かなり 実録 バレー部物語

・前進!高知国体

スタッフをやきもきさせていたが、高知入りして俄然調子が上がってきた。「ほんと、宮城にいる時はどうなるかと思ったが・・・みんな分かってるね」。とりあえず戦闘態勢は整った。
国体の9人制は安芸市で開催された。宮城国体も簡素化を目指して取り組んだが、高知国体は更なる簡素化が実施された。輸送、宿泊、競技施設・・・不安要素は多い。

準々決勝は広島県(工大附工クラブ)との対戦になった。やはり初戦はどこか動きがぎこちない。守りが乱れ、動きも今ひとつで抜けきれない。相手のミスで第1セットを奪い第2セットは江口、岡本、高橋のスパイクで10点連取を含む大量リードをするものの、本来のペースとは遠い内容であった。

準決勝の相手は地元高知県に決まった。昨年の宮城国体とは全く反対の立場となる。実力的には東北リコーが上、いつものようにやれば問題はないはずだ。しかし大応援団が味方に付くと、とてつもない力が発揮されるのを身をもって体験しただけに油断は大敵。地元の悲願は手に取るように分かる・・・しかしここで勝ちを譲るわけにはいかない。

その準決勝、第1セットは遠藤のサービスエースで3−1とまずリード。8−3に広げるも高知は負けじとライトからのフェイントとサービスエースでじりじりと追い上げる。
中盤、離しても追いすがり白熱した展開、高橋の強打で15−11とようやく安心できたかに見えた矢先、地元応援団をバックにレフトのクロスとサービスエースで16タイと追いつかれた。しかし高知の時間差をブロックして18−17、佐々木が速攻コンビミスを懸命なフェイントで19−17にすると、相手が慎重になって攻撃の威力が僅かに緩まったスキを突いて逃げ切りに成功した。

第2セット序盤は互角、追いつ追われつの好ゲームで体育館内は大歓声に包まれる。高知のレフトを佐々木が連続シャットアウト9−5、半澤が強打の好レシーブを連発して波に乗り12−5と大量リードを奪うが高知はまたもや執念を見せ、ライトの強打とサービスエース等で1点差まで追い上げた。
自力でまた引き離しマッチポイントとするが、諦めない高知はブロックアウトとスパイクを決め20−19・・・それでも高橋が意地の一撃を見せて粘る高知をなんとか振り切り、地元優勝の夢を打ち砕いた。

選手はギリギリの状態だった。「ほんとヤバかった。ラリー途中でポジションが分からなくなった」(半澤)と言わせるほどだった。今までの国体では地元との対戦はなく、真のアウェイの怖さをまざまざと見せつけられたが、追いつかれても逆転を許さなかったところに進歩の跡が伺える。さあ、偉業まであとひとつ!


・連覇をこの手に

高知国体
対大阪戦、迫力満点の弾丸スパイク!=安芸市体育館
決勝は大阪府(住友電工)との対戦になった。「バーバーバーババッ、バーババーババ、バーバーバー、そーれ宮城、みーやぎー、みーやぎー、いけいけ〜」 プロトコール開始前の僅かな時間で応援に廻っている小野寺と今大会世話役の大野さんが手拍子に合わせて踊り出す。当然観客全員が注目、やんやの喝采を浴びた。まさに東北リコーならでは。決勝に向け弾みがつく・・・

第1セットは12−6、第2セットは10−6とリードしながら共に14タイに持ち込まれてしまった。第1セットはミスがらみで逃げ切られ、第2セットもサービスエースを決められ16−18とピンチ。しかし岡本のブロックと高橋の強打で追いつき、相手スパイクミスで逆転。そして第1セット早々で足を痛めた遠藤に替わって活躍していた日下のサーブが相手守備陣のど真ん中へ・・・レシーバーがまさかのお見合いするほどの球筋で起死回生のノータッチエース! 第2セットをもぎ取り、勝負はファイナルセットへ持ち込まれた。

大阪のサーブにこの勢いを断ち切られ、第3セットはダブルスコア4−8と追い込まれる。以前ならもう諦めムードになってもおかしくない場面で江口の時間差、佐々木の速攻で凌ぐとジワリ追い上げを見せる。両者一歩も引かない熾烈なラリーで館内は悲鳴の連続、打っては拾い、また上げる。めまぐるしく攻防が入れ替わる激戦を鈴木渾身のCで奪い3セット目も14タイ!
だが今度はこっちが追い上げの勢いをそのままに大阪のライトをブロック!15−14とついに逆転。ここからのリードをなんとか守りきり、最後は鈴木のCが強烈に相手コートに突き刺さり、劇的な逆転優勝を果たした。
「ダーッ!」と拳を突き上げる選手たち。その瞬間、門脇は誰よりも素早いスピードでコートをダーっと横切っていた。

宮城連覇!しかもただの連覇じゃない。バレーボールの競技別成績でも宮城が1位を獲得(9人制男子優勝、少年男子準優勝、少年女子3位)、ダブル連覇となったのだ。宮城115点、東京105点とわずかに10点差。地元高知勢の早々の敗退も重なったのだが、これはそう簡単に達成できるものではない。2度目のビールかけも爽快なものになった。

終わってみれば国体簡素化の不安は杞憂だった。厚いもてなし、熱い応援・・・部員の誰もが感動した。今回より豪華な設備や規模が大きい会場はあったが、ここまで心は動かされなかった。
全日本実業団に続く2冠、東北リコーに敵なしの時代がやった来たか?

