かなり 実録 バレー部物語

・誇れる名にすべく

4月1日、リコーグループ再編として、東北リコーは生産機能を受け持つリコーインダストリーと設計部門を受け持つリコーテクノロジーズに分割された。バレー部はリコーインダストリーが引き継ぐことになった。
しかしリコーインダストリーとしては全国に事業所が存在することになり、他事業所でもバレー部が活動している。よってチーム名は東北事業所にちなみ「リコーインダストリー東北」、通称RI(アールアイ)東北とした。新会社で日本一に、まずはそこが目標になるだろう。
部長、監督、マネージャーが交替し、まさしく新たなる一歩が始まる。ただ、マネージャーは澤が12年ぶりに務めることとなったが、恐らく復帰はバレー部初。辞めたら終わりではなく、機会があれば戻ってくることもできるという道を切り開いてくれた。

春の宮城県社会人強化練習会においては、業務の都合で佐藤、我妻、鎌田の3選手が参加できない中、15得セット1失セットとまずまずの内容。新監督の安重が、今後どう舵を取っていくか…
6月の赤城カップでは予選リーグ2勝1敗、決勝トーナメントは3位決定戦で横河電機に敗れ4位に終わる。詰めの甘さ、試合運びの雑さが見受けられるが、今は負けて得ることの方が大事か。

◇  ◇  ◇

全日本実業団は和歌山市で開催された。東北総体も休止中なRI東北にとって、県大会まで含めても、この全実だけが真夏の公式戦となる。前日の会場での練習は空調なしであった。「そりゃもう暑かった」と安重。代表者会議でもその辺の話になって、「どの会場も公平にではなく、空調が入るところは入れるべきだ」となり、メイン会場だけは空調が入ることになった。
近年は猛暑が多く熱中症も騒がれるようになってきており、「予選は第1試合でもあるし、かなり負担は減る」と、ちょっとホッとした表情。体育館は2015年和歌山国体の幟やマットが敷かれ、PRされている。9人制復活はいつの日か…

予選グループ戦はバブコップ日立呉と対戦。第1セット2タイから永井C、馬強打、呉2段トス連続でミス、渡辺リバウンドを呉吸い込み、呉セッタードリブル、渡辺強打ブロックアウトで9−2とする。なおも永井のサービスエースを絡めて3得点、針生のサービスエースを絡めて4得点と走る。結局、一桁に抑えて先取。
第2セット、馬の連続サービスエースなどで4−0としたものの、ミスが増えて8−7と迫られる。馬強打、呉FR強打アウト、渡辺強打11−7。中盤から終盤にかけて呉がダブリを連発、これに乗じてシーソーで逃げ切り21−16、ストレート勝ちを収めた。

第1セットは相手のエンジンがかかる前に大きく引き離したが、第2セットでちょっと凡ミスが多くなったのはいただけない。石川は前日練習中にぎっくり腰のような状態になったため、この試合は大事を取って温存。
佐藤はパフォーマンス不足で吉田がセンタースタメンとなったが、速攻がセット1点ずつではいささか寂しい。
予選終了後のトーナメント組み合わせ抽選は、最終日までシードとの対戦は回避できたが、1回戦からとなる。で、勝てば2回戦で横河電機と激突。相手もまたかと思っていることだろう。実際、安重は「何でまた近くにくるんだよ」と、にこやかに言われてしまった。

全日本実業団
関西電力高浜戦、吉田のAクイック。=和歌山市立河南総合体育館

決勝トーナメント1回戦は関西電力高浜と対戦。第1セット、2点取れば2点取られる展開で9−8。渡辺強打、石川に替わってピンサ佐藤サービスエース14−11、馬強打、ラリーから高浜2段トスドリブル16−12と離し、高浜にミスが多くなり21−16で先取。
第2セット、吉田ダイレクト、高浜オーバーハンドドリブル、梅津のサーブで崩し吉田ダイレクト3−0とすると、前半で7−2と優位に。シーソーから永井のサーブで崩して5点連取、終盤も4点連取で21−8と一気に決めた。昨日の反省を生かしたか、序盤に吉田が決めてダッシュに成功したのが大きかった。さあ次は横河電機戦、ここも負けられない。

2回戦の横河電機戦、0−3から渡辺強打、横河中央強打はタッチネット、永井セカンドサーブで崩し馬ダイレクト、針生時間差で逆転。更に馬強打、横河レフト強打ネット、横河レフト強打アウト、ラリーから馬強打、永井C、針生サービスエースで10−4と波に乗る。このまま相手の反撃を許さず21−13で先取。
第2セット前半は両者サービスエースを奪い合い10−7としたが、横河レフト強打、横河時間差、横河Aをブロック、ラリーから横河FR時間差、横河ライト強打、針生カットミスを横河ダイレクトで11−12と逆転される。
しかしここから横河ライト強打をブロック、本国に替えてピンサ佐藤サービスエース、佐藤のサーブで崩し渡辺ダイレクト、横河ライト強打ブロック、佐藤サービスエース、ラリーから渡辺強打、佐藤サービスエースで18−12、怒涛の7点連取で勝負を決めた。
気合が入っていた。公式練習のアタック音から違っていたかもしれない。3回戦は20分後にボールを使った合同練習開始、その10分後にプロトコールとなる。 圧巻の試合だっただけに、やり切った感が出てしまうのが怖い。

