かなり 実録 バレー部物語

・完膚無きまでに

今年から6月に開催される全国大会がなくなった。スーパー9は規定上出場できないし、しかも12月開催になったからだ。調整もスローペースになった。
昨年でライトの岡本が家業を継ぐため引退(退社)した。これで宮城国体スタメンから両サイドが抜けたことになる。ライトには門田が入った。「乗ったときは凄いパワーを発揮するが、両サイドともまだまだ実践経験が浅い。目標はあくまで全国制覇だが厳しい年になるだろう」

待ちに待った全日本実業団は江別市で開催された。天候不順な北海道は涼しく、これが味方になるかもしれない。第1シードながら予選あり。しかし日本無線(東京)にフルセット。相手サーブミスなどの自滅で勝ちは拾ったが、出だしの大きなつまずきはチームの未完成を物語る・・・それでも決勝トーナメントは実力差もあって順当に勝ち進み、準々決勝で横河電機(東京)との対戦になった。
第1セットは簡単に取ったが第2セットは大苦戦。24−23から半澤がサービス、いつもならメンバーチェンジなのだが、すでに交代済みだったのでそのままセット。フワーっとしたボールが相手コートへ・・・しかしカットタイミングがずれたかミスを誘い、後ろへ弾く。万が一が出た! 「よしっ」万全のコンビ体制を敷きチャンスボールを待っていたのだが、突然に主審のホイッスル! なんだ?

なんと隣からボールが飛び込んできてノーカウント!「マジで!?」。リスタートは軽くあしらわれ24タイ・・・
それでも最後は佐々木がベンチにサービスエースを宣言して見事実行、超豪快に相手コートに突き刺さって30−28、どうにか振り切った。「以前住電とやって、ここから逆転負けをくらったことが頭をよぎった」と、ノーカウントのシーンを振り返る部員もいた。

全日本実業団
準決勝、3枚ブロック。=江別市民体育館
中部徳洲会病院(沖縄)との準決勝、相手は昨年までクラブカップ3連覇を果たし、今年から実業団登録した強豪である。宮城国体決勝の相手は更に強くなって立ちはだかった。
第1セット、自らのミスと相手のサービスエースであっという間に引き離される。何とこのセット8本のSPを決められた。信頼をおく岩渕、半澤の手元を幾度も抜けていっては勝ち目はないか。

今年からボールが天然皮革から合成皮革に替わった(自然保護らしい)。この対応が思った以上に難しく、更にメーカーによる感触のバラツキも大きくなり、以前よりサーブ力が大きく物を言うようになっていた。のびのびプレーの中部徳洲会はファーストがガンガン入りまくり、手に負えない状況であった。

このまま終われない第2セットはめまぐるしい展開から江口のサービスエースと相手のダブりで9−7とし、流れを引き寄せたかに見えた。しかし強打が決まらない。打ち合いになっても、いつの間にか相手のチャンスになって切り返されてしまう。そしてプレッシャーがかかってスパイクミス。ラストボールを高く返球したがサイドラインを割り11−13、これで緊張の糸が切れてしまった。カットは乱れその後もミスが続出し、前回王者の影もなく完敗となった。
「あの2人(岩渕、半澤)が取れないんじゃしょうがない」と、他チームから慰められる・・・「カットもノータッチエースじゃなかったし、積極的に行った結果だからしょうがない。チームとしてまだまだだし、弱点を克服できるよう特訓だ」


・がんばる!静岡国体

東北電力を高いブロックで封じ東北総体を6連覇して迎えた静岡国体は3連覇の偉業がかかる。弱点はフォローしきれていないが、体調だけは万全に・・・としたいところだったのだが、佐々木の腰痛悪化、岩渕の手足捻挫、遠藤が指を剥離骨折、伊豆長岡入りしてから江口が急性腸炎と、まさに満身創痍。更にランダムながらドーピングテストが実施されることになり、うかつに薬も服用できない。いくら最悪はポジション変更で対応できるようにしてあるといっても、ベストでないことだけは確か。

初戦を無難に突破し、翌日の準決勝第2試合で兵庫県(富士通)との対戦になった。ここが正念場、昨年は煮え湯を飲まされただけに意識しないわけがない。「とにかく集中して、最後まで諦めずに頑張ること」。そして当日、静岡県(選抜)が富山県(北陸電力)に快勝して決勝進出を果たした。残るイスは果たして−。

第1セット、第2セットとも0−2と嫌なリズムになりかける。しかしすぐ追いつき、第1セットは工藤がリズムを掴む連続サービスエースを奪い9−6、更に門田スパイク、3枚ブロック、高橋サービスエース、相手タッチネット、江口がブロックを弾き7連続得点で17−7、最後は鈴木の連続サービスエースであっさりと先取。
第2セットは2−4になるも、相手スパイクミスと門田のサービスエースですぐさま4タイとする。遠藤のサービスエースで8−6、更にセカンドがエンドラインギリギリに決まって9−6! 一気に盛り上がりこれで流れは完全に東北リコー。
富士通はレフトにボールを集め必死の反撃、スパイクとブロックで17−15と迫るが江口の時間差、高橋クロス、相手レフトを完璧シャットアウトでマッチポイント。最後はネットから離れた位置での2段トスを高橋が豪快に決めた。

まさかこんな一方的になるとは。そして決勝は地元静岡選抜との一戦、昨年もアウェイを経験したが今度は決勝戦だ。が、どんなことになろうともやることは同じ。全力を尽くし、そして勝ーつ!

