かなり 実録 バレー部物語

・推薦出場の実力

全日本総合は愛媛県松山市で開催された。県予選優勝で出場権は得ていたが、各種全国大会優勝チームは推薦で出場できるので、県準優勝のささにしきクラブが県代表で出場した。
国体終了後、練習試合などの実践的なことはしていない。間違いなくモチベーションも落ちている中でどう戦っていくのか。
開会式では他チームの顔見知りから“国体優勝おめでとう”と祝福される。それでも今大会はノーシードの無印(第1:富士通、第2:住友電工、第3:JT東京、第4:北陸電力)、実績はまだまだ足りない。戦い方は今までと同じに向かっていくだけだ。

((( Idle Talk )))
ある集合時間を守らない選手達がいた。そこで開会式前の練習で監督の怒り爆発、いきなりワンマンの超ハードプレーに完璧にグロッキー!
もちろん、監督としてこのだらけた雰囲気に渇を入れる目的であったのは言うまでもない。ただ、その選手は大会終了後まで体力が回復しなかったというウワサもある。(^_^)

予選グループ戦は住友金属和歌山との対戦、第1セットはミスの連発で7−10とされながら、サービスエースと相手ミスで先取すると、第2セットは終始リードでストレート勝ちを収めた。
相手が勝手に崩れてしまうところは国体優勝のメリット、貫禄勝ちというところなのか。しかし国体に比べるとやはり動きは今ひとつ。

決勝トーナメントは2回戦から登場、対住友特殊金属(大阪)戦は第1セット中盤で逆転されたり、第2セットも中盤まで接戦であった。
ストレートで下したものの、これを見ていた他チームからは「これで国体、ホンマに優勝したんかい?」とささやかれるほどの内容の悪さ。選手からは「言わせておけば」と、意に介しない様子なのだが。

3回戦もストレート勝ち、調子は上向きになってきた。やはり今までは試合感が掴めていなかったのだろう。
最終日は第1シード・富士通との対戦となる。国体の時に目標は2つあった。1つは優勝、もう1つは富士通を倒すこと。こっちはノーシード、思い切りぶつかり今度こそ倒す!


・戦い抜く力

全日本総合
江口の時間差、対富士通戦初勝利。=愛媛県総合運動公園体育館
準々決勝が始まった。しかし昨日とは雲泥の動きのよさ、序盤から追いつ追われつの大接戦、東北リコーがブロックとつなぎで逆転、7−4とリードを奪えば、富士通はサービスエースとブロックで9−10と再逆転。
15−15まで競ったが、サービスエースを奪われ、スパイクミスも重なり第1セットを先取された。
第2セットは終始東北リコーがリード。佐々木の強打やピンチサーバー・中村のサービスポイントで追い上げを許さず、6−3→11−6→14−7と大きくリード。
富士通はレフト中心に展開、ブロックやサービスエースで19−18まで迫るが、前半の貯金が効いてフルセットに持ち込む。

第3セット、連続ブロックで大量リード、11−4でコートチェンジとなる。しかしここで気が緩んでしまったのか富士通が猛追、サーブで崩されコンビを決められ11−8。息詰まる必死の攻防、「リバウンドとかヘタな小細工はこの場面で通用しないと思った。ここはもう打ちまくるしかない」レフト門脇が3枚ブロックを物ともしない強打で攻めまくる。
ついに東北リコーが20−18とマッチポイントを握る。が、ここぞというところでタッチネットとオーバータイムスでまさかの失点、20タイ。
これで富士通のペースかと思いきや、門脇が強打決めると最後は相手レフトを完璧にシャットアウトして振り切り、富士通戦9戦目でついに初勝利を挙げた。 「よし、このまま一気に行くぜ!」

準決勝は北陸電力を破った横河電機、どちらもシード勢を倒して勝ち上がってきたが、東北リコーが準々決勝の勢いそのままに走る。中盤でピンサ中村のサービスエースと相手ライトの強打をブロック、江口のスパイクで13−10とすると、その後もミスを帳消しにするつなぎの見事なリカバーを連発、門脇のサービスエースで締める。
第2セットは岩渕のサービスエースと佐々木の1枚ブロックで6−5と逆転するが、横河電機もさすがの攻撃でリードを許さず13−13。しかしこの緊迫した展開から門脇のクロスと相手の返球ミスで抜け出すと、最後は佐々木の速攻とレフトエースをブロックして連続ポイント、2大会連続の決勝進出を果たした。

中村はピンチサーバーという位置付けだが、練習試合などでもポジションには付かず、もうサーブ専門職と言ってもいい。宮城国体では必殺仕事人のテーマに乗って登場したが、結果的には芳しくなかった。その一打にかけるプレッシャーたるや相当なものだろう。優勝したからこそ重要になった今大会で本領を発揮した。

