かなり 実録 バレー部物語

・勝つべき試合とは

16年前、「あの時は雪が降って大変でしたねえ」と総監督の門脇が振り返った京都府舞鶴市で行われる櫻田記念。安重が専任コーチとなったことで、サーブカットフォーメーションは中央に熊谷と梅津を置き、FRに針生、HCに高橋が入る。
C速攻がなくなるが、針生がセッター前後で時間差(時には高橋)に入ることになる。これら配置転換がどう出るか。

モリタ製作所との予選リーグ第1戦は第1セット、11連続得点があり圧倒。しかし第2セットは相手が3連続、5連続、4連続と立て続けに得点し3−12のトリプルスコア状態。渡辺の3連続強打で追い上げるが、要所で流れを引き込めない。渡辺にボールを集めるが、終盤はシーソーに持ち込まれ連続得点は奪えず、セットタイとなる。
第3セット序盤はリードされるが、相手ミスと高橋の強打で7タイとし、1点を争う攻防が展開される。モリタのサービスエースで15−17とされるも、針生の時間差と梅津のサービスエースで追いつき、このままデュースへ。
針生強打、モリタFR強打、ラリーから渡辺ブロックされ21−22。馬強打アウトで万事休すと思われたが、モリタのタッチネットが早かったとのジャッジで救われた。モリタA、渡辺押し込み23タイ、ラリーから渡辺強打をモリタがブロックオーバーネット、最後は馬強打決まって25−23、なんとか凌いでフルセット勝ち。

…とても勝ったとは言い難い内容。ブロックとコンビの正確性は増したかもしれないが、Cクイックと石川の裏時間差がなくなり6人での攻撃が4枚になってしまい、相手が的を絞りやすくなった感がある。この先、大丈夫か。

第2戦は昨年も対戦した東レ愛媛。いきなり高橋のサービスエースから始まり、佐藤のA、本国サービスエース、連続ブロックで6−1。東レも負けじと4得点して追い上げるが、ブロックと強サーブで再度引き離す。
それでも東レは強打が冴えて差を詰めると、東レのレフトプッシュと中央から強打で19タイとされる。しかし佐藤B、東レレフト強打、渡辺強打、東レリバウンドを馬がブロック22−20、粘る東レを振り切った。
第2セットは8−9から4点、12−11から4点、16−12から5点を奪い、ストレート勝ちした。

櫻田記念
日本精工戦、高橋(元)の時間差。=舞鶴東体育館
これで予選突破が確定。昨年同様、第3戦は予選1位を懸けて日本精工と対戦。第1セットは日本精工の流れ、リードを許して中盤に入る。ここから相手が1点を奪うと東北リコーは2点盛り返す展開を4度繰り返し13タイ、日本精工のサーブに崩され17−19とされても、渡辺強打、精工Aアウト、精工FR強打を高橋がブロック、一気のセットポイント。
ここはデュースに持ち込まれるが、佐藤のB、ネット近くのボールを高橋が懸命に返球もネット超えず21タイ、渡辺強打、渡辺に替えてピンサ永井。ここで永井がエンドラインギリギリにサービスエースを決めてガッツポーズ、23−21。

第2セット0−4で足をつった渡辺に替わり鎌田がレフトに着く。日本精工が0−6とすれば東北リコーも2度の4点連取で11−10と荒れた展開。日本精工が逆転すれば、東北リコーが抜き返す一進一退の攻防。
佐藤B、ラリーから針生プッシュ、精工ライト強打、馬リバウンドでオーバーネット誘い18−16、鎌田ダブリ、鎌田強打、精工FR強打吸い込み、馬強打20−18。最後はラリーから針生がコート奥へ強打を決めて21−18、ストレート勝ちを収めた。
ゲームの進め方は決して良いとは言えないが、2セットとも苦手な逆転劇を見せてくれた。観戦された山田社長、上野後援会会長、門脇総監督にはハラハラさせてしまったが、激励をいただき明日に備える。

