かなり 実録 バレー部物語

・因果応報

櫻田記念は前橋市で行われた。昨年はまさかの出場辞退、未だに信じられないというか心のどこかに引っかかるものがある。この思いを晴らすには、やはり櫻田記念で勝っていくしかない。
しかしレフト渡辺が故障により離脱し、石川がレフトを務めることに。実際、大会までにはほぼ完治したものの、控えに回ってもらう。石川で強化してきたフォーメーションを簡単に戻すにはリスクがあった。

予選リーグは日立笠戸が初戦。いきなりフルセットにもつれる大苦戦、第1セットは中盤に佐藤のBや熊谷のサービスエースで突き放したが、第2セットは日立レフトのサーブで揺さぶられ、大差で落とす。
第3セットはライト鎌田に替えて馬を投入、佐藤、永井の速攻で攻め、手こずっていた日立レフト強打をようやくブロックして5−1とリード。このスタートダッシュが効いて終始優位に進め、最後は馬の強打が決まって初戦勝利。

櫻田記念
日本精工戦、熊谷のサーブカット。=ぐんまアリーナ
2戦目は日本精工と対戦。この試合も苦しい展開が続く。第1セットは終盤まで互角、馬強打アウト17−19になるが、針生時間差、ラリーから馬強打で19タイ。馬の2段トスから針生強打アウト、我妻レフトへのトスミスも相手ブロックそのまま吸い込み20タイ。日本精工A、日本精工レフトの返球はマーカー外21タイ、針生強打、日本精工も中央から強打22タイ、ここで日本精工サービスエース、最後は石川の強打がワンタッチでつながれると中央から強打決められ22−24、惜しくも落とす。

第2セット、前半から石川、馬の強打で引き離し11−5。日本精工はサービスエースで反撃を狙うが、佐藤Bで15−8、針生時間差16−9、我妻ワンハンドトスから永井Cで17−10、確実にシーソーで加点しセットを奪い返す。

第3セット、7−13と一方的になりこれまでかと思われたが、針生時間差、針生強打、梅津サービスエースと反撃の狼煙を上げると、佐藤A、永井Cブロックアウト、鎌田サービスエースで14−15と驚異の追い上げ。
一旦は17−20とマッチポイントを握られたが、針生時間、日本精工レフト強打をブロック19−20で望みをつなぎ、安重起死回生のサービスエースで20タイ! 更に日本精工Aがネットで一気にマッチポイントを奪い返す。
だがここまできて勝ち切れない。22タイから石川強打アウト、最後はラリーから強打を決められ22−24、土壇場での追いきもむなしくフルセット負けを喫した。

1敗したことで予選1位突破なんて言ってられなくなった。次勝ってもフルセットの場合は決勝トーナメント進出ができないケースが出てきた。幸いにもここまで優位だったサンデンが日立笠戸に敗れ、全チームが1敗で並んだことにより残る日立笠戸vs日本精工、東北リコーvsサンデンに勝ったチームがそのまま予選突破となる簡単な図式にはなった。
3戦目のサンデン戦、1セット目を先取し第2セットは14−16と劣勢になり、この試合もフルセットのピンチ。しかし馬強打、サンデンAを佐藤がブロックして19−18、馬強打でマッチポイント。
最後も馬強打がブロックアウトとなりストレート勝ち、1敗しながらもセット率で運良く予選1位となった。

・・・まあ1位は一所懸命さのご褒美というところか。ここまでしっかりやってきたからこそ運も味方してくれるというもの。「ここからが正念場、相手も辛い。下を向いた方が負け。ここを頑張って欲しい」と江口。「1位通過はやってきた成果。前の試合を引きずったところがあったが、明日はそれじゃ通用しない。1回戦から全力で戦おう」と門田、手綱を締めて臨む。

◇  ◇  ◇

翌日早朝、「練習の時と何か感覚が違う」と言いながらも奮闘していた熊谷に微熱が発生、病院へ。昨年のこともあり、どうなるかと思われたが、インフルエンザの検査結果は陰性。ただし念のためホテル待機となった。これで石川がバックに回り、渡辺がレフトに入った。

