かなり 実録 バレー部物語

・復活の強化ゲーム

今年度、主なルール改正が二つある。まずはメンバーチェンジが3回から4回に増えたこと。昨年の大会でトラブルがあり、3回目でチェンジした選手がベンチに戻れないのはおかしいとのクレームが審判にあったそうだ。「おたくらトップクラスのチームだとそんなことはないんだけど、中位以下のチームだとね…」
もう一つはネットプレーへのインターフェア。今までは事前にネット直前に手を添えておけば、相手プレーヤーのネットプレーでボールが手に当たって処理できなくても不問だった。今回から妨害したことが明らかであれば、反則として扱われる。納得のいかない失点は減り、9人制の醍醐味を十分に発揮できそうだ。

宮城県強化練習会が村田町で開催された。ZAOカップが秋に移動したが、東北地区に大きな大会がなく、春先にジャッジメントの統一性を得ることが難しいなど、特に審判の方々から強化ゲーム開催の強い要望があったためだ。
9人制から国体が廃止された影響もあって、山形や北上など東北地区の選抜チームは参加断念という状況。果たしてチームが集まるのか?という不安はあったが、いつもは実業団リーグ開催日とバッティングするリコー沼津が、日程がずれて参加OKとなり、リコーと合わせてグループ3チームが顔を合わせ、結局7チームが集結して開催に至った。
リコー沼津やささにしきクラブには東北リコーOBの選手が活躍している。元気に他チームでプレーし、強くなっていくのは誇らしいこと。

業務や所用により参加できなかった選手がいたとか、不慣れなポジションの選手がいたとか不利な条件があったとはいえ、16セット中4セットを失った。特に全目黒(東京)戦では1セットも取れず完敗。東北リコーが目指すは7月下旬、他のチームは万全近くに仕上げて5月、6月の予選会に挑むわけで、リコー沼津は既にリーグ戦真っ最中なのだから、仕上がりもモチベーションも違うのは当たり前。そんな状況でも跳ね返さないといけない。
この試合の第1セット、江口はピンチサーバーとして前半に吉田と佐藤をチェンジ、後半に鎌田と佐藤をチェンジし、4回交代枠をテストしていた。

強化ゲームでの反省点を活かせたか、6月に行われたサンデン主催の赤城カップ(第5回)では第1回大会以来の優勝を果たした。この大会は右肩下がりの成績だったが、5勝1敗で日本無線と並びセット率で上回った。しかし「日本一という基準に対しては、まだまだ課題が残る」と江口は振り返っていた。
一歩間違えば6位もあり得る展開であり、全国大会では準々決勝で対戦するであろう日本精工に敗れていることから、決して楽観はできない。しかし接戦を切り抜けたことは自信にしていいだろう。


・ほつれる結束

第4シードで臨む全日本実業団は北海道釧路市で開催された。涼しい…日陰では寒さを感じるくらいの釧路。全国ニュースでは猛烈な暑さを報道しているが、ここは別世界。なのに体育館は冷房が効いている。
昨年度終盤の大会で3位、3位と来た。そうなれば今年の目標はおのずと優勝、少なくとも決勝進出という青写真になるはず。ただ過去の記録から年度初めの全国大会は優勝できてないので、厳しい展開になることは予想できる。
予選グループ戦はパナソニックエコソリューションズ新潟と対戦した。第1セット序盤は新潟レフト強打、針生時間差アウト、馬強打ブロックされ1−4とされる。新潟ダブりで一呼吸つくが、こちらもミスが続き2−7と離される。しかしここから永井Bを皮切りに3点連取で5−7、更に永井のサーブが有効に決まり4点連取で一気に9−8と逆転。佐藤のサーブで13−10とすると、相手が1点奪うとこちらが2点をもぎ取り21−14で先取。
第2セットは高橋のサービスエースを絡めて6−0とすると、猛攻でひと桁に抑えた。サーブ力が上がっていることは感じられる。ピンサを出すこともなく、いつも交替するセッター本国のサーブもキレが増している。あとはトップレベルのチームに対してどれくらい効力があるか…

全日本実業団
モリタ製作所戦、本国のトスアップ。=湿原の風アリーナ釧路
決勝トーナメントは2回戦から。ここ2年はベスト8にも入れない状況なので、トーナメント前半戦をどう戦っていくか。対モリタ製作所第1セット、いきなり高橋のサービスエース、6−5から永井B、ラリーからモリタレフト強打ネット、永井サービスエース、モリタレフト強打アウト10−5とすると着実に加点。16−11から5点連取で先取。
第2セットも序盤で6−1と有利に展開。石川サービスエース8−3、11−8から新潟戦同様、1点取られても2点取る展開に持ち込み、最後は馬の強打が決まり21−13、ストレート勝ちした。

