かなり 実録 バレー部物語

・七転び八起き

全日本総合は山口市で行われた。腰痛で病み上がりである安重を懸念し、BCに高橋、FR今野の布陣。予選は出だしにポーンと飛び出た第1セットは理想的。しかし第2セット後半、タカをくくったと言われても仕方ないようなミスが続出。試合中に別なチームになった印象を受けた。
誰かが断ち切ってくれればいいのだが、輪をかけてしまう。ちょっとした気の緩みが致命傷になることを肝に銘じなければ。

決勝トーナメント2回戦をストレート勝ちして、3回戦は北陸電力を下して勝ち上がってきた廿日市クラブ(広島)が相手。第2セット終盤、石川や今野の強打アウトなどで18−19とされるが、佐藤のクロス、廿日市の連続アウトでベスト8進出を決めた。
こういう展開は大分国体での富山戦が良い経験となった。この集中力がどのチームに対しても最初から発揮できれば文句なし。

全日本総合
日本精工戦、岩渕のサーブカット。=山口県スポーツ文化センター
最終日、準々決勝は第2シード・日本精工が相手の大一番。先の練習試合ではセット互角、決着を付けるときがきた。
第1セットはミスで0−3とされると、佐藤の強打がブロックされたり日本精工のサービスエースなどで3−9、更に日本精工時間差とFRからの強打、ライトからの強打が決まり、相手の攻撃を止められない。
差は広がるばかりで、渡辺サービスエースも既に8−17。最後は日本精工ライトの強打がブロックを抜け、ダブルスコアの大差で先取された。

江口の「切り替え!」という大声が聞こえる中、第2セットは連続失点の6タイから我妻のネットプレーと針生強打で切り抜ける。先日痛めた手が芳しくないのか、岩渕に替わりに途中出場した熊谷のセカンドサーブが、エンドラインギリギリに決まり9−7とリード。
石川の連続強打、2段トスの今野強打は当たり損ないが幸いして相手コートに落ちると一気に盛り上がり、佐藤の連続強打、渡辺のAなどで今度は東北リコーが大差で奪い返し、フルセット。

第3セット序盤は東北リコーがリードするが、日本精工は連続サービスエースで6−7と逆転。しかしすかさず追いつくと、激しい攻防を展開する。相手が時間差ミスとオーバーネットで15−12、更にスパイクアウトなどのミスが続いて17−13。
石川強打アウト、安重ダブりなど、こちらもミスで連続ポイントは奪えないがシーソーで凌ぎ、我妻トスフェイント19−15。日本精工ライトをブロックしてマッチポイント、最後は針生の時間差が決まった。

第1セット10点しか取れなかったときはどうなることかと思われたが、持ち直した。日本精工は気が緩んだのかもしれないが、それだけで勝てる相手ではない。やはり凡ミスが少なくなった。それに加えて相手ミス後に畳みかけ、戦意を喪失させたところが大きい。

準決勝は国体で完敗を喫した中部徳洲会病院が相手。第1セット、徳洲会サービスエース、熊谷の2段バックトスがドリブルで2−4となると、徳洲会ライト強打、FR強打ワンタッチを拾えず4−8。
東北リコータイムアウト明けに徳洲会サービスエース、ラリーを制され5−11、差は開く一方。我妻ワンハンドトスがオーバーネット、つなぎもオーバータイムス5−14。
徳洲会はサービスエース、ブロックと容赦なく攻め、針生の時間差が決まったものの徳洲会が連続で強打を決め7−20。最後は渡辺のAがブロックされた。

第2セット、ラストボールを高橋と針生がお見合い、徳洲会ライトがブロックに軽く当てて弾き0−2。徳洲会セカンドでエンドライン際へサービスエース、針生時間差、徳洲会は軽打やフェイントで攪乱し1−6、第1セットの動揺を引きずっている流れ。
これでは国体のリピート、徳洲会に対抗できる術はない。食らいつくようなプレーは感じるが、次の攻撃のために的確なアクションを起こす徳洲会に対し、しょうがなくてこれしかやれないという東北リコーではどうしようもない。
ピンサ川村もファーストが入らず14−20、ラストサーバーの佐藤にいちるの望みをかけたが、徳洲会レフトの強打はブロック吸い込み、またもストレート負けとなった。

7点・・・屈辱。「準々決勝で勝ってほっとした」では言い訳にもならない。“自分はたった1回しかミスをしていない”と思うかもしれないが、各々が犯してチームとしては9回ものミスにつながっている、そんな状況だ。
「正面からちょっと外れただけで上げられない。徳洲会に軽くあしらわれた」と岩渕。徳洲会戦の7点は全国大会最低点数タイ記録。ひと桁点数だったセットは、2000年の櫻田記念で住友電工に対する8点以来となった。
先輩達も宮城国体前年で情けない試合をしていたし、悲観することはない。重要なのはこれからだ。
チームでベクトルを合わせ、強い気持ちでチャレンジ!


