かなり 実録 バレー部物語

・綱渡り

岡山国体からわずか2週間後、全日本総合が北海道・千歳市で開催された。間を空けずしての試合がどう転ぶか。前年準優勝の東北リコーはこの大会でもシード(第3)。しかし予選終了後のトーナメント組み合わせ抽選は・・・3回戦で住友電工と対戦! 昨年、住電は2回戦でよもやの敗退、シード落ちしていた。

全日本総合
難敵・住友電工を下す。=千歳市スポーツセンター
両者順当に勝ち上がり、さあ3回戦。ここを突破しなければ実業団、国体の繰り返し。あとのことは考えられない。
江口のサービスエースと時間差でスタートダッシュを見せ、そこからほぼ互角の展開を見せる。10−6で住電タイムアウト後に高橋のサービスエースで勢いに乗るかと思われたが、住電も反撃、両サイドからの強打で15−14まで迫られる。が、安重の強打と岩渕のサービスエースで切り抜け第1セット先取。

第2セット、 住電に連続サービスエースを決められ6−7とされたところから形勢が逆転、簡単に7−14までにされてしまった。 ここで鈴木→佐藤にスイッチしてFL(レフト側センター)、佐々木がFR(ライト側センター)にポジションチェンジ。しかしセットは取られる。
第3セットはそのまま佐藤イン、序盤はサービスエースの応酬で予断を許さない。2点リードしてシーソーが展開されたが、佐藤の連続サービスエースで19−14。それもつかの間、住電の猛攻でデュース! 重苦しい雰囲気になったが、それでも最後は高橋の強打がブロックの脇を抜け、何とか耐えた東北リコーが振り切った。

危なかった。2セット終了時点で国体と同じような状況になってきていた。住電のファーストサーブが入り出し、カットがセッターに返らないと決定力が激減。跳ね返すことができたのは、ここぞのつなぎと負けられないっていう気持ちか・・・。
佐藤起用は「ある意味ギャンブル」と門脇。昨年入社だが1年間の新人研修で練習参加できず、今年は練習してきたものの業務の都合などで今大会が実質的な全国デビュー戦。とにかく吉と出て、高い打点の強打で勝利に貢献してくれた。

◇  ◇  ◇

準々決勝は北陸電力戦。当然ここは国体のリベンジを果たさなければならない。第1セットはその気持ちが強く出過ぎたか、抜けても追いつかれ一進一退の激戦で18タイ。しかし江口が20−19から時間差を決めて逃げ切ると、第2セットは一方的な展開でストレート勝ちを収めた。

宮城国体ではライトを務めたOB・岡本(北海道在住)が駆け付けてくれた。「暇がないんですぐ帰らないとダメなんですけど、いやーみんなに会えてうれしいです!!」
この日だけ観に来る予定だったので、前日の住友電工戦は絶対負けられなかった。危うく合わせる顔がないところだったが、お互い笑顔の対面を果たした。

準決勝の相手はクラブカップ、国体と優勝し、今季負け無しの岡山選抜。全大会制覇がかかってるだけにモチベーションは高いはず。全勝・岡山選抜に土を付けられるか?
第1セット0−3の苦しいスタートから徐々に追い上げ、岡山ライトをブロックして佐々木のサービスエースで一歩抜けると、更に相手のフェイントがネットにかかり9−6。あとは両サイドのスパイクで確実にものにし、最後は江口のサービスエース。

第2セット8−5から岡山は速攻やブロックで10タイにするとサービスエースで逆転、緊迫したシーソーが終盤まで続くことになる。18タイから安重サービスエース、岡山オーバータイムス20−18、岡山レフト強打20−19。そして・・・チャンスボールが返ってきて、これで終わったかと思った瞬間、安重の大きめパスを工藤トスしたがオーバーネットを取られ、まさかの20タイになってしまった。

佐々木タテ気味Aもトスが低くて打ち切れずネットで逆にセットポイント、しかし安重強打はノーマークで23タイ。遠藤のサーブで崩し、岡山ラストボールを思い切り高く上げて返球したが、ラインを割って24−23。流れといい勢いといい、またとないマッチポイントをもらいながら、最後の1本を決めきれずラリーから岡山レフトのスパイク吸い込み24タイ・・・
岡山レフト強打26−27、安重強打アウト・・・最後は粘り負け、フルセットにもつれ込んだ。

第3セット、東北リコータッチネット、岡山ライト強打8−10で鈴木に替わって佐藤投入。 しかし打開できず11−14と窮地に追い込まれる。
これ以上離されたくない場面で激しいラリーを制したのが安重の強打。そして佐藤の速攻がブロックされレシーブ弾くが、隣のコートまでいって必死につなぐと岡山のライトをシャットアウト! 意気上がる13−14。そして江口がレフトに回り込んで強打を叩き込み一気の14タイ!

