かなり 実録 バレー部物語

・納得と慨嘆

櫻田記念は愛知県豊田市で行われた。空路で愛知へ向かったが、皆が震災後に初めて訪れたであろう仙台空港内は、若干レイアウトが変わっているほかは以前と全く変わらない綺麗さで、短期間での復旧は素晴らしい。しかしフライト直後の上空からの眺めは、現状復帰への困難さを改めて感じた。
国体が廃止となり約4ヶ月半ぶりの全国大会となる。東北リコーが国体を挟まなくなるのは1997年以来14年ぶり。つまり選手、スタッフの誰もがこういう流れに未経験となるわけだ。が、ここは修正できる期間を与えられたと前向きに考えることもできる。

パナソニック電工津との予選リーグ第1戦は「やっと練習通りの内容になってきた」と門田が言うように第1セットを6点に抑え、第2セットも圧倒して12−6。その後はシーソーで凌ぎ21−14でストレート勝ち。
東レ愛媛戦第1セットは出だし4−0とリードすると圧倒して21−13で先取。第2セットは東レのコンビが冴え、渡辺強打連続アウトで2−8と離されてしまう。しかし強打で徐々に盛り返し10−12、針生時間差、石川サービスエースで畳み掛け12タイ。
両者決め手に欠け、抜きつ抜かれつは先に東レがセットポイント、馬強打、渡辺強打ブロックされ20−21、渡辺強打、東レFR時間差21−22、ラリーから渡辺強打、石川のサーブで崩し馬強打23−22、東レは温存していたタイムアウトで流れを切ろうとするが、またも石川のサーブで崩し永井ダイレクト、24−22。

予選リーグ3戦目を前に東北リコーが属する第4組は、日本精工と東北リコーが2勝を上げ、早々と予選突破を果たした。日本精工は夏の実業団では4強入りし強さを見せつけられた。果たして対抗できるところまで持ってこれたか。
日本精工戦第1セット、渡辺強打、日本精工強打、渡辺強打タッチネット、馬強打、日本精工レフト強打、日本精工サービスエース2−4。日本精工のミスに乗じ、渡辺強打、針生時間差、永井Bなどで11−9と逆転。白熱の攻防から安重サービスエース19−16、日本精工もサービスエースで粘るが、激しい応戦から渡辺強打ブロックアウト、最後は佐藤がセカンドでサービスエース、21−18。

第2セットは序盤リードしながら2段トスミス、サーブカット乱れなどで6タイとされ、日本精工サービスエースと軟硬織り交ぜられ7−10とされる。その後も日本精工のレフトに強打を立て続けに決められ、12−17。しかし日本精工の強打アウトをきっかけに猛追、馬強打、渡辺強打、高橋ダブり16−19、針生時間差、針生のサーブで崩し日本精工ツーアタックアウト18−19。
この流れを逃さず針生セカンドでサービスエース、針生サービスエース20−19、最後は日本精工FR強打アウトで21−19、見事な逆転劇で予選1位突破を果たした。
「おおぉ〜しっ!」 コブシを突き上げ会心の勝利。終盤でこの点差からの盛り返しは、なかなかお目にかかれない。

全試合が20時に終わった昨年に比べて今年は18時15分ではあったが、やはり濃い内容となり終了は遅くなった。選手たちは全日本実業団で負けた住電伊丹との再戦を望んでいたようだが、伊丹は混戦の末に予選3位で下位トーナメントへ回り、対戦は実現せず。これは次回持ち越しということで。

◇  ◇  ◇

トーナメント初戦の富士通戦第1セット、出だし互角から渡辺強打、富士通ライトプッシュ、針生時間差、高橋元のサーブで崩し馬強打、ラリーから針生強打の戻りを馬ダイレクト7−4。
中盤から石川裏時間差、渡辺のサーブで崩し富士通ネットプレーミス、ラリーから富士通ライト強打、馬強打、馬サービスエース14−9で引き離すと怒涛の攻撃は収まらず、渡辺強打、永井Bフェイント、富士通時間差アウト、ラリーから渡辺強打、馬のレシーブから高橋元のネットプレーを経て渡辺強打がブロックワンタッチ、一気の19−10。
気が抜けたかミスで富士通に粘られたが、最後は富士通ライトが流れたトスをフェイントしたもののマーカー外で21−14。