「もうまぐれとは言わせない」堂々の戦いぶり、とにかく負けられなかった今大会で勝ち進み、ついにここまで来た。狙うは連続優勝−。

住友電工との決勝、相手の高いブロックを意識したのか、スパイクアウトと細かいミスが続き3−7とリードを許す。ファーストサーブが入らず、住電はセカンドをきっちりセッターに返し、正確なコンビネーションを駆使して東北リコーのコートに容赦なく叩きつける。
東北リコーは見た目鮮やかでないにしても、リバウンド、ワンタッチを誘う軟攻で必死の追い上げを見せる。しかし前半の失点があまりにも大きく、相手ライトをブロックして19点まで迫るがもう一歩届かず、強打を決められてセットを落とす。

第2セットは佐々木の速攻と相手ミスで6−3と上々の滑り出し。しかし東北リコーはサーブが入らず、このセット2本目のダブルフォルトを犯すと、相手のスパイクがブロックを弾き12−12と同点にされる。タイムアウトでなんとかリズムを取り戻そうとするが、サーブカットミスから怒濤の連打で12−15と一気に逆転される。

いつもならこのまま引き離されてもおかしくない状況で執念のプレーを見せブロックが炸裂、17−17まで盛り返す。しかし住電は速攻で17−18とし、時間差を3枚ブロックで止め17−19、更に門脇の強打もブロックされて17−20。
江口がエンドライン際への頭脳的なフェイントで18−20と反撃、3回目のメンバーチェンジでピンチサーバーに門田を起用し最後の勝負に出るが、無念にも時間差を決められ力及ばず18−21、準優勝に終わった。

体力は限界を超えていた。数名は足をつりながらのプレー、猛攻に耐えながらの試合だった。思えば最終日に3試合をこなすのは今回が初めてであった。国体は1日1試合、消耗の度合いが違う。「疲れた。とにかく疲れた。最終日に勝ち残るのがこんなにも疲れるとは・・・」
悔しさはある。それでも部員には注目される中で決勝まで行けたという自信を持った。「俺たちの力はウソじゃなかった」。また1つ貴重な経験をして、快進撃を続けるはずだ。


・Once again!

櫻田記念は東京都町田市で開催された。予選リーグ初戦は横河電機。前大会の雪辱を期す相手に対し、6−7から佐々木の速攻とブロックで逆転、相手ミスと佐々木の速攻で第1セット先取。
第2セットは16−17まで激しいポイントの奪い合いを見せる。しかし岡本の連打とピンチサーバー佐藤のサービスエースで引き離すと、相手ダブルフォルトでストレート勝ちを収めた。

予選2戦目は東芝大阪。第1セット序盤で2−6とされるが江口、岡本が交互に決めまくり14−14、佐々木のブロックで17−16と逆転、終盤は江口のサービスエースと相手スパイクミスで先取した。
第2セット、またも序盤リードを許し2−5とされながら、連続ブロックが功を奏し13−10とリード。ところがここからスパイクミスを犯すと逆に連続ブロックを決められリズムを崩しファイナルセットに持ち込まれる。

ちょっとかみ合わないだけでこうなってしまうのがバレーの怖いところ。「負けたらどーなるんだ?」「1セット取ってるから最悪でも予選は突破か?」応援団から不安の会話がこぼれる。
ようやく目を覚ました感がある第3セットは前半から飛ばし6−0。ダブルフォルトを連発するが相手もミスのお付き合いでこのリードを最後まで守り、予選1位で通過した。

◇  ◇  ◇

上位トーナメント初戦相手は住友電工横浜(神奈川)、今度こそこの初戦を突破したいところ。
相手はブロックをワンタッチさせるスパイクを巧みに使い、3点連取で6−7と逆転。一旦は10−10と追いつくが、相手の気迫は全く衰えずスパイクとブロックで11−14と再度引き離される。佐々木と江口のコンビが冴えて16−16とするが、どうしても追い越せない。終盤はサーブで守備を崩され第1セットを落とす。一戦必勝の住電横浜と決勝までを睨む東北リコーの気迫の差、それでも蹴散らしてこそ強者だ。

第2セットも息詰まる展開、ブロックで10−8とリードしても負けじとブロックを返され10−11と大ピンチだが、ここで相手は痛恨のダブルフォルト。これで息を吹き返した東北リコーはこのチャンスを見逃さず江口と門脇の強打で14−12、あとはなんとかシーソーで逃げ切りフルセットへ持ち込んだ。

緊迫したラリーで、根負けした横浜がスパイクミスを犯し2−0、徐々に点差を広げ鈴木のCクイックのあと門脇のサービスエースで11−6、相手ミスもあり13−6と大量リードとなる。サーブカットも安定し、ブロックをワンタッチで切り返せるようになると強い!
横浜は終盤に息切れ、2本の連続スパイクミスで20−14、最後は岡本のフェイントがブロックに吸い込まれ、東北リコーが準決勝に進出した。