翌日、会場は満員となった。もちろん殆どが地元静岡応援。しかし心強い援軍がいた。先日の準決勝勝利の知らせを聞き、東北リコーからバスで10時間をかけて20名強の応援団が駆けつけてくれたのだ。宮城国体の時もそうだったが、これだけで心はアツくなる。更に厚木、御殿場、沼津のリコー各事業所、販社からも応援をいただいた。負けるわけにはいかない!

静岡国体
決勝戦、攻守に貢献の門田。=伊豆長岡町総合体育館
遠藤のサービスエースで3−2、相手レフトがアウトにすると遠藤がまたもやサービスエース!5−2。ここから一進一退のラリーが続き見応えのあるプレーが連続する。僅かに東北リコーが押され気味、8−8の同点にされるが、静岡はオーバーネットと拾ったボールをお見合いしてコートに落とす痛恨のミス、更にミスを続けて12−8と4連続失点。
このチャンスを生かし江口の時間差等で15−9と怒濤の引き離し。鉄壁なブロックに岩渕、半澤、遠藤のバック陣が超安定。サーブカットとレシーブに殆どミスは見られない。最後はブロックで第1セットを先取した。

第2セット、岩渕のサービスエース、佐々木のBと快調な滑り出し。全日本実業団以降の成長が著しく、門脇に今大会MVP級の活躍と言わしめた門田のフェイント、相手中央の攻撃を完璧シャットアウトで9−4。江口の時間差と工藤が連続でサービスエースを決め14−7、勝負あったかに見えた。
しかし静岡が猛反撃、中央から強引に突破され、あっという間に2点差まで詰め寄られて今大会最大のピンチを迎えた。
大歓声に包まれる中、中央に上がったボールを佐々木が渾身の一打!これが相手オーバーネットで16−13。少し気落ちした静岡にすかさず鈴木がCを決める。ピンチを脱した東北リコー、最後は高橋が強打を決め21−15、この瞬間、東北リコーの3連覇が決まった。

「バンザーイ、バンザーイ!」応援団と勝利を分かち合う。終わってみれば失セットゼロの完全優勝! 今までで一番苦しかったはずの大会でこのような結果になるとは。これこそ塞翁が馬、戦前の危機感が集中力をより高めたのだろう。勝負事、最後の最後は“タマシイ”なのである。

それにしても宮城の応援団は素晴らしい! 全く静岡に負けていなかった。人数的には圧倒的に不利で相手が決めた瞬間は大歓声にかき消されるが、それ以外は見事なまとまりでカバー、時に地元より響くこともあった。選手は口々に「東北リコーへの応援は本当にありがたかった」と感謝していた。

今年から競技の配点が変わった。これまで団体競技の優勝チームには一律40点だったが、この改正で64点をゲット!宮城県の稼ぎ頭に躍り出た。しかし日本体育協会からは国体の肥大化防止策による9人制廃止案が提示されている。今後どのような展開になるのか予断は許さない・・・が、今は喜びに浸ろう、3連覇達成に!

((( Idle Talk )))
大会初戦(対岐阜戦)、試合開始直前で問題発生。国体では「ユニフォームに使用されるロゴなどは都道府県名より小さくなければならない」という申し合わせにより、胸のリコーロゴが背中の宮城よりちょっと大きいところがあるので、このユニフォームは認められないと大会役員からクレームが付いたのだ。
こういう要項は大会前日の代表者会議等で説明されてはいた。昨年もOKだったのでそのままにしておいたこっちも悪いと言えば悪いのだが・・・すったもんだの末、応急処置としてRマークをテープで隠したが、あまりの緊急さのため白のラインテープしかなく、めちゃくちゃ格好悪くなってしまった。新ユニフォームお披露目の大会だったのに・・・

「大きさの定義さえハッキリしていないのに」と、対応の悪さに怒った選手たちがプレーで岐阜を圧倒。いつもなら初戦は動きが硬いのだが、緊張も忘れて出だしから猛攻、そのまま優勝まで突っ切った。
因みに翌日からは赤いテープを購入し、目立たなくなった。東北リコーの3連覇は、眠れる獅子を起こした大会関係者のおかげでもあった・・・かな?