第2セットは渡辺強打、富士通2段トスミスから佐藤ダイレクト、ラリーから渡辺リバウンドでブロックワンタッチ、針生強打、石川のサーブで崩し馬強打5−0と好ダッシュ。富士通のミス11−3とリードを広げるが、このまま負けられない富士通は中央から軽打、富士通中央から強打をブロック吸い込み、つなぎはオーバータイムス判定、ラリーから馬リバウンドはネット、雲行きが怪しくなってきて11−7。
富士通の勢いが勝り、馬強打がブロックされ12タイ、馬強打アウトで14−15、ついに逆転されてしまった。強打が拾われ始め、決まらない。しかし渡辺強打を富士通ブロックオーバーネット、針生時間差、富士通2段トスアウト、ラリーから針生フェイントで18−15と再度引き離す。
このリードを守り切り、最後は馬強打を富士通ブロックタッチネットで21−18、ストレートで下し準決勝進出を決めた。
…それにしても第2セット8点も離したのに逆転されるなんて…全然一丸になっていなかった、その間は。それでも勝てたっていうのは、今までの地道な練習の賜物か。

櫻田記念
住友電工戦、針生の時間差。=スカイホール豊田
準決勝、住友電工戦第1セット、安重と高橋の間を抜ける住電サービスエース3タイ、馬強打、安重サービスエース、安重のサーブで崩し住電中央強打アウト6−3。永井ツーアタックはネット、安重弾く住電サービスエース、シーソーで7タイ。
針生のサーブで崩し渡辺強打10−9、住電ライト強打ブロックアウト11−12、目まぐるしい攻防が続く。永井Bで13−14、ピンサ梅津はダブりで13−15、追いつけないまま高橋襲う住電サービスエース14−17。
住電ライト強打をフォローしきれず15−18、住電レフト強打17−20、最後はマークされていた針生の時間差が完璧シャットされ17−21。

第2セット、ラリーから馬強打4タイ、本国のトスが流れ馬フェイントもマーカー外6−7。石川ダブり8−9、渡辺強打、永井のサーブで崩し石川裏時間差10−9、このセットも接戦が続く。住電ライト強打10−12、針生時間差拾われたが住電ライト強打をブロックして必死に食い下がると、住電コンビミスから馬強打12タイ。
住電ライト強打アウト、安重のサーブで崩し永井ダイレクト14−12逆転、しかし住電A、永井B拾われ住電時間差14タイ、馬強打アウト、針生時間差ブロックされ14−16、逆転もつかの間、一気に持っていかれる。針生時間差、高橋のサーブで崩し住電つなぎがホールディング17タイ、一進一退。
高橋ダブり、馬リバウンドを住電ブロック17−19。針生時間差は住電ブロックオーバーネット、針生サービスエース19タイ、粘りを見せて追いつく。しかしラリーを決めきれず住電ライト強打でマッチポイントを握られると、住電サーブは安重弾くサービスエース、19−21で一歩及ばず敗退となった。

「ちょっとアツくなって落としにいってしまった。あーもっと奥に打たなきゃ」と、うなだれる針生。大車輪の活躍でもラリーのここ一本がつながれたことを悔やむ。
昨年度敗れた日本精工、富士通にリベンジし、今年の全日本実業団と比べれば確実にレベルは上がっているが、課題も浮き彫りになった。住友電工戦、競ってはいたが、ちょっとしたミスを挽回できずに振り切られてしまう展開であった。
東レ愛媛戦ではいつも言われている出だしの悪さからデュースにもつれ込んだり、富士通戦では8点差を逆転されたり、栄冠を目指すなら細かい部分や当たり前にやるべきことを詰めていく必要がある。
とはいえ歯が立たないような印象だった上位に対し、ようやく対抗できる光明が見えてきたのは確か。今年は特別な思いで戦ってきただけに、残る全日本総合へ向け駆け上っていけるか。

((( Idle Talk )))
今回、櫻田記念の特別協賛であるJTより「JTサンダーズ80周年記念誌」が各チームに数部配布された。
新興チームがどんなに強くなっても覆せないのが歴史。80年というのは重みを感じる。東北リコーも“今砌の今”を胸に、歴史を刻んでいければ…


・好機、逃さずに

全日本総合は大阪で開催された。開会式では故・松平康隆JVA名誉顧問(ミュンヘン五輪男子金メダル監督)の功績を称え黙とうが捧げられた。しかし…まさか…予選グループ戦で櫻田記念4強のうち3チーム(中部徳洲会、横河電機、東北リコー)が同グループになるとは。東北リコーの相手は福岡フェニックスだが、中部徳洲会vs横河電機の一戦は、予選ではなかなか見られないハイレベルの戦いになるだろう。
その対戦はサブアリーナということもありギャラリーはほぼ満席状態、やはり試合は競って中部徳洲会が何とか勝ちを収めたが、横河が敗者復活に回るのはいつ以来なのだろうか。
東北リコーは2セットとも16点に抑えて勝利となったが、見下し感がありあり。戦い抜くには温存ということも大事だが、だからと言って適当で(ミスして)いいということではない。「その辺を解っていない」と江口。

