かなり 実録 バレー部物語

・狂った歯車

全日本総合は富山市で開催された。今回はノーシード、予選はストレート勝ちしたが、動きとリズムは今ひとつ。佐藤のサーブは久しぶりに“目の覚める”という感じの威力で決めていたし、ピンサ川村も崩していた。これがつばぜり合いの状況で出れば頼もしいのだが。
第2セットは高橋に替えて石川がレフトを務め、不安を感じさせないプレーを見せてくれた。

佐藤が決勝トーナメント抽選に臨む。ここ最近、中部徳洲会徳洲会とは試合をしておらず(その前にウチが負ける)、右手をかざして「徳洲会のゾーンを引く」と意気込んでいったが、東北リコーが引いた場所とは・・・44番!
で、会場どよめき。43番と44番の勝者が2回戦で45番の第2シード・住友電工と対戦することになった。抽選前に住電の監督が「早めにガチンコ勝負しよや〜」と言ってたそうだが、ホントになってしまった。

全日本総合
日本無線戦、針生の時間差。=富山市体育文化センター
1回戦は日本無線と対戦。次の試合を意識しすぎると足をすくわれる可能性もある・・・という心配は杞憂。第1セットは高橋の連続サービスエースやプッシュ攻撃で8−2、第2セットはこの試合も高橋からチェンジした石川の強打、針生の時間差、岩渕のサービスエース、石川の1枚ブロックなどで13−4と2セットとも大量リードを奪い、相手のエンジンがかかる前に押し切った。次もこうあって欲しいものだが・・・

いよいよ山場の2回戦。破壊力抜群の住電攻撃陣に対し、どう対抗していくか。その第1セット、出だしに佐藤のダイレクトがアウトとなり、住電サービスエースで3−5とされ、佐藤のロングBや、後ろから安重の難しい2段トスを針生が決めてしがみついていたが、ダブりやブロックされると住電サービスエース、ラリーから住電ライト強打、針生時間差ブロックされ住電レフトフェイントで9−16、一方的となる。
このまま逃げ切られるかと思われたが、岩渕のサービスエースから猛反撃を開始、強打とブロックで16−17まで迫る。
この流れを嫌ったか、住電はセッターを含む2名をチェンジ、佐藤のネットプレーがホールディング、安重ブロックされ17−20。最後は住電のサービスエースが決まった。

第2セット出だしは針生の時間差や高橋に替わってレフトに入った石川の強打で3−2とし、白熱の展開で11−10から針生中央突破、住電も中央突破、ラリーから針生軽打、石川サービスエース14−11、流れは東北リコー・・・・と思われた矢先、住電ライト強打をオーバーネット、石川ブロックされ14−13。
必死に逃げる東北リコーに追う住電だったが、住電ピンサでカットミスから石川2段トスミス、住電チャンスからライト強打で16タイ、カットミスを我妻つなぎきれずリードを許すと、住電ライト強打を完璧シャットアウトが無念のオーバーネットで16−18。
これを挽回する力はなく、最後は通常ならサーブカットに参加しない今野が緩いサーブについ手を出してしまい、かすめてあっけなく終わった。

第1セットの猛追は岩渕のサーブで崩し続けたからこそ。アタックの決定力が低く、我妻もどこに上げたらいいか悩んでたように見える。個人の力は必要だが、それだけで打開するにも限界があり、チーム全体で噛み合わなければ上位進出など不可能。
第2セットは実力で劣るチームが最後にミスでひっくり返されるという負けパターン。「言葉もないです」と、最後のプレーに今野も呆然。プレー的に精度は上がってきたが、やはり前衛の凡ミスは避けられなかった。極言すれば第1セット初っぱなのダイレクトミス、あれで負けが決定したと言っても過言ではない。課題克服に全力で取り組まなければならない。


