かなり 実録 バレー部物語

・筋書き通りに

河北杯、2年連続で中田NFCにフルセット勝ち。第3セットこそダブルスコアに抑えたものの、最後まで噛み合わない展開となってしまった。「何とかなるだろうでは気持ちで負けている」
調子が悪かったとか控え選手中心で息が合わないのはしょうがない・・・で済ませては、常勝も遠い。部長の大友からは「新型インフルエンザが流行っているので、(全国大会は)体調に留意して万全の体勢で臨んでもらいたい」とのコメント。確かに体調を崩している選手が多いので、しっかり整えて欲しいところ。

◇  ◇  ◇

ノーシードで挑む全日本総合は北九州市で開催された。勝った者が強いと言うが、強くなければ勝てないのも事実。新潟国体優勝後、それでも選手、スタッフは未熟さを自覚し、フロックと言われぬよう強化に励んできた。
しかし如何に気を引き締めたとしても、どこか緩むところがあるだろうし、調子が出ないのも避けられないだろう。ただ、前週の河北杯でそれを自覚できたのは収穫。

部員、OBの心に何か引っかかっているものがあるとするならば、それは全日本総合で優勝できていないこと。元監督で今春退職された村上さんから“全日本総合専用”の必勝ダルマを寄贈されたのも、そういうところから。
優勝できていないということは何かが足りない。その何かを克服できるか−。

予選グループ戦はTHK甲府をストレートで下す。内容的には可もなく不可もなしというところ。
決勝トーナメント組み合わせ抽選には高橋とマネージャーの遠藤が参加。予備抽選の結果、早い順番(10番目くらい)で本抽選に挑めることに。結果は第2シード・住友電工の直下、2回戦で激突するゾーンとなってしまった。会場は“そんなとこ引いちゃったね”的なざわめき。
しかし・・・抽選前、遠藤が「どこら辺が良さそう?」と高橋に訊くと「そうですねぇ、43番とかがいいんじゃないすか?」で、引いたのが見事43番! つまり望んだ番号だったのだ。
とにかく実業団で惨敗した借りを返す、リベンジしたいという思いの強さが引かせてくれたのだろう。「本当に勝つことの難しさを体験できる状況になった。問題は朝イチの1回戦、そこでしっかり勢い付け、チャレンジャーとしてぶつかろう」

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1回戦は東電群馬戦。石川、安重、佐藤、渡辺、梅津がサービスエースを決め、2セットともひと桁に封じ込め快勝。観戦していた住友電工にわずかでもプレッシャーをかけられたか。

そして住電戦。針生の裏時間差、住電ライト強打をブロックして主導権を握ると、永井タテB、安重リバウンドでブロックアウト、針生連続サービスエースで7−3。住電も盛り返し12−11まで迫るが、常にリードで終盤を迎え、最後は住電ダブりで21−19、かろうじて先取。
第2セット、ラリーから渡辺強打、渡辺強打ブロックワンタッチ、永井サービスエース、安重軽打、住電2段トスドリブルで5−0。これで完全に東北リコーペース、住電セカンドでサービスエースを奪うが、次はダブってそこに渡辺サービスエース、12−5。
一時反撃されるものの、住電もオーバーネットや2段トスドリブルなどのミスで乗り切れない。最後は梅津のサービスエースで21−13、ストレート勝ち。

第2シード撃破! あたふたするところもあったが、前半に珍しく?ダッシュを見せた。特に闘志が相手を上回っていたのだろう。1回戦までの2試合は石川と馬がセット交互にHRで出ていたが(馬がHRのときは石川が後衛)、やはりこの試合は万全を期し2セットとも石川。

リベンジは果たしたが試合は続く。3回戦の別府クラブは大分国体の選抜メンバーが占め、北陸電力を下す実力を持つチームであり、ここでホッとしていてはやられてしまう。
第1セット前半は要所でサービスエースが決まり、追い上げられた後半は相手の強打ミスに乗じて引き離した。
第2セットは別府のブロックに手を焼き6−10。永井と佐藤の速攻陣にボールを集め挽回し、別府ライト強打をブロックして15タイ。
こうなると流れは東北リコー、別府は2段トスを中央から強打したがネット、安重のサーブで崩し佐藤のC、佐藤のC、ラリーで馬のネットプレーから佐藤のC、石川のライト側時間差で怒濤の20−15、そのままストレート勝ち。