今大会、女子は「どんどんネット」という地域動画配信局がユーストリームにて中継している。いずれは男子も配信していただけるかもしれない。
決勝トーナメント初戦の相手はJT東京。予選2位ながら住友電工にフルセットの善戦を見せた。ミーティングでは全員で戦うことを再確認したが果たして…
第1セットは連続サービスエースを決められ1−4と劣勢。JTは軟硬織り交ぜ、東北リコーは両サイドの強打で対抗するが、徐々に差は広まっていく。熊谷弾くJTサービスエース、馬強打ブロックされ、梅津弾くJTサービスエース7−15。東北リコーもサービスエースとブロックで応戦するが如何ともしがたく14−21で落とす。

第2セットも2−6と苦しい展開、攻撃がことごとくつながれ6−13とされるが、終盤に渡辺と高橋の強打、針生時間差、馬強打、熊谷エンドライン際へサービスエース、JTリバウンドミスで18−19と猛追する。
しかし熊谷痛恨のダブリ、ラリーからJT時間差18−21、要所でのミスが響きストレート負けとなった。
ありえないミスが多いというか、ミスがミスを呼ぶというか、これほどカットが上がらないとお手上げ、「もう顔が青ざめていて、逃げ腰になっている」と江口。「どうしようもないボールじゃないし…できるはずなんだけどなぁ」とは安重。まず!とにかく! 浮沈の鍵はサーブカットにかかっていると言える。
「勝たなければならない試合で勝てないのはウチの弱さ。課題を明確にしてまた頑張って行く」と江口は次期大会へ向けて切り替えることを意識していた。

((( Idle Talk )))
「アレ、本当はダメだったかもしれない」と江口。アレというのは日本精工戦ピンサのメンバーチェンジ。1回めで渡辺と佐藤を交代、2回目で元に戻す。そして3回目でまた渡辺が永井と交代したのだが、これはNGじゃないか…と。
記録員がそう簡単に見逃すとは思えないが…あとで確認したところOKだった。同一選手が復帰し、3回目の交替でもう一度退くことは可能だが、4回目ではコートには戻れない。つまり渡辺は永井と交代してベンチに退くまでは可能、4回目のメンバーチェンジで永井との交替ではコートに戻れないということ。
永井がサービスエースを取ったから交代しなくて済んだものの、デュースになったら交替でダメだと指摘されて初めて気付き、流れが止まってしまう。恐らく永井と鎌田が交代して鎌田がレフトに入ったと思われるが、警告になるのかそこでの交替は認められないのか…とにかくスタッフの焦りがチームの動揺を誘うだろう。
「結果オーライでしたが、やっぱりやってはいけない」と江口は肩を落としていた。それだけスタッフ陣もいっぱいいっぱいだったことが伺える。


・成果を実証せよ

全日本総合は京都市での開催。観光地ということもあり、宿泊施設の確保に苦労したチームが多いと聞く。宿泊料金が高く隣府県から移動してくるチームもあったようだ。
リコーグループ再編の一環で東北リコーは新たな子会社2社に統合され、社名も変わるため東北リコーとして挑む最後の大会。ノーシードなのでどういう展開になるか予想できないが、ここまで懸命に立て直しを図ったはず。持てる力を出し尽くし、結果を残せるか。

予選グループ戦の相手は「富永」というチーム。セッターやライトは元新潟選抜のメンバーで、国体で激戦した印象があるし、前衛の身長も高い。無名だと侮ってはいけない。
その第1セット、先制を許すが時間差とフェイントですかさず5タイ、8タイから8連続得点で勝負を決めたかに見えたが、ミスが続いて気が付けば20−19の1点差。ここは馬の強打が決まったが、冷や汗先取となった。
第2セットも11−2としながら連続失点を許し、17−15と迫られる。馬強打、本国に替わり佐藤サービスエース、富永時間差をブロックして20−15、最終的にはストレート勝ち。…が、第1セットは最大8点差、第2セットは最大9点差から詰められてしまった。何故か一息ついちゃう、つき過ぎてしまう。

全日本総合
群雄会戦、ネット際の攻防。=ハンナリーズアリーナ
決勝トーナメントは2回戦から登場、強豪日立笠戸を破った造幣局が相手。中盤まで互角ながら強打が決まって第1セットを奪うと、第2セットは前半11−6と圧倒。針生のコンタクトが外れ、全員で探すというアクシデントがあったが、そのまま逃げ切ってストレート勝ち。
ただ、造幣局の伝統というか、最後まで諦めない全員一体感は見習うものがある。