((( Idle Talk )))
国体連覇を果たした東北リコーが安芸市立の全小中学校12校に印刷機を1台ずつ贈ることになった。
部員は市内の旅館に滞在。多くのわがままを快く引き受けてくれた市職員の世話係さんを含め安芸市民の歓迎や応援ぶりに、「これほどまでに温かくもてなしてくれた国体は初めて」と一同は深く感激した。
そこで、「何かお礼の気持ちを表したい」と考え、小中学校で使ってもらえる自社製の印刷機を贈ることにしたのである。
あの安芸での数日間の出来事は、今も胸に深く刻み込まれていることだろう。


・反動

3冠目指し第1シードで挑む全日本総合(岡崎市)の決勝トーナメント、ライバルチームは死力を尽くして阻止することだろう。2回戦で南部徳洲会病院(沖縄)、3回戦で北陸電力(富山)を共にフルセットで破り、なんとか準々決勝へ駒を進めた。
南部徳洲会は敗者復活で勝ち上がったためシード権を剥奪されたが第5シードを得る実力。北陸は先のスーパー9で優勝・・・加えて、2回戦ではメンバーチェンジミス(同じ選手同士で3回交代)で得点を献上したり、プレーに余裕を見せてフルセットになったり、3回戦では今季唯一負けている相手に気合いが空回りしたり・・・ちぐはぐだったが、それでも勝てるのはしっかりツボは押さえていたということか。

準々決勝は工大附工クラブ(広島)にストレート勝ちし、準決勝は富士通戦となった。相手の気迫に押され後手に回り、いつもなら決まるものも切り返され、大事な場面でミスを犯す。ノーシードとはいえ百戦錬磨の相手に対し3回戦までのような戦いが通用するはずもなく惨敗、あまりにもあっけなく夢は断たれた。
全身全霊を懸けた国体優勝のツケか、大会前に大きくコンディションを崩した選手もおり、万全ではなかった。それにしても短期間で開催される大会への挑み方というのは難しい・・・全国はそんなに甘くない。

選手は見えない敵とも勝負しているようだった。「3位だったけどプレーに後悔はない。負けて肩の荷が下りた。次はプレッシャーもなく存分に戦える!」と岩渕。

◇  ◇  ◇

櫻田記念
決勝戦、岡本の強打。=岸和田市総合体育館
今シーズン最後の大会、櫻田記念。早々にリベンジの場がやってきた。予選リーグで富士通と対戦、第1セットは江口の連続サービスエースで4−1としたが富士通もサービスエースを絡めて追いつきシーソーの展開。終盤に富士通レフトに連続で決められセットを落とす。
第2セットは10−13とされたが富士通のダブりに対して江口の連続サービスエースで13タイ、その後も相手のダブりやスパイクアウトのミスが続き、最後は岡本のクロスと相手のトスミスでフルセット。

第3セット、富士通はレフトにボールを集め4−7、しかしここでも富士通のダブりから鈴木のセカンドでサービスエースと追い上げ、相手速攻をシャットアウト、カットからの難しいボールを工藤が絶妙のCトス、鈴木が決めて13−15、そして工藤のサービスエースでついに17タイに追いつくと、連続エースで逆転! 最後は岡本の連続サービスエースでフルセット勝ちを収めた。
しかし内容は決して褒められるものではなく、勝負所で相手がダブルフォルト等のミスを犯し、勝ちを拾ったような逆転勝利であった。そこに付け込めるのは実力のある証拠なのだが・・・

予選リーグ1位、そして上位トーナメント初戦で松下電工津を下し、準決勝は全日本総合で優勝した住友電工戦。国体で負けた雪辱を晴らすべく全力で立ち向かってくることだろう。と、ここからが山場とばかりに俄然意気上がる選手たち。
第1セットは強力サーブで有利に進め、佐々木のA、岡本のフェイントなど軟硬織りまぜ13−8。住電も軟打とブロックでじわじわ追い上げるが、江口の時間差や佐々木のAとブロックで突き放し先取。
第2セットは住電の強烈サーブやスパイクを好レシーブしてリズムに乗ると江口の時間差で9−7、つないで鈴木のCで13−9、高橋サービスエース16−10と畳みかける。最後は激しいラリーから鈴木がCを叩き込んでストレート勝ち。

半澤のサーブカットは岩渕に言わせれば“神がかり的”。「正面にきたからですよ」と半澤は謙遜していたが、バンバン上げる上げる! まさしく完勝であった。

決勝戦はまたしても富士通、そして予選と同じような展開。第1セット互角の展開から先に東北リコーがオーバーネットのミスで崩れる。ここぞという場面で打たれる富士通レフトの強打を止めきれず、ラリーになると中でかき回され13−18。富士通レフトをようやくブロックして17−20とするが時既に遅く、予選と同じく先取される。

第2セット、ようやくブロックが合い始め、富士通レフトを2度止めて3−1。それでも富士通はレフトレフトで得点を重ね白熱の攻防を見せる。高橋がブロックされ9−11、富士通ライト強打とサービスエースで10−13。なかなか点差を埋められず富士通のサービスエース、岡本ブロックされ13−19。高橋強打で懸命に追いすがるが、最後は速攻を決められ万事休す、準優勝となった。

今度は予選のようなミスをしてくれなかった。東北リコーは準決勝で力を使い果たしたような動きでガス欠状態、許したリードを挽回する力は残されていなかった。
無念の準優勝−。しかし1年間を安定した戦いで優勝2回、準優勝2回、3位1回という素晴らしい成績を収めた。それでも部員は満足しない。常勝目指して戦いは続く。
(22勝3敗、全国大会勝率8割8分という勝率を残す)