後半にひっくり返すところはさすがだが、相手に合わせたようなところが見えた。それにしても第2セット、馬が出たが1本も決められなかったというのは・・・「練習では誰も馬のスパイクに対応できない」のだから、実業団からの課題はまだ克服されていないようだ。結果を気にせずもっとガムシャラさが欲しいところ。


・武運つたなく

全日本総合
住電横浜戦、永井のBクイック。=北九州市立総合体育館
準々決勝は住友電工横浜戦。ラリーから永井B、横浜時間差を我妻1枚ブロック6−2とすると、そこからシーソーで確実に加点していく。15−9としたまではよかったが、このままいかないのが今の東北リコー。18−16まで猛追されたが、ここから3点連取して先取。
第2セットは横浜セッターのトスドリブルと佐藤のサービスエースでリズムをつかむと、引き離しにかかる。
針生フェイントミスで13−10、しかし針生が立ち上がれない。タイミングが間に合わず、かなり突っ込み過ぎた体勢で着地時に捻挫してしまった。タイムアウトで様子を見るが、続行できそうだ。それでもやはり15−10になって針生と川村がチェンジ。石川がHC、安重がHRに回り、このままリードを保って準決勝進出。

針生の交代時にちょっとポジショニングで混乱していた。馬投入も考えられたが、点差と流れを考慮し守り重視を選択、崩れずに逃げ切った。でも大量リード後、気の抜けたように見えたプレーが続出したのはいただけない。
針生は残念ながら準決勝出場を断念。攻めの要が抜けたのは大きな痛手。危機感がよい方向へ向かえばよいのだが・・・

シードで準決勝に勝ち上がってきたのは第1シード・富士通のみという波乱ではあるものの、そのシードを破ったのが全国常連の横河電機(第3シード・新潟選抜に勝利)と中部徳洲会(第4シード・日本精工に勝利)だけに、群雄割拠が鮮明になった格好だ。
2008年の国体以降、中部徳洲会、富士通、住友電工、日本精工、新潟選抜、東北リコーと各大会の優勝チームが異なることから、戦国時代に突入している状況が如実に出た。

次戦・横河電機戦は針生の抜けたHCには石川が入り、HRには馬。針生をベンチから外して他の選手を入れないということは、出る可能性がわずかでもあるということか・・・
江口や門田が言っていた“攻め切る”ことができれば、勝機も見えてくる。

第1セット、4−1とリードしたが、すかさず5タイに持ち込まれる。永井B、横河A、永井Bタッチネット、石川裏時間差はノーマーク、横河Bアウト、渡辺強打12−9。馬強打、石川のネットプレーから渡辺強打、攻撃陣は機能している。
2点リードで終盤を迎え、石川時間差、横河レフト強打、渡辺強打20−17。横河ライト強打、ラリーから永井のBが決まり21−18、相手のプレッシャーに打ち勝ち、何とか凌ぎ切った。

第2セット、永井ダブり、佐藤のCがブロックされたり、梅津のネットプレーはオーバーハンドがドリブル、横河リバウンドをブロックオーバーネットなどで流れに乗れず3−6とリードを許す。
馬強打、渡辺強打、永井サービスエースで12−14と粘るが、馬の強打や永井のAがブロックされ13−17と厳しい展開。最後は横河サービスエースで15−21。