・活路を開け

櫻田記念は大津市で開催された。これまで東京、大阪での交互開催が通例だったが、今回から公募による開催になったようだ。
この大会はとても重要。実業団、総合と3位以上を果たしておらず、全大会にシード権なしの危機。先の住友電工戦のように序盤から強豪と当たることが多くなり、ノーシードから勝ち上がるというのはとても難しくなる。
また国体も4位であり、もしここで負ければ8年続いていた全国大会3位以上が途切れることにもなる。それだけにまずは予選全勝、1位通過は必須と言える。

代表者会議にてトップリーグ構想の話が出た。現時点での案は東と西に別れてホーム&アウェイのリーグ戦を行い、そこの上位チームが集まって開催されるのが櫻田記念になるようだ。
詳細は今後煮詰めていくだろうが、開催にこぎつける可能性は高い。しかしそこに東北リコーが参加できるかは何とも言えない。
国体廃止の代替?として発展していくかどうか・・・国体も隔年開催の種目とか改革が進んでいくようで、復活が無きにしもあらず。今後が注目される。

予選リーグ第1戦は日立製作所笠戸(山口)。全日本総合の反省をふまえ、今大会は初っ端からレフトに石川、FRに高橋という布陣。その効果はいかほどか。
第1セットを奪い、第2セットは追いかける展開から追いつき、強打とブロックで18−16とする。しかしピンサ川村のダブりと日立のサービスエースであっさり同点にされると、デュースから我妻のトスフェイントがオーバーネット、日立ライトに強打を決められフルセットとなる。

第3セットも流れが悪く7−10の劣勢。ここで日立のミスが続き、安重のサービスエースを軸に13−10と逆転。それでも日立ライト強打を止められず、同点とされたまま終盤へ。
ラリーから石川強打19−18、日立速攻がワンテンポ遅れ、それを見逃さず3枚ブロックが決まりマッチポイント。日立ライトに強打決められるが、最後は日立ライトをブロックして振り切った。

前衛が全然動けてない。コンビもしっくりいってなかったが、どうにか我慢して耐えた。バックは遠藤に替わって新人の梅津が第2セットから出ていたが、第3セットも梅津がそのままイン。自身もここは当然交代するだろうと思っており、「えっ!?」っと絶句したが、この切羽詰まった状況で最後まで持ちこたえた。実際、触る回数とかは遠藤とそれほど変わらなくても、それ以外の細かいところで差があることを自覚したのではないだろうか。
それにしても負けられないところで十代の新人とは、大胆な起用である。期待の高さが窺われる。

((( Idle Talk )))
試合当日合流予定だった門脇と工藤がかなり遅れて到着。まずは仙台空港発大阪空港行きの飛行機が離陸直後にトラブルで引き返すことに。で、修理後に同じ飛行機で再離陸。スピードメーターが動かなかったから直したというアナウンスがあったが、額面通りには受け取れない。ただでさえ飛行機嫌いなのに、これで飛行中は緊張しっぱなし。

大阪から京都への高速バスは満席となり、補助席で窮々の移動。そして京都から会場への鉄道は間違えた路線に乗ってしまい、分岐駅で気付いた門脇は飛び降りたが工藤が降りる前にドアが閉まり行ってしまった。
当然戻ってくるまで待つことに。「いや、まあ試合はこんなゴタゴタになってなきゃいいけどね、なんて工藤と話してたら案の定だよ(苦笑)」。
「去年の電工津にはフルセットでリーチまでかけられたんだから、それに比べたらどうってことないだろ」と、門脇が江口を慰めていた。

2試合目の松下電池工業(大阪)戦は持ち直しストレート勝ち、そして3試合目は実業団で苦汁をなめたJT東京との一戦となった。
第1セットは出だしから引き離し、終盤は持ち味の泥臭いつなぎで大差の先取となったが、第2セットはJTのサーブで揺さぶられ、4点差を追う展開。安重強打、ラリーから石川強打で19−20まで迫るが、あと一歩及ばずJTレフトに強打を決められセットオールに。