・四苦八苦

県大会の河北杯は岩沼市民体育館で行われ、出るからには圧倒的に押しまくるはずだったが・・・1回戦の中田NFC戦で、県大会としては10年ぶりにセットを落としてしまった。
控えメンバー中心、全日本総合直後、相手はささにしきクラブを下して県クラブ王者となった新進気鋭、という条件ではあったが、取られたセットはまさしく全日本総合の再現、ミスがミスを呼ぶ最悪の流れだった。
東北リコー 2(21−19、15−21、21−13)1 中田NFC

最後は自力の差が出たものの、試合後は負けた中田NFCガッツポーズ、東北リコー無表情・・・どっちが勝者か分からない。
ガタッときたときの心のよりどころ、支柱がないように感じられた。「如何に他人に甘えてやってきたか、これからどうあるべきか見つめ直さないといけない。スタッフ含めしっかりやっていかなければ」
全国大会へ向け良薬になるか−。

◇  ◇  ◇

櫻田記念は新潟県小千谷市で行われた。関東、関西の交互開催が通例だが、昨年から公募による開催になったらしい。運営側が新潟国体までに大会を多く経験しておきたいということで新潟開催となった。
因みに小千谷市は成年男女6人制の開催地。2009年度の櫻田記念は札幌の予定だが、開催地が全国各地になるのは幸なのか不幸なのか・・・

予選リーグ第1戦の九電鹿児島戦はストレート勝ち。第2セットはダブルスコアに押さえ込んだ。出だしの試合としてはまずまず。
2戦目は日立金属NEOMAXマテリアル戦。第1セット終盤まで18−11とリードしていたが、日立はAフェイントと連続サービスエースで猛追。佐藤の強打とサービスエースでそれ以上の追随は許さず先取。
第2セット、針生の連続時間差から安重のサービスエースで5−3と抜け出すが、日立レフト強打、我妻バックトスがタッチネットで追いつかれ、石川強打がアウトで逆転される。
シーソーから高橋のサーブで崩し渡辺ダイレクト、ラリーから針生時間差12−8。日立レフト強打をブロックオーバーネット、我妻ドリブル、石川強打アウト、日立サービスエースで終盤またも追い上げられたが、最後はラリーから石川の強打がブロック吸い込みとなった。

ミスの連鎖はなかなか止まらないが、タイミング良くタイムアウトで流れを変え、大怪我せずに済んだところはナイスベンチワーク。第4組は東北リコーと横河電機が共に2勝を挙げ、予選通過となった。あとは直接対決で1位を決める戦い。

櫻田記念
横河電機戦、今野のCクイック。=小千谷市総合体育館
第1セット、手前に落とされたサーブを安重懸命にワンハンドレシーブ、ダイレクトで相手コートに返ったが、前に詰めた横河の選手を越えてラッキーなリターンエースが決まり、勢いに乗った。
連続ブロックと横河の連続ミス、石川強打、ラリーから今野Cで一気の7−1とした。16−7まで順調だったが、横河レフト強打、ブロック押し合いに負け17−10とされると、針生の2段トスが近すぎ佐藤返すもアンテナ、ラリーから横河ライト強打で17−12の5点差と、どうも後半に脆さを見せる。
しかし大量リードに守られ21−15で先取。

第2セットは出足快調、横河に連続サービスエースを決められるが、まだ10−8。自らのミスでの失点が多くなってきたが、13−10とリードして懸念される後半へ。
ラリーから我妻トスフェイントが相手チャンスになってしまい、ライトから強打決められ13−12、しかし石川強打、熊谷のサーブで崩し渡辺Aで15−12。
19−17ともう少しで勝利だったが、横河のピンサで崩されFR時間差、横河サービスエース19タイ、我妻のレフトへのトスがブレて横河にダイレクトで決められ19−20と逆転を許す。それでも何とかデュースへ持ち込み、横河Aアウトでアドバンテージをもらったが、針生ダブり24タイ。
好機を逃すと横河サービスエース、最後は横河レフト強打が決まり、セットタイとなる。

第3セット、横河A、今野C、今野Cブロックされると、針生時間差アウト、横河サービスエース、渡辺Aフェイントアウト1−5、ここで勝負は見えたか・・・安重サービスエースで10−12まで詰め寄るのが精一杯。両サイドの強打が拾われ、点差は広がっていく。結局フルセット負け、予選2位通過となった。
色々要因はあるが、敢えて言うならここはセッターの独り相撲ではなかったかと。それだけミスが目立つ内容だった。

決勝トーナメントの初戦はこれが運命か、日本精工に決定した。間違いなく全日本総合のリベンジに燃えているはず。全てを出し切らなければ勝利には届かない。
忙しい中、工藤・前コーチが駆けつけた。「さっき他のチームの選手と会って、現役復帰?ってからかわれました」と苦笑い。成長した姿を見せられるか。