3回戦はサンデンと対戦。第1セット7−8から4失点を許すが、連続ブロックとサンデンのコンピミス、そしてまたブロックが炸裂して11−12。針生時間差、ピンサ佐藤のサーブで崩して渡辺強打をサンデンブロック吸い込み、高橋が中央から強打ワンタッチ、ラリーからサンデン返球はネット18−14、このリードで先取。
第2セット、サンデンレフトをブロックし、佐藤のサービスエースなどで6−3。このリードを保って終盤まで展開、馬強打、サンデンレフト強打、馬強打、高橋軽打、サンデンレフト強打、針生時間差20−16。最後はライトから石川の強打が決まった。
第1セットは劣勢ながら我慢し、中盤から終盤にかけて集中力を発揮し逆転。第2セットは安定したプレーで要所を締めストレート勝ち、ベスト8進出を決めた。いい形になってきたと言える。

翌日の準々決勝、シード勢は厳しい展開がありながらも、さすがしっかり勝ち残ってきた。対戦する第3シード・群雄会は静岡国体で江口が選手時代に対戦したメンバーがまだ現役バリバリであり、試合巧者ぶりは健在だ。千葉国体1回戦以来の対戦、群雄会リベンジか東北リコー返り討ちか。
第1セット、1−4から4−8と攻撃を拾われ群雄会ペースで進む。ここでラリーから馬強打、高橋のサーブで崩し渡辺強打、つないで石川と馬がぶつかりながらもプッシュ、群雄会中央から強打ネットで一気に追いつく。
更に5得点、5得点と攻撃が思うように決まり18−10、最後は高橋のサーブで崩し針生ダイレクトプッシュ21−11、圧倒して先取。
第2セット前半は互角の展開、8−9から馬強打、ここで脚の状態が芳しくない渡辺に替わり鎌田がレフトに入り、群雄会ネットプレーフォローミス、ラリーから群雄会FR強打をブロック、群雄会Aアウト、群雄会FR強打ネット、13−9と逆転。このリードを守り切り、最後は梅津のサービスエース21−16。

この勢いに乗って行きたい準決勝の住友電工戦、相手サーブにてこずり、スパイクアウトも重なって2−8の防戦に立たされる。住電は連続得点を重ね、渡辺に替えピンサ鎌田で打開を狙うも切り返され、鎌田はそのままレフトに。終盤はシーソーに持ち込むのが精一杯、12−21で先取される。
第2セットも2−5、なかなか出だしで乗っていけない。ピンサ佐藤のサービスエースなどでようやく調子を取り戻し9−8と逆転。梅津の連続サービスエースで13−11とするが、そこは住電、ブロックと強打で簡単にひっくり返される。
だが東北リコーもここから粘り終盤へ。馬の強打が二度拾われたが鎌田のリバウンドでオーバーネットを誘い17−18、住電時間差、住電レフト強打をブロックタッチネット、鎌田強打、住電時間差を凌いだが針生の2段トスがドリブル判定で18−21、無念のストレート負けとなった。

大会を通して言えることだが、なんでそんなミスを…いう凡ミスが減った。「そこは徹底した」と江口、櫻田記念での悔しい負けを忘れずに、チーム一丸となり課題に対して本気で取り組んできた成果が出た。
鎌田は住電ブロック網をかいくぐり、スーパーサブ的な活躍を見せてくれたが、これが1試合、1大会、1年、と安定度を増していけばというところ。 馬も有効打が多くなったが江口からすると「これが普通。今までが悪すぎた」と、要求はまだまだ高い。
残念ながら東北リコーとして優勝を飾ることはできなかったが、応援側からすれば3位表彰は誇りであり立派であり、14年連続して全国3位以上の成績も残すことができた。しかしチームとしてはその上を狙っているので、手応えを得つつ更に成長していかなければならない。

今回、9人制男子バレー史上初のネットでのライブ動画が配信された。さすがに迫力は伝わりづらいものの、生で状況が把握できるのは素晴らしい。
決勝戦では江口が動画配信の解説者として協力していた。解説を聞きながら観戦していた部員もいる。「いや、恥ずかしいですね。でもこれもひとつの経験です」