かなり 実録 バレー部物語

・基本を極めよ

「Creative & Destruction」2004年のバレー部のキャッチフレーズだ。今までの概念を打ち壊すほどの気概で挑むはずだったが、3月の強化ゲーム中に佐々木がアキレス腱断裂により戦線離脱を余儀なくされた。今季中の復帰がほぼ絶望な状態に門脇は頭を悩ませる。
昨年度から比較するとセンターにはライトから門田をコンバートし、ライトは新人の安重が務めることとなる。そして江口と高橋を入れ替えてレフトとハーフセンターに。不安が残るだけに控えにも必ずチャンスは巡ってくるだろう。県大会レベルは無難に優勝を果たす。

全日本実業団
日本精工戦、岩渕のオーバーカット。=熊本市総合体育館
全日本実業団は熊本市で行われた。今年度から昨年の実業団と櫻田記念のベスト4チームは推薦されることになった。予選も免除で決勝トーナメントに挑む。第7シードということは準々決勝で第2シード・中部徳洲会病院と対戦する組み合わせ。
東芝大阪、日本精工(神奈川)をストレートで破り徳洲会への挑戦権は得た。今度は昨年のような完敗をするわけにはいかない!

しかし徳洲会戦は強力サーブに手こずり第1セットは2−6とリードを許す。その後も要所でのSPに反撃も途切れ途切れ、先取されてしまう。
このまま終われない東北リコーだが第2セットも苦しい展開、徳洲会はラリーをものにし、連続サービスエースで5−7。追いついても相手ライトの強打とサービスエースをまたもや決められ11−13。息詰まる展開は終盤まで繰り広げられ、江口のふかしで19−20と先にマッチポイントを握られる。
ここで相手のダブりとスパイクアウトから、デュースの攻防を高橋の時間差時間差時間差で対抗、最後も高橋がラリーから中央ぶち抜き25−23、最終セットにもつれ込んだ。

第3セットは出足好調の10−4、普通ならこのまま逃げ切れるはずなのだが、優勝候補との対戦はちょっとしたことが命取りになる。ダイレクトを鈴木が押し込んだがオーバーネットを取られ、息を吹き返した徳洲会のファーストサーブを拾いきれない。貯金を使い果たし10タイ、ここからなんとかシーソーで持ちこたえたが、終盤でダブりやタッチネットで流れを引き戻せず18−20。最後はラリーから強打を決められ、あと一歩届かなかった。

「2段トスとかね・・・結局、パスの精度。これはもう地道にやっていくしかない」と岩渕はつぶやく。前日に海外出張から駆けつけた遠藤は途中負傷で1試合分もコートに立てず悔し泣きをした。この思い、次につなげるか。


・とどけこの夢、埼玉国体!

花巻で行われた東北総体は順当に決勝進出、地元北上相手に第1セット20−13とし、誰もが東北リコーの勝利は確実と思った矢先だった。4連続サービスエースとブロックを決められ、ラリーも制されて1点差まで詰め寄られた。最後は相手のダブルフォルトでかろうじてセットを奪い、結局優勝は果たしたが・・・まだまだ甘い。

埼玉国体
準決勝、高橋の強打。=所沢市民体育館
埼玉国体9人制は所沢市で開催、9人制男子初の4連覇に挑む。しかし大会前の練習中に日下がボールを踏んで足首を亀裂骨折。なんとか動けるが、ただでさえ少ないメンバーでやりくりしているのでこういう怪我は痛い。「痛いっすけど、まあ何とか動けます。やるしかないでしょ」
初戦の準々決勝は昨年の決勝戦の相手・静岡選抜。レフト江口、ハーフセン高橋だったのを昨年同様に戻していた。佐々木がいて機能することも少し考えられていたポジションだったのだが、やはりチームに違和感もあったようだ。違うポジションの経験、特に高橋にとって少しは幅が広がったか・・・初戦は文句なしのデキ。そして実業団のリベンジを果たすべく沖縄・中部徳洲会病院と準決勝を戦う。

第1セット、サーブで崩されリードを許すがビンサ佐藤投入から猛攻を開始、16タイとする。安重の強打で18−17と逆転するが、ここぞの場面で相手のレシーブが上回り、逆にスパイクミスを犯す東北リコーが4連続失点を喫しセットを落とす。

第2セットは序盤からリード、岩渕、安重のサーブで崩して両サイドの強打が決まりセットオールに持ち込んだ。そう、相手も完璧な強さではない。ここからは気力の勝負!
運命の第3セットは高橋の強打と門田がBを決めれば徳洲会も負けじと決め返し7タイの互角。サービスエースを決められ8−10になるが、相手ダブりと2段を工藤が決めて10タイにすかさず追いつく。
15タイまで激しい攻防で一歩も譲らない。しかしここで相手に連続強打を許し、2点差を追うことになるが沖縄の驚異的な守りでどうしても追いつけない。最後まで諦めずにプレーしたが無情にも点差は縮まらず、4連覇の夢は潰えた。

90分、見応えある試合ではあったが、勝たなければただの慰め。ここでもやはり2段トスの差、プレーの精度の違いが明暗を分けた感があったが、こればかりは一朝一夕に上達するわけでもなく、今は耐えるしかないか・・・
そして3位、4位決定戦は前半こそ13−14と踏ん張っていたが、ミスからもろくも崩れ去り・・・「目標が目標だっただけに負けてもう一回は難しかった」と門脇は唇をかむ。もはや気力を失ったチームに直後の順位決定戦は酷なこと。富士通相手にダブルスコアの大敗という結果となってしまった。
しかしあえて言うなら、ここでもう一度奮い立てないのが弱いところでもある。特に国体では順位決定戦でも多くの声援がある。その期待に応えることが使命でもあるのだ。
4連覇を逃したのは大きなショック。あとに響かなければいいのだが・・・過酷な戦いはまだまだ続く。