予選終了後のトーナメント抽選会。東北リコーは3番目に抽選。え?横河電機!!?・・・・・・その時、会場はどよめき、くじを引いたマネージャーの鈴木、硬直。引きたくて引いたわけじゃないけど、空いているところはいっぱいあったのに何故そこを引く、って感じ。勝ち抜いてもサンデンか住電伊丹が待ち受けることになりそうな厳しいゾーンとなった。
まあ決まったものはしょうがない、自分たちで打開していけばいいこと。「出だしから一気に行く。最終日まで残って勝負をかけられるよう、力を合わせて頑張っていきましょう」

互いに手の内を知り尽くしている横河電機戦第1セット、永井サービスエース5−4、渡辺のサーブで崩し馬ダイレクト、つなぎから馬フェイント、渡辺サービスエース9−6。長いラリーは渡辺強打15−11とリードを保ち、石川サービスエース17−13で突き放す。
シーソーから永井のサーブで崩し横河2段トスドリブル20−16、ラリーから横河ライト強打、高橋時間差ブロックされ2点差と寄られたが、最後は馬強打21−18、中盤でのリードを守って先取。
第2セットは馬ダブり、ラリーから横河レフトリバウンドをブロックオーバーネット2−4、石川のサーブで崩し横河2段トスドリブル7タイ。横河時間差、横河サービスエースは石川安重間にノータッチ、ラリーから横河レフト軽打9−12とリードを許す。
だが馬強打ブロックアウト、渡辺サービスエースなどで13タイ、一気に追いつき激戦のまま終盤へ。ピンサ佐藤も横河レフト強打、渡辺強打、横河レフト強打はブロックがタッチネット、馬強打拾われ横河レフト強打18−20。ラリーから鎌田強打ブロックアウト、最後は渡辺と鎌田が重なり打って返せず19−21、終盤のミス多発で勝機を逃しセットタイ。

ハーフセンを鎌田から針生にチェンジして挑む第3セット、永井B、永井サービスエース、横河レフト強打、針生時間差、横河C、ラリーから針生時間差6−4、横河ライト強打をブロック、渡辺強打9−6。ラリーから横河Cをブロック、馬のサーブで崩し渡辺強打11−6でコートチェンジ。
コートチェンジ後、即タイムアウトで流れを変えようとする横河だが、針生時間差、永井のB、馬強打で勢いを失わない。石川のサーブで崩し横河2段トスドリブル17−10。
横河レフト軽打、カット乱れ本国バックトスもドリブル、馬強打ブロックされ18−14とされるが、渡辺の強打が連続で決まりマッチポイント、最後は馬強打が決まって21−15。

1、2セットの両サイド中心から3セット目は中央からの攻撃力がアップし、相手が対応する前に引き離した。スタメンだった鎌田がどうというわけではなく、針生へのスイッチは流れを変える意味でも江口が迷いなく打てる手を打ったということだろう。
なぜ針生が控えなのか?という疑問はあるかと思うが、怪我や今回のための戦術ではなく、当人の課題。実力的には申し分ない訳だから、控えに回った意味を理解し頑張るしかない。
「あとのことは気にせず、もう全力だった」と渡辺、ネットプレーがつながるようになったし、ラリーも制することができた。相手チームのことを言える立場にないが、横河電機は予選で中部徳洲会と当たるし、トーナメントは1回戦敗退だし、“運が悪い”だけでは片付けられない何かがあるのか…運も実力のうちとするならば、そういうチーム状況だったのかもしれない。

三菱電機との2回戦を快勝し、3回戦は住友電工伊丹戦。昨年度の全日本総合で3位、今年度実業団の対戦では敗れた相手。果たしてリベンジなるか。
この試合もフルセットの大激戦、第1セットは伊丹の3連続ミスで11−8と抜けると、更に伊丹のミスに乗じて石川ツーアタックに見せかけ永井のAが決まり14−9と離す。渡辺強打、鎌田サービスエースで加点し19−12、石川襲う伊丹サービスエース20−15。しかしここはしっかり立て直し高橋が時間差決めて21−15。
第2セットは伊丹のコンビとブロックが冴え3−6、馬強打で10−11と迫るが、伊丹得意のサーブが炸裂し、7点連取され一気に差を広げられる。勢いに乗った伊丹の流れを止められず、伊丹レフト強打、高橋弾く伊丹サービスエース11−20。最後は渡辺ブロックフォローがホールディング、11−21。

