。この時期にしては芳しくない。調子は下降線か・・・


・綺麗なバレー

今年最初の全国大会、全日本都市対抗が始まった。1回戦は奇しくも昨年と同じカード、中部電力岡崎(愛知)となった。第2セット、サーブカットが乱れ、両サイドに2段トスを上げるものの、中途半端なフェイントで相手チャンスになってしまう。そしてこのセットを落としてしまった・・・・雰囲気が悪いのか動きが悪いのか・・・第3セットは圧勝となったがなにか不安にさせる内容だ。

2回戦は松下電池工業(大阪)戦、ストレート勝ちはしたものの、何となく動きにいつもの躍動感が見られない。本気を出していないのか・・・

都市対抗
今年で幕を下ろす都市対抗、頂点目指し戦うが・・・=対九電鹿児島戦
3回戦は九州電力鹿児島戦。第1セット、相手の強力サーブで守備を乱されいきなり0−5の最悪スタート。その後も九電鹿児島の驚異的な粘りで7−14のダブルスコア、連続得点も僅か1回、全く反撃の機会がないままこのセットを失った。

第2セットも序盤からリードされてしまう。選手はこの状況を打開しようと懸命にボールを追うが強引な攻めが目立ち、一向に盛り返すきっかけがつかめず4−9。
バック陣は必死に拾い続けるが、前衛との連携がうまくいかず、割れたブロックの間から打たれたボールまでは処理しきれない。サーブカットのセッターへの返球率も悪くなりまさに悪循環だ。
ここはエースとばかりに門脇にボールを集めるが、単調になった攻撃を切り返されて10−16、厳しい展開は続く。

打っても拾われる、ブロックされる、ミスを犯す攻撃陣は自信を無くしてしまった。それでも負けられない思いで猛反撃、17−18まで迫るが、ダブルフォルト、そしてブロックされ万事休す、優勝どころか4年連続のベスト8入りさえも逃してしまった。これが国体優勝へのプレッシャーか?

結局一度たりとも追いつけなかった。勝負の世界は厳しい。勝った者が強いということ。今回は東北リコーが全く劣っていた。 サーブでそれなりに崩すことはできたが、サービスエースは僅かに1本。「いつもファーストのイン率が悪くリズムを崩してしまうので、チームとして少し威力を落としてでも入れるように心懸けた。それが裏目に出てしまった」
しかも体調が万全ではなかった。春先からの連戦、仕事との両立・・・心身ともかなり疲れていた。それで動きが悪く見えたのだろう。今のこの苦しみは後で必ず報われると思うしかない。

他チームの監督からは「綺麗なバレーをするね」と言われた。確かにいつの間にかリバウンドやネットプレーは影を潜めていた。そんなことをしなくても勝てると思ったのか、試合にアツくなってしまったのか・・・

「去年はウチらも負けちゃったから」と北陸電力の監督から大沢にねぎらいの言葉。
負けた悔しさと今年で最後になってしまった都市対抗(名目は全日本総合に統合)の寂しさを胸に大阪を発つ。下を向いているヒマはない。まだまだやることはたくさんある。

  宮城国体まで、あと118日−


・逆風

縁があって外部のトレーナーにお願いすることができ、トレーニングやストレッチング、アップの方法等を指導してもらうことができた。ラダーによる最先端のトレーニング等もここから始まった。指導を受けて初めて分かる、“今までなんと非合理的なことをしてきたか”を。必ずや試合に生きる、そう信じてトレーニングに励む。

◇  ◇  ◇

全日本実業団は静岡県浜松市を中心に開催された。都市対抗終了後、特にセンターラインのコンビと個々のサーブ強化をメインに練習してきた。
予選を今大会最短の31分で突破しての決勝トーナメントでは、2回戦で第3シード・北陸電力とぶつかる組み合わせとなった。昨年も第3シードを破っての3位、何回戦で当たろうと、この壁を突破しない限り上位進出は望めない。それにしても体育館は予選と同じ所、そこだけ何故か冷房じゃないのがうらめしい。

全日本実業団
対北陸電力戦。フルセットの攻防、気力の勝負、自分との戦い。=磐田市総合体育館
圧倒的な破壊力で1回戦を勝ち上がり迎えた2回戦、立ち上がりのサーブカットの乱れで2−5とリードされるが、ここから反撃に転じ攻撃陣が爆発、12−10と逆転。そのままシーソーで逃げ切り第1セット先取。

第2セットは逆に6−2とリード。しかしここから相手持ち味のリバウンドプレー、フェイントと強打を巧みに使い追い上げられ12−14、更にミスで連続失点の後、3連続サービスエースを決められ12−19、東北リコーは途中から気持ちがぷっつり切れたようになってしまい、ファイナルセットにもつれ込んだ。

必死に食らいついて序盤は互角ながら、北陸電力の軟打に対応できず、徐々に引き離される。惜しくも敗れたリコー厚木がわざわざ他会場から駆けつけ声援を送ってもらったが、もはやプレーに余裕はなく見透かしたように相手からのボールがコートに落ちる。見た目に運動量が低下し、完敗となった。
試合後、選手の殆どがぐったりした状態、練習試合で何十セットこなしても、こんなことにはならないだろう。それだけ目に見えない何かがあるのか。

都市対抗か実業団で優勝するというプランは、はかなく消えた。結果だけなら今までやってきたことを全て否定されてしまいそうであるが、この先もっともっと苦しい状況が待ちかまえているはずだ。しっかり切り替えて次の目標へ向かわなければならないが、今はその先に光は見えてこない・・・

  宮城国体まで、あと83日−