かなり 実録 バレー部物語

・チャレンジ&チェンジ

歓喜に終わった2001年。そして2002年はバレー部にとって大きな変革の年となる。
昨シーズンを最後に選手4名が引退。長い間監督を務めてきた大沢が総監督、そしてレフトエースだった門脇が監督に就任、岩渕が選手兼コーチとなった。マネージャーも入れ替り、大幅な組織変更が行われた。

昨年の勢いをつなげるためにもこのままでよいのではないか、という意見もあった。しかし「宮城国体優勝という一つの大きな目標をクリアし、新たな目標に向かってチームも新しくなるべき」(大沢)ということで、若い力で更なる飛躍を目指すことにした。
「優勝したからといって慢心していては、あっという間に落っこちる。常にチャレンジするという精神を忘れず、また大きな目標に向かって自分も変わっていかなければならない」。 その目標とは・・・「もう勝ち続けるしかないでしょう」

今年度からスーパー9・オールスターズ・フェスティバルという大会が新設された。各都道府県の選抜チームが出場するのだが、要項には“第1回は単独チームでも可”と書かれており、新チームを強化するには多くの公式戦を経験すべきということで出場することにした。大会は不確定要素が多く、翌年もルール改正で出られる可能性はある。が、開催時期が12月に変更になることから櫻田記念にも影響する。現時点では1回きりということか。
日本産業人大会もクラブチームに門戸を広げ、全国社会人大会へと改称した。そして国体も何やら改革の動きがある。9人制はどうなっていくのか・・・

予選になった河北杯は優勝、実業団も既に県予選免除が決まっており、新チームとなってどこまで通用するか、いよいよ試される6月が来た。


・最初で最後の?スーパーナイン

スーパー9は前橋市で開催された。予選リーグ初戦は昨年の全日本総合ベスト8、いつも練習試合で顔を合わす馴染みの富士通小山(栃木)との対戦だったが、自在なコンビで勝利。2戦目もストレート勝ちして予選1位通過。
トーナメントは動きが悪いながらも順調に勝ち上がり、準々決勝で富士通との対戦になった。

ここが勝負所とみた選手たちは突然動きが良くなり、攻守に猛攻を仕掛ける。第1セット、14タイから岩渕のサービスエースで一歩リードすると江口のフェイント、富士通レフトをブロックして4点差とすると、最後は遠藤の気迫あるサービスエースで先行。
第2セットは富士通レフトに連続で決められて0−2と苦しいスタートだったが、岡本がオーバーネットを誘った後、佐々木のサーブが連続で決まり逆転。相手ライトをシャットアウトして11−7、岩渕がここでもサービスエースを奪い14−9、最後は佐々木が豪快にスパイクを決めて、ストレート勝ちした。
相手に「ここまでされたらしょうがない」と言わせたほどの完璧な内容で勝利し、準決勝へ。

スーパー9
決勝戦、4枚ブロック。=ぐんまアリーナ
スーパー9は準決勝からが最終日。そしてその相手はJTクラブ山形となった。東北勢同士の準決勝対決は初めてかもしれない。相手はJT東京、九州電力福岡と並みいる強豪を撃破してきたが、こっちも山場を凌いで疲労感が見える。
手の内を知り尽くした者同士ではあったが出だし快調、相手レフトをブロックすると遠藤のサーブが決まって5−1と走り、そのまま先取。第2セットは5−9と4点差を付けられるが慌てず、じりじりと追い上げ12タイ、ラリーを制して16−15と逆転すると、リードを広げて粘る山形を退けた。

山形のある選手は「最終日ってこんなに疲れるものですか」と言っていた。これで国体、総合、櫻田、スーパー9と4大会連続の決勝進出、北陸電力との対決に挑む。2大会連続の優勝となるか?