鎌田と針生をチェンジして勝負の第3セット、伊丹ツーアタックがネット、針生強打はアウト軌道も伊丹思わず手を出し2−0。高橋セカンドで崩し渡辺ダイレクト、渡辺リバウンドを伊丹ブロック吸い込み4−0で相手の出鼻をくじく。
ピンサ佐藤がセカンドでサービスエース、ラリーから永井ダイレクト、佐藤のサーブで崩し渡辺フェイント、佐藤のサーブで崩し伊丹2段トスドリブル11−2。しかし17−8の大量リードから伊丹のサービスエースなどで追い上げられ18−14、一気に差が詰まる。馬強打、永井Aで20−16、最後はラリーから渡辺が押し込み21−17、振り切って8強進出を決めた。
第3セットの立役者は佐藤、期待以上の役割を果たしてくれた。後半追い上げられ、この貯金が物を言うことになる。が、やはり伊丹のサーブは強力、ミスってくれるのを待つしかないような状態だった。結果的に第3セットは苦手サーバーのサーブ順が後ろになってくれたのが幸運。そこまで競っていたらどうなっていたか…


・気負いの中で

全日本総合
中部徳洲会戦、馬の強打。=大阪市中央体育館
準々決勝は若手主体ながらシードの住電大阪を破った宮崎光陽クラブ、を破った別府クラブが相手。第1セットは11−9から安重のサーブで崩しまくって21−12で先取。第2セットも序盤に永井のサーブで6−1とリードすると別府クラブのミスも重なり21−13と快勝。前日に対戦していたらここまで差は広がらないだろう。やはり最終日は求められるタフさが違う。そしていよいよ第2シードの中部徳洲会との決戦に挑む。
第1セット、1−3から相手サーブ権でプレー中に隣からボールが入りノーカウント。仕切り直したがまたもボールが入ってきて中断、ノーカウント。徳洲会時間差、ラリーから徳洲会Aで1−5、石川襲う徳洲会サービスエース、高橋見逃し徳洲会サービスエース1−7。徳洲会ライト強打アウト、徳洲会中央から強打ネット、徳洲会時間差をブロック7−10、ピンサ佐藤サービスエース11−13と迫る。
追い上げもつかの間、徳洲会レフト強打、鎌田ネットプレードリブル、鎌田カットミスから徳洲会時間差11−16、馬リバウンドを拾われ徳洲会A、徳洲会ライト強打、渡辺フェイント、馬強打、安重ダブり13−19。最後は徳洲会時間差15−21。

第2セット、いきなり0−4の劣勢、その後も徳洲会の強打を止められず2−8。永井B、徳洲会のミスと渡辺連続サービスエースなどで9タイとしたが、徳洲会時間差、針生時間差ブロックされすぐ引き離される。それでも渡辺と馬の強打で13タイ、再び追いつく。
徳洲会レフト強打を連続ブロックしてついに逆転、しかし徳洲会のコンビと永井ダイレクトがアウトで15−16と競り合いが続く。石川の前に落とされ徳洲会サービスエース、渡辺リバウンドを徳洲会オーバーネット、徳洲会ライト強打をブロック17タイ。徳洲会A、馬強打、石川ダブり、渡辺強打、徳洲会Aで19−20、ここは馬の強打でデュースに持ち込む。
しかし永井ダブり、最後は馬強打ブロックされ20−22、ストレート負けを喫した。

展開としては「やはりあのノーカウントが痛かった」と門田。ノーカウントになるたびに相手のファーストサーブが威力を増し、こちらのカットが乱れていった。3コート以上ある体育館で1コート空けずに隣同士で対戦した影響が出たが、これも実力なのか…
東北リコーとして今回のハイライトは横河電機戦。最近の公式戦で勝っていない相手だったが、ZAOカップで勝てたちょっとした好印象と、絶対に1回戦では負けられないという気迫と集中力でミスをカバーした。8強進出を懸けた住友電工伊丹戦も厳しい戦いだったが、一丸で突破した。
残念ながら中部徳洲会病院戦は意気込み過ぎて空回りしたのか、終始相手に主導権を握られ持ち味を発揮できなかったが、今大会で多くのことを学べたはず。強豪との対戦で何をすべきか、少しずつ課題はクリアしてきているので、今後も確実に前進していけば、栄冠も手に届くまで近づくことだろう。
「あの場面であの1点の悔しさを次に活かしてほしい。厳しい練習になると思うが、また来シーズン、新たな気持ちで行こう」と江口。前を見つめて突き進め!