第3セットは東北リコーのスパイクアウトやタッチネットで6−9と苦しい展開。しかし安重のサーブが炸裂、ここから安重強打、JTレフト強打アウト、ラリーから安重軟打で同点、ラリーから石川強打、安重サービスエース、安重のサーブで崩しJTのFRがタッチネット、安重サービスエース、JTライトをブロック、安重のサーブで崩し石川ダイレクト、JTライト強打がネット・・・JT時間差で切られたが、何と安重のファーストサーブが11連続で入るというスーパープレーで逆転! フルセット勝ちを収め、リベンジを果たした。

2セット連続で圧倒できないチーム力が今の状態を物語っている。それにしても安重のサーブは凄かった。相手もお手上げ状態、ここまで連続でファーストサーブが入るのは記憶にない。それもただ入れるのではなく、崩しまくった。「ミスる気がしませんでした」と安重、勝利に大貢献となった。
やはり威力あるサーブを持つチームは強い。

トーナメント抽選。住友電工が予選2位通過だったので全日本総合からの再戦という雰囲気があったが、初戦は印刷局小田原(神奈川)となった。住電の監督が「前はスマンかったなあ。言うとまた当たるかもしれんので、言わへん(笑)」と、佐藤へ話していた。
小田原は予選で富士通から1セット奪っているし、油断は禁物。「1点を取ったとき、勝ったときの喜びをもっと出して行こう」と、ミーティングで岩渕が言っていた。
つまり納得するような決まり方じゃないと、首をかしげて考えたり選手間で話し合いをして盛り上がりに欠けてしまい、何とか良い方向に向かおうと努力してることが逆作用になっているようだ。

櫻田記念
印刷局小田原戦、佐藤(孔)のAクイック。=滋賀県立体育館
そのトーナメント初戦、試合はまたもフルセットとなる。第1セット18タイから印刷局ライトフェイント、安重強打拾われ印刷局ライト強打18−20。最後は印刷局ライト強打をオーバーネットしてしまった。
第2セットは石川軟打、佐藤サービスエース、石川強打でスタートダッシュを見せ、ダブルスコアのワンサイドに押さえ込む。ただ、あまりにも簡単にセットを取るとロクな事がないイメージがある。JT戦しかり、国体での秋田戦もそうだ。

勝負の第3セット、佐藤Bと石川サービスエース、石川のサーブで崩し安重ブロックアウトを取り3−0、ラリーから石川強打、針生の2段トスを石川決めると、佐藤サービスエース6−1。リードを奪うが、ミスも多く不安定な試合運び。それでも主導権を握ればこっちのもの、17−15と追い上げられたが、集中力を切らさず熾烈なラリーを制して勝利、準決勝進出を果たした。

第3セット中盤から追い上げられ厳しい戦いだったが、リードを維持しての展開には強みがある。2008年度の全日本実業団と櫻田記念の出場権を得たことは大きい。
それにしてもオーバーネットが目に余る。練習では問題ないのだから、「試合と練習の取り組み方、意識に違いがある」と門脇。どうやら試合のための練習になっていない、そこら辺が原因か。

準決勝の富士通戦はボロボロ。2セットとも出だしに連続サービスエースを食らい、序盤から4〜5点リードを追うようでは話にならない。相手に余裕の展開で進められ、最後も富士通のサービスエース。
ブロック止まらない、止めてもオーバーネット、相手に簡単にリバウンドを取られる、ピンチサーバー通用せず、同じ場面でサービスエースを取られる・・・どうしようもなかった。ノルマのベスト4を達成し、チームのモチベーションが切れたという理由だけではない実力差を見せつけられた。

今年最後の大会で何とか3位に食い込み、とりあえず実業団のシード権は確保した。が、現状のシードポイント的には“準々決勝で住友電工と対戦”する可能性が高い。来年も激闘を強いられそうだ。
春先は“レフト安重”の構想だった。怪我人がいて一年通してなかなかポジションが固まらず、ようやくここにきて同等のチームには競り勝てるようになり、今年の最高位でシーズンを終わることができた点は今後につながるかもしれない。
しかし付け焼き刃的な状態では上位チームに歯が立たなかったのも事実。更なる飛躍が期待される。