第1セットはサーブとブロックで5−1と絶好のスタートを切る。しかし北陸電力お得意のリバウンドで8−8と追いつかれると、細かいミスが続いて抜け出せない。終盤のここからという場面でラストボールの返球がアウトになって18−20、最後まで波に乗れず先取される。
第2セットは岡本がサービスエースを決めて3−2、北陸電力がスパイクミスを重ね6−3、シーソーの展開から2段トスを岡本が執念で決めて13−10、高橋のフェイントで16−11、そのまま逃げ切ってセットオール。
第3セットは互いの持ち味を十二分に発揮した見応えのある展開。しかし流れを断ち切ってしまったのは東北リコー、ダブルフォルトで7−7とされ、相手フェイントをブロック吸い込み7−8、リズムは少しずつ相手のものになっていく。
北陸電力のリバウンド攻撃は分かっているはずなのに対処しきれない。そこが相手も強い所以なのだが、声も出なくなり足も止まり始めた。13−18から江口、高橋の強打などでなんとか食らいついて18−19まで粘ったが、この場面でも北陸電力は冷静に見極め絶妙のフェイント。最後はサービスエースを決められ力尽きた。

富士通の選手に「俺たちに勝ったんだから優勝しろよな」とからかわれたが、新チームでこの成績は胸を張れるであろう。新人でレフトを務めた高橋も無難にこなした。「チームとしてうまく機能しないと思ったけど、ここまでできれば上出来」と、門脇も胸をなで下ろす。因みに鈴木が敢闘賞を受賞した。
お情けで出させてもらったような大会でこの結果は御の字、次が本当の本番と位置付ける実業団にチャレンジだ。


・シードの戦い

全日本実業団は千葉市で行われた。今回は初のシード(第3シード)、ここからは真に追われる立場としてプレッシャーを感じることになるだろう。
この暑さで一番心配なのは体力。そこで予選と決勝トーナメント前半は主力を温存しながらの戦いとなった。それでも控えのメンバーが実力を発揮して快勝、優勝へ向けキツイ最終日の3連戦が待ち受ける。

準々決勝は横河電機戦、相手の強打を好レシーブして切り返す。工藤のトスワークも冴え最後までリズムを崩さずストレート勝ち! 第3シードのノルマは果たしたと言えるだろう。準決勝は前年度優勝JT東京、宮城国体以来の対戦となる。夏は滅法強い相手にどう立ち向かうか。

第1セットは逃げる東北リコーに追うJT東京の展開、20−18のセットポイントを握りながらブロックされてデュースに持ち込まれる。さすがに簡単には取らせてくれない・・・
高橋がコーナーに決めて21点、JTは速攻で同点。両エースの打ち合いは高橋が制し22点、JTはライトからブロックを弾くスパイクで同点。江口のスパイクをJT必死でつないだが返しきれず東北リコーが23点、まさに一進一退!
ここでピンチサーバーとして日下が起用される。確率の低い豪快なエースに期待するよりも相手を崩してチャンスをもらう戦法を選択したのだ。これが見事にはまり無回転ボールがカットミスを誘う。チャンスボールを高橋が強打で決めて辛くも第1セットをもぎ取った。

第2セットは勢いの差がもろに出た。10−5とリードすると相手の逆襲も無難に凌ぎ、ストレート勝ち。見事決勝進出を果たした。
相手は第4、第1シードを倒して勝ち上がってきた沖縄銀行、暑い戦いに慣れたチームだ。どちらも勝てば初優勝、冷房のないセンターコートで熾烈な戦いが繰り広げられる!


・飛ぶ鳥も落つ

全日本実業団
決勝戦、鈴木(勇)の速攻が決まりまくる。=千葉ポートアリーナ
第1セット、ラリーで中央から決められ3−5とされるが、鈴木、高橋が決めて6−5と逆転。だが東北リコーはファーストサーブが入らず、細かいミスも多く抜け出せない。
しかし工藤のトスワークが光り、ノーマークで打てる場面も。どちらもチャンスがありながら好プレーの連続で簡単にはポイントを与えなかったが、相手レフトのスパイクがアウトになって18−16、ついに終盤で抜け出した。
半澤の正確なカットからのコンビで江口がノーマークで決め20−17。最後は高橋のブロックを弾き飛ばすスパイクでまずは先取。