3回戦は日立金属NEOMAXマテリアル戦。4−3からアウトやオーバーネットなどで4−7とされる。負けじと4点連取で逆転すると、シーソーを展開。14タイから針生時間差、ここで安重連続サービスエース17−14と抜けると、日立の追撃を振り切り、最後は本国に替わってピンサ佐藤がサービスエース、21−17で先取。
第2セットは0−2とされても慌てず針生時間差、日立強打アウト、石川のサーブで崩し針生ダイレクト、石川サービスエース4−2。永井B、日立2段トスドリブル、永井のサーブで崩し渡辺ダイレクト、日立強打アウト、永井サービスエース、永井のサーブで崩し馬強打10−3で大勢を決める。その後も圧倒し、最後は高橋の時間差決まって21−11、ベスト8進出を果たした。

準々決勝は第5シード・日本精工と予想通りの対戦。精工Bトスアウト、精工中央から押し込み、精工時間差、精工安重弾くサービスエース、永井A、精工中央からフェイントアウト、本国サービスエース逆転も雑な展開で4−6とされる。精工時間差、精工レフトリバウンドをブロックオーバーネット、針生時間差アウトで6−10とされると、その差をなかなか埋められない。
終盤、渡辺強打、石川サービスエースで17−19、セットポイントを握られてから渡辺強打ブロックアウト、永井サービスエースで1点差まで詰め寄り、永井のサーブで崩したが、チャンスから馬強打が惜しくもアウト、19−21で先取される。
第2セット、2−5から針生時間差、精工Bをブロック、馬サーブで崩し渡辺強打、精工タッチネット6−5で鮮やかに逆転もつかの間、精工の軟硬織り交ぜられた攻撃に翻弄され、6−11とされてしまう。馬強打1点取るも、今までとは逆に2点取られる展開に持ち込まれ9−15。
ピンサ佐藤がセカンドでサービスエース、11−16と反撃、渡辺強打、 永井セカンドでサービスエース、高橋レフトから強打で3点差まで迫ったが、ここからシーソーで巧みに逃げられ17−21、ストレート負けを喫した。

準々決勝はそれまでの戦いとは一変してしまった。シード勢同士の戦いながら、まるで下位チームとして戦っているかのようで、声は出ていてもカラ元気というか、一体感なく気迫が感じられなかった。 まずサーブカットがセカンドでもセッターに返らないようじゃどうしようもない。かといってトスでアタッカーが打ちやすいほどカバーできるわけでもなく、アタッカーは何とかチャンスをもらうような工夫も特に見られず、ラリーで相手チャンスになって失点…という感じ。
それでも1セット目は19点まで取るわけだからポテンシャルは持ってるはず。勝てる試合を落としたとも言えるし、勝てるような試合ではなかったとも言える、残念な展開だった。
「日々の甘えというか、流してやっているところが本番でモロに出てしまった」と江口。部長の大友は「バレーは一人でやってるんじゃない。それを誰かが失敗すると人のせいにするような顔をしている。全員で戦っていることを忘れてはいけない」と案じていた。

走り回って気持ちを奮い立たせ、とにかくつないで泥臭く1点を奪い取る…良くも悪くも一戦必勝、連戦は不利ながら、格上相手を凌駕する集中力と突破力。これが東北リコーの持ち味。これに現在の強みを上積みするなら分かるが、それらを捨てて他のチームと同じようなスタイルになっては勝てないだろう。先人が築き上げたものはそんな軽いものじゃないはず。
時代によって考え方は変化していくだろうが、根底にあるものは失ってほしくない。


・新しき時代に向けて

7月31日、リコーグループの設計・生産機能を見直し、再編することが公表された。これに東北リコーも含まれる。2013年4月1日より、東北リコーとしては生産機能と設計機能を持つ新会社にそれぞれ移管されることになった。
再編が発表された時はバレー部がどうなるか皆表情が硬くなったが、生産機能を持つ新会社で継続されることが決定した。しかし東北リコーとしての活動は今シーズンが最後ということになる。結果を残したい…その思い通じるか。

11月、沖縄で第1回の徳洲会カップが開催された。東日本大震災時には徳洲会グループの方々の支援もあり、少しでも恩返しができたのではないか。現在2強の中部徳洲会、住友電工と対戦でき、敗れたものの足りないものが明確になったと江口。予選では負けたJFE西日本に順位決定戦では勝ち、結果3位。
リズムがいい時はうまくいく。ただそれは他のチームも同じこと。点数を離されてから、つまり流れが悪い状態からの粘り強さに欠けており、残り時間でどう克服していくか。それができてこそ全員一丸と言える。