準々決勝のJR九州戦は12点、8点に抑えてストレート勝ち。ポジションが元に戻ってチームがしっくり行くようになったか、渡辺の動きはまずまず。今のところメンバーが減った影響は見えない。
東北リコーの動きはそれほど良くなったと感じられないが、とりあえずベスト4で来年の実業団出場権を得て、まずは最低ラインの結果を残せた。あの辞退から1年、全てが吹っ切れたわけではないだろうが、そこからようやく一歩前に出た、そんな感じか。
準決勝は優勝こそ逃しているものの、ここ最近は国体を除いて決勝進出している横河電機が相手。この安定度が東北リコーには苦手。ここを乗り越えられるか。

第1セット、互角の展開で8タイ、横河レフト強打を馬ブロックオーバーネット、ラリーのつなぎ負けと佐藤のBがブロックされ8−11。横河ピンサで崩され11−15と差が広がるが、ボールを針生に集めて14−16と迫る。
馬、渡辺の強打がアウトでリズムを崩し14−20とされたがここでも粘りを発揮、針生時間差、永井サービスエース、勝ちを急いだ?横河3連続オーバーネットで19−20。だが横河ライト渾身の強打を上げられず19−21、最後に相手の楽勝ペースを崩したことが次につながるか。

第2セットも前半は白熱の攻防で10タイ、馬強打ワンタッチ、針生サービスエース14−12、佐藤サービスエース16−13。ラリーから佐藤のAがブロックされると、馬強打、横河A、速攻コンビミスアウト、横河サービスエース、19タイ。
ラリーから馬強打セットポイント、ラリーから横河ライト強打デュース。横河ライト強打拾い切れずマッチポイント、石川後方からの2段トスを永井強打したが無情にもアウト20−22、勝負どころの細かいミスが響きストレート負け。

あと1本っていう切羽詰まった状況でのプレーに差が出た。「チャレンジャーとして攻め切るバレーが徹底できなかった」と江口。門田は「チャンスボールで変に硬くなっているというか…チャンスをピンチにしちゃってる」と頭をかく。
国体では効果的なサーブを放っていた佐藤だったがファーストサーブが全試合1本もネットを越えず。 メンバーの入れ替わりが多くぎこちなさはあったが、結局、多くの選手がやれるべきことをやれず、負けるべくして負けた。

今回はいい意味での荒々しさが無くなった…そんな印象を受ける。その原因を推測するならば、国体では決勝に進出したことと力を出し切ったことで、悔しさより充足感が上回ってしまい、その後のハングリーさが欠けてしまった感じだろうか。
今大会が糧に必ずなることを信じ、次こそ攻め切れるか。


・丁寧と消極

全日本総合は大阪で開催された。今までは全日本総合→櫻田記念の順で開催され、12月までで全大会が終了していたが、今回より年末年始を挟んで1月開催となり、大会ロゴなどを設定しリニューアルされた。
9人制最高峰の競技会として位置付け、開催地を従来の持ち回りから2開催地による交互開催に移行、併せて大会のグレードアップを計るそうだ。

初めて年を越した大会でもあり、そのコンディショニングには苦労したと思われる。しかし何と言っても地元大阪、近畿勢が躍進しそう。単純に比較はできないが、大阪固定開催であった都市対抗では12回のうち大阪4回、兵庫も入れると何と10回も優勝している。
開会式では箕面自由学園高校ゴールデンベアーズによるチアリーディングが披露され、10年連続出場を記念し、北から東北リコー、横河電機、JT東京、北陸電力、パナソニック電工津、住友電工、富士通、中部徳洲会病院の8チームがJVAから表彰された。

まずは予選グループ戦、ここでつまづくとトーナメント戦へ悪い流れとつながっていく。まずは体をしっかり動かして自らのリズムに乗っていくことが大事。
廿日市クラブ戦は2セットとも前半からリードし有利に進める。初戦としてはまずまずのストレート勝ち、針生も「ムダは少なかったと思います」と言っていた。

決勝トーナメントの組み合わせは2回戦で富士通、勝ち上がっていくと順当なら住友電工、横河電機、中部徳洲会と、櫻田記念4強に勝たねば栄冠は得られない。「今までにない厳しい組み合わせ」と門田。でもその言葉には、そこまで勝っていくという決意が感じられる。
それにしても地元住友電工はもちろん、若手主体で構成されたBチーム的な住友電工大阪、OBチームのBambino、更に住友電工伊丹に住友電工横浜の事業所チームが予選突破しており、下手すると住電のための大会、「住電劇場」になりかねない。

