かなり 実録 バレー部物語

・納得し難し

全日本総合は金沢市で行われた。唯一取っていないタイトルだけに是が非でも優勝したい。しかしその思いとは裏腹に調子は今ふたつ。やはり国体で全力を使い切った反動は並大抵のことではないのだろう。
予選の中部電力岡崎戦、点数的には圧倒してストレート勝ちした。しかしキレのなさに加えて判断ミスも多い。予選はこういうことが多いのは分かるが、いつものようなミスとは悪い意味で内容が違う。徐々にペースアップしてくれればいいのだが。
決勝トーナメントは第4シードではあるが、初戦で横河電機と五木クラブの勝者と対戦することに決定。勝てば静岡選抜の中心だった群雄会か・・・調子の悪さを見透かされているような組み合わせとなった。少しずつ良くなっていけば・・・なんて甘いことはもう言えない。初戦から全力で行かなければならないだろう。

2回戦は横河電機との対戦。ここ最近は負けていないとはいえ、常に上位を狙える実力を持っているし、全日本実業団では苦戦した。コートもエンドライン後方が狭いサブコート、逆境を乗り越える力があるか。
第1セット中盤までは互角の戦い。しかしピンチサーバーを起用してもダブりで13タイ、相手にサービスエースを決められるという最悪のパターンで流れは横河電機に。
高橋のストレートがネット上をかすめてブロックの脇を抜けた。が、これが不運とは簡単に済ませられないアンテナ接触の判定とされリズムはガタガタ、タッチネットにスパイクアウトのミス連発で先取された。

クレームに尾を引く第2セットも苦しい展開が続く。スパイクがブロックに当たったのでプレーを続けたが、ここでもオーバータイムスを取られるという判定で8−13と大ピンチ。幾度となくこういう判定をされて、審判に不信感を募らせては試合にならない。反撃の糸口さえ見つからず、相手の思うようにやられて自滅してしまった。

いつもは冷静な選手たちも今回ばかりはキレた。試合後「アレはアンテナに当たってないって。ブロックは当たってたのに。こんな納得しない試合は経験がない」と、負け犬の遠吠えと言われたとしても不満をぶちまけるしか気持ちが収まる方法が見つからない。確かにギャラリーも絶句していたし、信じられないような判定も多かった。
ただ試合内容はこれらの不利がなかったとしても苦戦したであろう。両サイドが決定力に欠け、ファーストサーブに威力がなかった。何より気迫で相手に劣っていた。これが同じチームなのかと国体を観た人なら唖然としたかもしれない。

宮城国体から続いていた連続3位以上も途切れた。「3週間で天国と地獄を味わってしまった。まったく、ジェットコースターみたいだね。ウチらしいけど」。立て直す時間はあまりない。


・技より心

櫻田記念は東京都町田市で行われた。予選リーグで横河電機と対戦、早くもリベンジの場が設けられていた。
前回もそうだったが、相手の東北リコーに対する攻め方がいつもと違っていたようだった。しかしそれに対応できていない。第1セット前半は意識過剰で2−8とリードを許すが猛追して16−15と逆転。だがここから引き離せない。攻撃が単調となって決めきれず、再逆転された。

第2セットも中盤まで接戦。佐々木の連続サービスエースで17−14と抜け出すと、粘り強くつなぐいつものプレーが見られ、フルセットに持ち込んだ。
第3セットは両者一歩も引かず、デュースになる。打ち切れないスパイクボールが来てマッチポイントのチャンスだったが、フォローがダイレクトに相手へ返ってしまい20−21。
高橋がブロックアウト誘い21タイ、横河ライトから決めて21−22。横河ピンチサーバーがダブり22タイ。横河レフトから決めて22−23。ここで横河は1番サーバーに回ってきた。この試合、何本もエースを決められており絶体絶命! しかしファースト失敗後のセカンドを江口時間差で乗り切り23タイ。
櫻田記念
対九電鹿児島戦、半澤がオーバーカットで難なく上げる。=町田市総合体育館
天はまだどちらに味方するか決めかねているようだ。相手ハーフスピードのスパイク・・・チャンスと思った瞬間、レシーバーが重なり後ろへそらし23−24。門田に替わりHRに入って活躍していた佐藤がフェイント。ブロックされたが遠藤が倒れ込みながらコートに落ちる寸前で見逃しアウト判定24タイ、「おお〜っ」ギャラリーからため息漏れる。
押されながらも何とか凌いでいたが、東北リコーのオーバーネットで24−25。この判定にクレームを付けたが受け入れられない。「ネッチ、ネッチ!」今度はプレー中に相手タッチネットをアピール。これも受け入れられずプレーは続行、中途半端な動きになったところを速攻で決められた・・・またまた後味悪い結末となってしまった。

勝てるチャンスは何回も訪れた。でも自らのミスで手放した。攻撃力の単調さは前大会からさほど変わっていない。前衛陣の奮起が期待される。
先の九州電力鹿児島戦にストレートで勝利していたので、1勝1敗の予選2位通過。決勝トーナメント初戦は住友電工に決まった。「反省点はどこか頭の片隅に残しておいて、切り替えて頑張ろう。今年最後の試合、全てを出し切るだけ」と岩渕。そう、反省したからといって簡単に直るもんじゃない。静岡国体の例もある。ここまでくればもはや気力の勝負なのだ。

開き直れるか住電戦、第1セットは快調に走る。この集中力、これが東北リコーのバレーだ!と言わんばかりにつなぎまくる。・・・しかしこのまま逃げ切れない。なんと18−12から18−20にされ逆転負けを許してしまった。
第2セットは佐々木、工藤の強力サーブで奪ったが第3セットは終盤までシーソーで食らいつきながら自らのミスが響き力尽きた。
住電相手に各セットともまぁいいゲームだったが、優勝という目標があるだけに“いい”だけでは満足できないだろう。チャンスからフィニッシュまでの正確性に難がある。やはりそこは基本のパスができていないということか・・・

◇  ◇  ◇

苦しいシーズンが終了した。「今年は我慢の年だと覚悟していた。確かに厳しかったがそれでも優勝できた」。今年経験したことを、いい方向に生かしていけるはずだ。
新たな一歩を踏み出す東北リコーが、またひと回り大きくなる。