佐藤B空振り!しかしボールはそのまま相手コートに落ちてラッキーの17−16、ピンサ川村、期待も空しく無念のダブり18タイ。しかし悪い流れを江口時間差で断ち切り19−18とすると江口がセカンドサーブで前にポトリと落ちるサービスエースを決めガッツポーズ、最後も江口がサイドライン際に決まるキレあるサーブで、激戦に終止符を打った。

ここでもスーパーサブ的に佐藤を投入したが、2セット終盤は鈴木のCもかなり決まってたので、交代するには勇気がいる。ここは動いて何とか流れを変えようとしたのが功を奏した。そして相手以上に粘れたのも勝因だろう。
バックの遠藤「きつかった」、レフト高橋「飛べなかったっス」・・・激闘の代償はちょっと大きいかもしれない。

決勝は富士通戦。第1セットは5−6までシーソーが続くが、富士通両サイドからの強打を止められず、簡単に落とす。
第2セットもじりじり離され8−12となるが、奮起して1点差に迫る。13−17と再度離されても、富士通レフトをブロック、工藤のサーブで崩し高橋強打、工藤サービスエースで17タイ! だが逆転までに至らない。富士通両サイドからまたも簡単に決められ2点差にされると、最後はラリーから富士通の強打がブロックを弾き、無念の準優勝となった。

最善を尽くしたが、「決勝はガス欠。昨日、酒を控えたのが失敗だったかな?」と苦笑の岩渕。「総合は3回目の準優勝ですか。タイトルには縁がないですねぇ」と門脇。しかし今までの成績から考えればよくここまで上がってきた。全力で戦うことを忘れずに・・・そうすれば結果は必ず付いてくる。


・国体廃止と国際親善交流

連覇を目指す櫻田記念は20回目を迎える記念大会。東北リコーは10回記念大会の拡大された枠で初出場を果たし、以降連続11回目の常連出場となる。そして今回は韓国チームを招待し、日韓国際親善交流大会となった。

この背景として国体改革がある。国体は簡素化して参加者を15%(約4500人)減らすという改革が実施された。その中に9人制廃止も含まれていた。撤回を何度も求めたが、2010年千葉大会まで存続させるのが精一杯な状態である。
廃止理由のひとつとして、“オリンピック・アジア大会で採用されていない種別”というところが引っかかった。これに対応するため、今回から国際大会とし、実績を作っていくことになったようだ。まあ廃止決定はそう簡単に覆らないと思うが・・・

櫻田記念
初めての国際試合。=大阪市中央体育館
予選第1試合の沖縄銀行戦はフルセットの大苦戦。第3セット8−13からメンバーチェンジで流れを変えようとするが、なかなか追いつけない。安重と佐々木が交錯して返せず18−20の絶体絶命のピンチ。高橋強打でまず19−20。そして息詰まるラリーは安重の強打が相手ブロックからアンテナに当たり、デュースに持ち込む。土壇場で追いついた東北リコーは最後に沖銀レフトをブロックして25−23、何とかモノにした。

第2戦のJT東京をストレートで下し、第3戦はいよいよ韓国・南楊州市(ナムヤンジュシ)との対戦。しかし実力の差は明らか。サブメンバー中心の第2セットでも、わずか5点に抑えてしまった。まあ結果はどうであれ初の国際試合、東北リコーにとって新たな一歩を記した。
第1セットの内容(13点)からメンバーを替えたのに、他チームから「(5点は)ちょっとひどすぎない?」なんてからかわれる始末・・・控え選手が張り切りすぎた?
南楊州市は結局下位トーナメントでもセットを奪えず敗退することになるのだが、実業団トップが集結する櫻田記念に参加するので、どんな強豪なのか期待しすぎのところはあったにしても・・・韓国レベルの実情はどれくらいなのだろうか。

◇  ◇  ◇

トーナメント初戦は沖縄銀行との再戦に決まったが、今度は盤石のストレート勝ち。前日苦戦したのが幸いしたか。
準決勝は住友電工が相手。全日本総合の雪辱に対して受け身になるような状況は、東北リコーにとってちょっと苦手。攻めていけるか?

互角の展開ながら、せっかくの強打レシーブも相手コートに返ってしまい、住電レフトから連続して強打を決められ14−16。相手ミスからのチャンスもつなぎミスで接戦をモノにできず、最後は江口の時間差が止められた。
第2セットは終盤まで19タイの白熱シーソー、住電時間差マッチポイント。安重のクロスが抜けたが、レシーバーにガッチリ拾われ、住電レフトの強打がブロック吸い込み万事休す、連覇の夢は絶たれた。

あともう一踏ん張りだったのだが・・・かなりチャンスな強打レシーブが返ってしまったり、相手苦し紛れのフェイントなのに拾いきれなかったり、サービスエースを奪ったのに次がダブったり、つなぎにお見合いしたり・・・大会を通して集中力が足りなかった。全日本総合の準優勝でほっとしてしまった感じであった。

成績が下降線なのが若干気がかりではあるが、今季無冠の東北リコーにもまだまだ付け入るスキはある。心技体を鍛え直して頂点にチャレンジだ!

((( Idle Talk )))
優勝した住友電工と松下電池工業は翌年3月、韓国遠征を行った。国務総理杯全国男女9人制排球大会に出場し見事優勝を果たしたのだが、大会前半は少ないコートで多くのチームが試合を行った(5クラス計100チーム、1コート16試合)ので、とにかく時間がかかる。
住友電工の初戦がなんと23時! 大会自体も3時終了であった。所変わればとは言うが、これが当たり前の韓国のバイタリティは凄い。
ちなみに韓国の9人制は殆ど6人制と変わらないとのこと。