第1セットは日本精工レフトをブロック、針生の時間差とサービスエースなどで5−2と好スタート。だが前半のリードでも余裕はなく、日本精工Cアウト、我妻エンドラインギリギリに決まるサービスエース13−11と、離したかと思えば日本精工の強打が立て続けに決まり13−14と逆転される。
一時は15タイとするが、日本精工FR時間差、熊谷の2段トスが短く佐藤がパスで返すだけとなり、日本精工中央強打で2点差。シーソーとなるがあと1点が遠く、先取される。

第2セットもシーソーの攻防、一進一退で9タイ。石川強打、佐藤のサーブで崩し針生時間差、佐藤セカンドでサービスエース、一歩抜けるとラリーを制し4点連取。
追い上げられる場面もあったが、石川の強打や今野のCが決まり、今度はリードを死守して21−18、またまた第3セットにもつれる状況となった。

第3セット、日本精工A、針生時間差、日本精工A、日本精工連続サービスエース1−4・・・この展開は・・・嫌な予感。
それでも徐々に追い上げ、日本精工レフト強打をブロックしてついに7タイとした。が、敵も然る者、追い抜かせない。シーソーから渡辺のAがブロックされると日本精工サービスエース9−12。
こちらも死にもの狂いで日本精工FR強打をブロック、高橋サービスエース、佐藤の2段トスを針生打ち抜いて12タイ、再度同点まで持ってくる。

しかし、しかし抜かせない。日本精工時間差、日本精工FR強打をブロックで真後ろに上げたが誰もフォローできず12−14。石川の強打からのつなぎがオーバータイムスの判定、2段トスが大きく佐藤の強打はアンテナ、ラリーからつなぎミスで日本精工強打、あっという間に13−19になってしまった。
最後は今野の強打がブロックされ、無念のフルセット負け。

何度か追いついたが、余裕がないところでのプレーは無理を生じ、タッチネットとかつなぎにミスが出てしまった。負けパターンは横河電機戦とほぼ同じ。
気持ちと言っても埋めきれるものじゃない。気持ちも相手を上回っていたとは言い難いが、やはり技術的に上げていかないと目標クリアは難しいだろう。個人的にもチーム的にも。
「以前、安重が決めまくっても最後の一本をミスったがために負け、ボロクソに言われたことがある。安重のせいで負けたと・・・そういうことでしょ」と岩渕。1点の重みを知る者の言葉は重い。
今野はいつになく打ちまくっていたが、またしても“今野スタメンでは優勝せず”のジンクスは破れなかった。残念。

東北リコーの“コートを走り回って盛り上げていく”スタイルは、ワンプレー毎にコート半周するとしても、疲労の蓄積は軽視できないかもしれない。現に試合後の選手は負けたこともあるが、疲労感は相当なもの。今回は全日本総合、河北杯、櫻田記念と立て続けだったので、尚更だ。
より強いチームを目指し、盛り上げ方だけを挙げても、チームカラーを捨てて合理的に体力温存するか、それとも走り負けしない体力を付けるか・・・色々考えさせられることがある。

「チームとしては、あるところまで来た。しかしその上を目指すなら、これで今年が終わりじゃない。まずは他チームをもっとよく見て、何が足りないのか、何が必要なのか、もうそこから来年は始まっている」と、準決勝を前に江口が諭す。
住友電工が予選で完敗した徳洲会にキッチリ借りを返しての優勝、今年最後に結果を残した。これはまさに東北リコーがしたかったこと。前衛の破壊力もさることながら、やはりしっかりつなぎ、守りきったからこその勝利。

年度で実業団と櫻田記念の両方ともベスト4以上に入れなかったのは10年ぶり。ただ年間の全国大会での3位以上は10年続いている。
周りから何だかんだ言われるだろうが、それも期待の裏返し。このまま惜しいでは終わらせない。

◇  ◇  ◇

納会で岩渕、半澤が引退を表明した。チームの屋台骨を支えてきたと言っても過言ではない両雄の引退は、また新たなる東北リコーの始まりでもある。岩渕が「自分に見合った力を付け、優れた技を付け、最後に気持ちが付いてくる。体・技・心、まずは気持ちよりも体力、そして技、そこを磨いて欲しい」とアドバイス。
いみじくもメジャーリーガーのイチロー選手がこう言っていた。「切羽詰まった状況は精神力でカバーできない」と。

試合は練習してきた成果。そしてその成果を100%引き出せるかどうかは気力にかかっている。実力が劣る状態で「気合い」でぶつかっても、番狂わせの少ないスポーツと言われているバレーでは十に一つの確率でしか勝てない。
体力、技術で同等、上回ってこそ、そこで気力の勝負に持ち込めるのだということを岩渕は説いているのだろう。
肝に銘じて王座奪還を目指す。