かなり 実録 バレー部物語

・つなぎ切れ!

全日本総合は宮崎市で開催された。シード順の間違いで前代未聞の予選再抽選が行われ、今回は開催前から波瀾含み。因みに東北リコーは第4シード。
予選は九州電力福岡に替わって日本化薬(山口)と対戦。結局強豪との対戦ということではあったが、強い相手と戦うのはむしろ望むところ、「ウチは予選から戦った方がいい」。国体の惨敗を踏まえ、どう対応してきたかが問われる試合。岩渕はフルタイム出場できる。
第2セットは逆転を許し、中盤はサービスエースの取り合いになってちょっと雑にはなったが、まずまずのストレート勝ち。つなぎ重視で今回FRに入った佐藤は、ミスってもそれを帳消しにする積極的なプレーでリズムを作っていた。

予選結果では旧組み合わせでシード勢と対戦予定だった5チームは勝ち上がり、新組み合わせで対戦した5チーム中、3チームは予選敗退となってしまった。公平な抽選だからとは言っても当該チームの心情はいかほどのものだろうか。
これ以後、予選抽選会当日に組み合わせ情報を入手するのは非常に困難となる。

決勝トーナメントは初戦から全開。北陸電力との試合は第1セット中盤まで我慢の戦いながら、相手ミスを突いてピンサ川村、安重のサービスエースで18−14と離す。北陸は得意のネットプレーからの速攻と軟打で19−18と迫るが、高橋の強打がブロック吸い込みで逃げ切り。第2セットは圧倒してダブルスコアに押さえ込んだ。

全日本総合
住友電工戦、江口の時間差。=宮崎市総合体育館
3回戦は鹿児島徳洲会病院と初対戦。第1セットは強打とサービスエースが効果的に決まりワンサイド。第2セットも粘りのつなぎ勝ちで20−12。鹿児島はサービスエースなどで3連続得点と意地を見せるが、最後はダブりとなった。
相手の勢いをガッチリ受け止め、跳ね返した。チーム的にもいい感じになってきたのだが、ここまで活躍していた佐藤が負傷リタイア。今年前半戦も故障で動けなかったが、ようやく治った矢先の再発。「敬志が入って回転が良くなった」と言っていただけに、ここでの離脱は痛い。FRには今野が入ることになった。

富士通が横河電機に敗れる波乱。九電福岡、岡山選抜、廿日市クラブ、JT東京、日本精工などの強豪どころも敗退している。今後も新興勢力が上位を占めるようになるのか?

準々決勝は住友電工戦。相手サイドは佐藤が9人はおろかベンチにも入ってないので、あれっ!?て感じで確認してたようだが。
第1セット、住電は軟硬織り交ぜ連続得点を許さず、点差は少しずつ開いていく。東北リコーは安重に回して必死の応戦、安重ブロックアウトとサービスエースで追いすがるが住電もライト強打とサービスエースで13−17。最後はオーバーネットを取られて先取される。

第2セット、安重強打に今野サービスエースでリード、更に今野のサーブで崩し工藤ダイレクト、しかし今野ダブり7−6。住電追いつき、東北リコー引き離す展開から住電サービスエース13−14。今野のCと岩渕サービスエースで17タイ、白熱の激戦。
しかし終盤、高橋、安重の強打が何度も拾われラリーとなり、高橋ブロックされ17−18。カットミスから住電ツーアタック、住電サービスエースでマッチポイント。最後は高橋強打拾われ住電ライトの強打が決まり、粘り及ばずベスト8に終わった。

国体にあったリズムの悪さはほぼ解消され、持ち味の粘りとつなぎを十分に発揮していたが、住友電工戦ではつないでも決められない、決め切れない状態となった。今後はどうフィニッシュするかが最重要項目となるかもしれない。


・全霊を傾けて

今年度全国ラストゲームの櫻田記念は東京で開催された。昨年実施された日韓親善試合と16チーム選抜は今年も継続された。
佐藤が間に合ったのは朗報。ただし無理をすると先のようなことにもなりかねないので、要所での投入となるかもしれない。逆に高橋は悪化した箇所が癒えず、“できれば出したくない”ようなレベル。なので、今回は入社2年目の石川がレフトを務める。行けるところまで行くということだが、こういうチャンスを生かしてレギュラーの座をつかみ取らなければならない。
「まあこういう状態だから、予選リーグとはいっても気持ち的にはトーナメントと同じ。一戦一戦全力で戦う」

しかし初戦から“徳俵に足”状態となる。松下電工津戦ではフルセットの攻防。第3セット6−8となったところでFR鈴木と佐藤がチェンジ。更に石川リバウンドミス6−9でセンター佐藤と今野もチェンジ。
ムードメーカーが入りボールがつながるようになって怒濤の13−9まで持って行くが、これでも乗りきれない。電工津サービスエース、石川強打切り返され、安重アウトで13タイ。江口、石川が連続ブロックされたりラリーを制され17−19、追い込まれた。