第3セット序盤はリードを許すが、安重の連続サービスエース、ラリーから横河レフト強打アウトで7−4と逆転。コートチェンジ後も横河中央攻撃をブロック12−7、リードを広げる。
タイムアウトをきっかけに集中力を増した横河は急追、石川強打をブロックして13−11、ラリーから馬強打、横河時間差、横河A、横河レフト強打14タイ、ついに追いつかれた。
永井のB拾われ横河レフト強打15−16、16−17からピンサ鎌田で崩したものの横河中央からの強打を梅津上げられず16−18。ラリーから佐藤強打を横河ブロック、渡辺の強打が拾われ逆に強打を決められ横河マッチポイント。
永井のBで追いすがるが、最後は石川のダブりで17−21、フルセット負けを喫した。

残念。惨敗ならしょうがないという言葉も使えるが、中盤に5点リードなら勝ち切れよと・・・個々には頑張っていたが、やはり一度も練習したことのないフォーメーションでは、細かいミスが多々あった。それを挽回しようと個々の能力に頼るようになり、読まれやすくなったかもしれない。
だとしても横河電機はレシーブが素晴らしく、こちらからチャンスのコンビでも、ノータッチで決めさせてくれなかった。それが徐々にアタッカーの焦りを生んで力み、より単調への連鎖へ陥ったか・・・
佐藤と永井はブロックされたり拾われたりしておとなしくなってしまった。「3枚ブロックを抜けと言っているわけじゃない。付かれるのはセッターの責任。そんなんで落ち込むなよ」と門田。針生が欠けて今まで以上に元気を出していかなければならないのに、それができなかった。

優勝より住電にリベンジの方が目標として大きかったのかもしれない。住電戦後は集中力散漫のプレーが多くなったり、体調を崩した選手もいた。
相手からの苦し紛れの強打を簡単に弾いてしまうなんて、普段ではありえないプレー。オーバーネットも多かったし、2段トスもかなりブレていた。心技体とは難しい。

今大会は手応えがあっただけに、悔しい思いだろう。勝っても負けても大きな糧になるとは考えられた。優勝すれば2大会連続で揺るぎない自信を深めるだろうし、負ければ今までとは比べものにならないくらいの悔しさ、負けるとはどういうことかを味わえるだろうと。
「ゲームを捨てることなく、最後の最後まで戦い抜いたというのは次につながる」。この結果をどうつなげるか、大事な大会が迫る。


・戦わずして

櫻田記念は札幌市で行われた。予選リーグは横河電機と同組であり、リベンジするには絶好の機会であった。しかしここに選手の姿はない。

数人の部員が新型インフルエンザに感染した。全日本総合から櫻田記念までわずか2週間、単純に発症ルールに従えば、強行出場の可能性も残るギリギリの日程。出場のため様々な可能性を模索したが、世間が未知のウイルスに敏感になっており、コンプライアンス(企業の規則・法令に則って活動すること)の重要性が叫ばれる今日では、そんなリスクを冒すことはできなかった。

出場辞退・・・
試合で負けたなら諦めもつくが、悔やんでも悔やみきれない結末となってしまった。若いチームで免疫力が低く、大会直後で体力も弱っていた。不可抗力? いや、他は出場できているのだから、結果的にどこか緩みがあったと言われても仕方ない。
「甘かった。自分もインフルエンザなんてかかったこともなかったし・・・」と唇をかむ江口。

会期直前の辞退表明なため、大会はチームの追加補填は行わずに開催された。総合では国体で破った中部徳洲会が優勝し、櫻田記念では総合で破った住友電工が優勝した。東北リコーとの対戦が相手の力をより引き出してしまうのか?
辞退含め良くも悪くも東北リコーが今年度の大会を荒らしたのは間違いないだろう。

1997年の国体出場を逃して以来、積み上げた全国大会連続出場記録が12年・54大会連続で途切れた。まさかこんな形でストップするとは思わなかったが、これを教訓により強く、逞しく進まなければならない。
ただ、発展途上の東北リコーにとって最低でも4試合の真剣勝負をフイにした代償は今後大きくのしかかってくることだろう。

優勝したものの、かなり悔いの残った一年となった。最後が中途半端だったことで“このまま終われない”と、高橋が現役引退しマネージャーになる以外に一線を退く者はいなかった。
やるしかない、やらなければならない。