トーナメント初戦の相手は九州電力福岡。第1セット、相手ミスに乗じ鎌田の強打、永井と佐藤の速攻が決まり大きくリード。渡辺フェイント19−8、このまま行くかと思われた。しかし九電レフト強打をつなぎ切れず、ラリーから永井のCがブロックされると、渡辺強打アウト、九電サービスエース、九電レフト強打をブロック吸い込み19−13、ラリーから鎌田強打アウト、九電2段トスがドリブルとなってようやくセットポイント。ピンサ佐藤から最後は渡辺強打で21−14。
第2セットは猛攻を仕掛け8点に抑えたが、いい流れだっただけに、第1セット終盤の6連続失点が実にもったいない。次戦に向けいい薬になるか。

全日本総合
富士通戦、鎌田の強打。=大阪市中央体育館メインアリーナ
富士通との第1セット前半、富士通中央強打アウトで一歩抜けるが、ラリーから東北リコーのつなぎミスと富士通時間差でタイに戻される。シーソーが続いていたが、渡辺強打アウトで9−11と今度は富士通一歩リード、しかし鎌田軽打、ピンサ佐藤から佐藤Aで11タイ。
富士通ライト強打ブロックアウト、富士通ピンサから鎌田フカシ、富士通中央強打11−14、このリードを最後まで挽回できず16−21で先取される。

第2セットも序盤は互角。7−5で一歩抜けるが、富士通中央強打、富士通ピンサから永井リバウンドがオーバーネット、富士通サービスエースで一気に逆転されてしまう。富士通レフト強打、佐藤B、富士通レフト強打ワンタッチ、針生時間差拾われ富士通中央突破14−17、苦しい展開。
しかし富士通マッチポイントから佐藤A、石川にサーブが回ってきたがファーストはネット、セカンドのピンチから富士通時間差をブロックして20タイ、土壇場で追いついた。ラリーから富士通レフト強打ブロックアウト、熊谷の完璧カットから渡辺強打21タイ。富士通レフト強打はブロックオーバーネット、最後はサービスエースを決められ21−23、ストレート負け。

この試合で初めて馬をFRで起用したが不発。江口が「最近の伸びは目を見張る」と語っていた鎌田はライトで頑張ったが、本人は納得していないだろう。永井は初のスタメン落ちの悔しさを次に活かせるか。
最後追い付いたところは意地を見せたが、完敗に近い。「相手の土俵で戦ってしまった」と門田、富士通はパワープレーで押してきたが、それを受けてしまった。それ以上に富士通は体を投げ出してつないでくる気迫を感じた。本来は東北リコーがチャレンジャーとならなければいけないのに。

予選や1回戦などトップ以外のチームに対して余計なミスや手こずることが少なくなったのは確か。櫻田記念で特に課題として大きかったパスミス・トスミスという点では改善が見られたが、例えば乱れてラストボールを打って返す場合、無理に強く打ってミスったらリズムが悪くなるけど、相手に最低でも2段トスを上げさせるぐらい、そこをギリギリ勝負することも必要。上位チームに対しては手堅さがいつの間にかミスを恐れてまとまり過ぎてしまう怖さを感じる。

サンデンと住電伊丹がシード勢を倒し、見事4強進出。いつもお世話になっているチームの躍進はうれしい限りだが、東北リコーがこうでなくては。そして決勝は住電と住電大阪という住電の独壇場になってしまった。
周りからは“しょうがない”とか“調子が出なかった”とかで済ませてもらっても、当事者はしっかり実力差を認識してのレベルアップが必要だ。「負けてもそれなりの実力が出せれば満足するような雰囲気になっている。もっと勝負にこだわっていかないと」と危機感を抱く江口。
「まあ試練でしょ。でも優勝を狙える位置にいるのだから、ここを超えないと」と総監督の門脇。一歩々々前へ、その歩みは止まらない!

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バレーフェスタも無事終了し、例年より遅い納会も賑やかに行われた。今年度をもって今野、川村が現役引退、遠藤マネが退任し鈴木が新任となる。
3月、しばしの休息を挟んで決意新たに進もうとした矢先、未曾有の事態が襲い掛かる…