第2セット、カットミスから切り返され5−7。沖縄銀行のサーブに手こずりまたもカットミス、ここから沖縄銀行のコンビに翻弄され始める。
東北リコーはダブルフォルトにトスのホールディングを取られ7−10。相手コンビミスを起点に12タイと追いつくが、ここぞというときでサービスエースを決められ再度リードを許し15−19。そのまま逃げ切られ、ファイナルセットへもつれ込んだ。

気力が勝負の第3セット、出だしで沖縄銀行がダブルフォルトとオーバータイムスを取られ3−1。するとここからギアチェンジをしたかのようにフル加速、すかさず江口のサーブで崩して鈴木のダイレクトが決まり4−1とすると、江口が連続サービスエースを決め6−1! 一気の攻めだ。
工藤は速攻を選択、これが当たって鈴木、佐々木の強打が次々と相手コートに突き刺さる。更に相手レフトをシャットアウト12−5、鈴木のCで13−6と大量リードだ。最後は高橋がストレートに決めて完勝! 念願の実業団初優勝を果たした。

一番苦手とされていた暑さの中での優勝。東北リコーが更なる進化を遂げた瞬間だ。レフトの高橋も1年目ながら決めまくった。大会前半は控え組も活躍、試合に出なかった部員もサポートで走り回った。まさしく一丸の勝利と言えるだろう。夏場の一番勝ちにくいこの全実を制したことは非常に大きな意味を持つ。
「江口のサーブは効果的だった。(鈴木)勇介はすごいよ、全然止まらなかった。決勝の第1セットであんなにファーストが入らなくても勝てた。また少し自信が付いたんじゃないかな」と門脇は目を細くした。

優勝のメリットは大きい。早々と全日本総合と櫻田記念の出場権を獲得し、更に来年の実業団も予選免除となった。

((( Idle Talk )))
大活躍の鈴木。「いつも自分が活躍する時は負けてばかりだったので今度は絶対勝ちたかった」と打ち明ける。しかし消耗は激しく、閉会式に出ることもできなかった。
その後の記念写真では活躍を妬んで無視したのか、本当に分からなかったのか、連れてくることすっかり忘れてしまった。はしゃいで写る部員の遙か後ろで、這い蹲って進もうとする鈴木の姿があった・・・

優勝旗を支える旗立台、手にした当初は塗装が剥げ落ち、チェーンも切れていてボロボロの状態だった。閉会式終了後、役員、審判団へ挨拶に行ったところ、日本実業団連盟理事長から「優勝旗はだいぶ年期が入ってきてるので、三脚と優勝旗に吊り下げるリボンのリングを東北リコーさんの技術で直してもらえませんか」と頼まれた。
やってみましょうと快く引き受け、精通した部門担当者に依頼。再塗装し、チェーンを掛け替え・・・・見事復活、輝きを取り戻した。たとえ優勝旗は手放したとしても、東北リコーの魂は当分の間、宿ることになるだろう。


・連覇へ向けて

8月下旬、山形県酒田市で東北総体は行われた。宮城国体の応援団復活!ということで、斎藤団長が音頭をとって試合開始前から盛り上げている。案の定、他のチームと応援団が一斉に注目、しばし固まっている。ある観客は「会場に着き、車から降りたら宮城国体の応援が聞こえてきました。あの感動がよみがえりゾクゾクしてきましたよ」と、早くも興奮気味。

予選リーグでは気が緩んだ場面も見受けられたが危なげなく全勝、決勝戦は岩手(北上)との対戦になった。
ここでも東北リコーは全開、怒濤のコンビを見せて優勝を果たした。ラリーは殆ど東北リコーがモノにしており、まさに貫禄勝ち。まだまだ本気を出してないようにも見えた。

あれから1年・・・もう1年。次に挑むは“連覇”だ。次々とやってくる試練にも気負うところは全くない。というか大会間近になっても盛り上がりに欠け、気合いが入らない。あまりにもピリッとしない仕上がりにスタッフ陣が心配するほどだ。これからの死闘のために温存しているようにも見える選手たちは、今までとは違う余裕があった。
自信に満ちて第1シードが高知に乗り込む。