勝つには勝ったが・・・全日本総合でスタミナ不足を露呈したばかりなのに、ここでフルセットとは・・・楽に勝ちたいという思いがこうなってしまったのだろうか。

「やっぱり、あの2チームとはやっておかないと」と、江口がつぶやく。“あの2チーム”とは、今年前半に苦杯をなめた九州電力鹿児島と北陸電力のことだ。九電鹿児島は下位トーナメントに進み残念ながら対戦する機会はなかったが、北陸電力とはこの準決勝で激突となった。

第1セット序盤は門脇で押しまくり6−5とするが、北陸電力は執拗なリバウンドでミスを誘い6−7と逆転、更にスパイクとブロックで6−9とする。ラリーの主導権はことごとく北陸電力に握られ、なかなか点差が縮まらなかったが、鈴木のCクイックと相手ライトをシャットアウトして13−13。激しいシーソーを展開し18−18から相手ミスで19点目を奪うと相手スパイクミスでセットポイント。最後は門脇が押し込んで振り切る。

第2セットも3−5と苦しい序盤。しかしバック陣が奮起、堅い守りから連続失点を許さない。すると岡本と門脇の強打が炸裂して11−10と逆転、サーブで崩したボールを切り返して怒濤の攻めに転ずると、3連続シャットアウトで16−11。相手の強打をことごとく拾い、一方的な展開に持ち込んで全国大会3大会連続の決勝進出を決めた。

◇  ◇  ◇

櫻田記念
対住友電工戦、門脇気合いの強打。=町田市総合体育館
決勝戦、相手は住友電工。早くもリベンジの場がやってきた。第1セット、東北リコーの強力サーブの前に住友電工はサーブカットが乱れコンビが使えない。3−2から鈴木の速攻、佐々木のブロック、岡本のスパイクで6−2。更に相手エースをブロックすると遠藤のサービスエース、そしてまたブロック、9−2と大きくリードを広げる。こうなると勢いの付いた東北リコーは止まらず、鈴木のC、門脇のクロス、工藤のツーフェイントと猛攻、圧勝で第2セットを迎える。

工藤の絶妙なワンハンドトスから鈴木の速攻が決まって幸先いい第2セットのスタート、岩渕のサービスエース、岡本の強打と遠藤のサービスエースで6−2。相手ミスも重なり10−5と完全に東北リコーペースだ。
しかしこれが落とし穴、住電はじわりと追い上げ、17−12からサーブカットが乱れたところを付け込まれて17−14、更にスパイクとサービスエースを決められ1点差、東北リコーのスパイクが上ずりアウト、まさかの17タイ・・・

もうミスは許されない場面、江口執念のフェイントで切り抜けると、その江口がサービスエース! 勢いが戻った東北リコーは門脇のスパイクでマッチポイントを迎えると、最後は佐々木が完璧な速攻を決めて優勝! 見事リベンジを果たし、今季有終の美を飾った。

「最優秀選手賞、東北リコー2番、岩渕征宏選手!」 超攻撃的布陣を支えた起点は正確な岩渕のカットとパス、そして自らもサーブポイントを挙げるなどの活躍だった。
国体以後、目に見えて変わった。「楽しいバレーをしているように見える」、「声を掛け合い、一体感がある」。優勝するために何が大切か、身をもって体験したということだろう。
それにしても、まさか1年で2回も頂点に立てるとは・・・確実に東北リコーの波が押し寄せている。


・実りある一夜

国体優勝祝賀会で大沢が言っていた“縁の下の力持ち”への恩返しの意味もあるだろうが、全国大会翌週の仙南大会(第30回記念大会)に控え中心で参加した。この試合で現役を引退する選手もいる。
宮城国体で使用した曲を流し、主力組が応援に回ると、そこだけ異様に盛り上がり雰囲気はミニミニ国体だ。ローカル大会でのありえない状況に他チームは目が点になるほど。選手も応え、ハツラツプレーで連携ミスを吹き飛ばし優勝した。

12月下旬、東北リコーバレー部納会が秋保温泉で盛大に行われた。部長である平塚から激励の言葉。「今年の躍進、あの惨敗から見事立ち直った要因は素直に未熟さを受け入れたことと明るさであった。来年も挑戦することを忘れず、そして東北のチームとしてちょっと物静かなところがあるので、様々な“アピール”をプラスし、頑張って欲しい」

余りある酒を飲み放題、しゃべり放題。様々な思いを胸に夜は更けていった。
苦しい1年が終わろうとしている。しかし全ては報われた。もう押しも押されもしない9人制のトップチームとして君臨する東北リコー。だが彼らの戦いは、まだまだ終わらない。
強気な男達はこれからも走り続ける!