佐藤のC、電工津レフト強打は白帯超えず19タイ、電工津ライト強打をブロックしてマッチポイント。しかし岩渕ダブりデュース、安重ブロックされ20−21、逆にリーチをかけられる。
この土壇場でレフトに上がる! これを石川打ち切って21タイ。するとラリーから電工津ライトがタッチネット22−21、最後は半澤のサーブで崩し、今野がダイレクトを決め、薄氷の勝利。

「言った通り、最初から総力戦」と苦笑いの門脇。病み上がりの佐藤は温存しておきたかっただろうが・・・今野を出してリズムを変える必要もあった。石川は苦しかったが、これがレフトの宿命。相手にマッチポイントを握られても強気で決めた。

櫻田記念
北陸電力戦、佐藤(敬)のC速攻。=印刷局市ヶ谷体育館
高さのあるJT東京戦ではFRに今野が入った。第1セットは0−2となるが、安重の3連続サービスエースなどで一気に13−5として先取。第2セットは9−10で足をつった遠藤に代わり川村が入る。5連続得点で19−14としながらJTの連続サービスエースなどで追い上げられ19−18。しかし最後は工藤のワンハンドトスから今野のCが決まり振り切った。

「大丈夫っすよ、行けます」と北陸電力戦は遠藤先発。先の対戦と同様、中盤から抜け出して第1セットを奪うと、第2セットは一方的な展開でストレート勝ち、尻上がりに調子を上げ、予選1位突破を果たす。

準々決勝の相手は予選2位ながら富士通に1セット奪った横河電機に決定。国体では完敗だったし、再度東北リコーと対戦するのは必然というしかない。ここに勝って上に行きなさいってことだ。この試合は佐藤がFRを務める。
第1セットはリードを保っての展開。江口時間差が決まると佐藤のセカンドサーブがエンドラインギリギリに落ちて13−8、勢いに乗って佐藤Cと安重強打ワンタッチ15−9、そのまま先取。

第2セットは17タイまで膠着。横河時間差、江口中央突破6タイ、横河レフトフェイント、佐藤Cで9タイ、横河ライト強打、安重強打13タイ。
ここまで追いつく状態から横河の速攻拾って江口の強打がワンタッチ、コートにポトリと落ちてリードするが、すかさず横河に決め返され14タイ。
石川軟打からのチャンスを江口ダイレクト、横河ライトのフェイントをブロック16−14。一歩抜けたが、横河ライト強打と中央からの攻撃をブロック吸い込み、またまた16タイ。

しかし横河は難しい2段トスを打ちにいって白帯に当て19−17。このチャンスを逃さず、見事な集中力を発揮してシーソーで守りきり、準決勝進出! 2セットとも最後は石川が豪快に決めてくれた。1セット目は効果的なサーブと見事なつなぎ。2セット目は押されながらも必死に食らいつき、逆転・逃げ切り。久しぶりにこれぞ東北リコーという展開だった。これなら準決勝の富士通戦に期待が持てるが、果たして・・・

第1セット、富士通サービスエース、安重ブロックされると、ラリーから速攻も決められ1−4と厳しい出だし。時間差と3連続サービスエースを決められ7−14と圧倒される。安重強打とピンサ川村のサービスエース、江口の連続時間差で15−18まで迫るのが精一杯、余裕で逃げ切られた。

第2セットは前半接戦を見せるがリードされる。富士通Aと石川2段トスミスで富士通レフトにダイレクト決められ3点差にされると、富士通セカンドサーブがエンドライン際に決まり10−14。必死の抵抗を見せシーソーに持って行くが、ブロックが簡単に抜けつなぎきれない。連続得点が奪えず、最後は富士通ライトの強打が決まってストレート負けした。

これまでは流れに影響しそうなミスがあっても何とかできたが、今度はそうはいかなかった。第1セットは結果的に最初にリードされた分を挽回できず、追いつこうとしたところでサービスエースを決められたのは痛かった。
ブロックが全然止まらず、これではつなごうにもつなげない。ファーストサーブの出来が悪すぎたのも要因の一つかもしれないが、もはやファーストのミスはタッチネットやスパイクアウトと同等のミスであるという意識でいかないとダメなのかもしれない。

控えに回った川村に岩渕が一言、「チャンスボールにしたって、いつも同じタイミングで上げりゃいいってもんじゃない。ま、30歳越えてからじゃないと分かんねぇだろうなあ」。レギュラーへの道は、かくも厳しい。

決勝は中部徳洲会病院が富士通をフルセットで破って初優勝。攻守にハイレベルな戦いではあったが、抜け出すきっかけはサーブ。サービスエースは水物だと言っても、やはり強烈な飛び道具を持つチームは強い。
“最低ライン”という3位確保で、来年実業団の第4シードは確定的。しかし成績が順当に落ちてきているので、ここら辺が正念場。監督、コーチが交代することも決まっている。選手・スタッフには激動の2007年になるだろう。
1987年から20年連続全国大会に出場することができた。これも一つの区切りとしてまた一歩、新たなる歴史を刻むべく突き進む。