三菱電機戦第1セット、カットミスやダブリでリズムを失い、3−6とされる。三菱にサービスエースが出て7−11、これ以上離されると厳しいところだったが、三菱のお見合いから流れがRI東北に傾き、石川コート奥からの2段トスを針生強打、本国に替えてピンサ佐藤は三菱レフト強打アウト、長いラリーは吉田ダイレクト13タイ、追いついた。
それでも三菱はまたもサービスエースで14−17。タイムアウトで安重の檄が功を奏したか、渡辺強打ワンタッチ、馬のネットプレーから石川強打を三菱オーバーネット、三菱レフトのネットプレーからオーバーハンドがドリブル17タイ、永井連続サービスエースで2点差、苦しみながらもチャンスを生かして先取した。
第2セットも2−6とされてから針生の時間差などで追い上げ、馬リバウンドを三菱オーバーネット、三菱中央攻撃を永井ブロック、石川のサーブで崩し三菱2段トスドリブル、鎌田強打、石川サービスエースで11−8。
それでもシーソーから三菱ツーフェイント、本国Cトスホールディング、梅津弾く三菱サービスエースで16タイにされた。19タイから鎌田と馬の強打は拾われたが三菱ライト強打がネットでマッチポイント、最後は馬サービスエースで辛くも逃げ切った。

三菱の気迫に押されたこともあるが、相手はカットもしっかり上がっていたし、ミスも少なかった。2回戦のようにできなかったが、劣勢でも結果はしっかり残したところは、何と言うかここが勝ちを知っているチームと知らないチームとの差かもしれない。
普通だったら負け試合。こちらから“どうぞ勝ってください”って言っているようなプレーが多々あった。しかし相手も“いえいえ、滅相もない”といった感じ。これが住電とかだったら“じゃ、遠慮なく”となっていたであろう。
RI東北も2001年宮城国体以前は、力があってもなかなか勝てない時期があった。強豪チームからは「勝ちを知ったら手が付けられなくなる。だから全力で叩く」と言われていた。そこから脱出した要因は…当時の部長は「いい意味での素直さと明るさじゃないか」と分析していた。

それにしても驚いたのが第2セットの2枚替え。センターを吉田から佐藤に、レフトを渡辺から鎌田に替えた。まあセンターはいいとして、渡辺は機能していただけに、鎌田との交代はかなりのリスクを背負う。
「明日いきなりでは使いにくいので、二人をコートに入れておきたかった」と安重は苦笑い。結果的には鎌田のタメのある強打に三菱のブロックタイミングが合わず、事なきを得たが大胆な戦術だった。
三菱は4年連続で3回戦敗退を喫しており、あと少しで8強を逃し続けた悔しさは計り知れない。これを糧に足りない何かを克服できたら、強敵となって立ち塞がることだろう。こちらとしては、目を覚まさないで欲しいが。

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翌日の準々決勝。3日間とも第1試合というのは同じリズムで好都合と思われる。第2シードの住友電工相手にどこまで自分たちのプレーに徹することができるか。
第1セット、馬強打、住電時間差、梅津カット乱れ住電ライト強打、針生強打アウト、馬リバウンドを住電ブロック、熊谷カットがダイレクトで返り住電A、1−5。この流れを住電は逃さず、3点連取で3−9、2点連取で4−11と差を広げていく。
永井のC、吉田のAで何とかリズムを取り戻そうとするが、石川打って返すもネット、馬強打アウトで7−15。結局一度も連続得点を奪えず、10−21で先取される。

センターを吉田から佐藤にチェンジして挑む第2セットは奮戦、4タイまでのシーソーから針生時間差で一歩リード。そこからシーソーを展開し、永井の2段トスがネット超えてアウト、住電が7−8と逆転。住電がサービスエースなどで3点連取すれば、渡辺強打、住電レフト強打ネット、ラリーから佐藤A、馬強打で4点連取して12−11と再逆転。
しかし住電ライト強打ブロックアウト、熊谷弾く住電サービスエース、熊谷カット乱し住電ダイレクト、またも3点連取されてしまう。激しい攻防もRI東北はミスが響いて17−20。ラリーから針生時間差、住電時間差はわずかにアウト19−20。住電ライト強打を見事レシーブ、トスを上げたがブロックでワンタッチしておりオーバータイムス、呆然とする中、ストレート負けを喫した。

第1セットはまさしくセット差し上げます状態。第2セットは点数こそ僅差だったが、こちらのリズムではなかった。ファーストサーブが入らない、相手の強打は止められない、レシーブも返すのが精一杯では…それにしてもサーブミス、特にファーストのラインクロスが多かった。エンドライン後方が狭いわけでもない。象徴的なのが第2セット12−11と逆転直後の熊谷のラインクロス。自ら流れを断ち切ったがために、自らカットミスを招いてしまった印象が強い。
「プレーの質が違う。あっちは既に予測して動き、その通りにボールが来る。ウチはボールが来てから動いている。周りの指示もねぇんだもん」と澤。最後のオーバータイムスのプレーがチーム状況を如実に表していると言える。指示の声を出した出さない、聞こえる聞こえないとか言ってる場合ではない。

準決勝ではJR九州が接戦で住友電工を下した。準決勝前、ギャラリーでJRの選手たちが「住電とやれるだけで光栄」「オレたちが強いというより、(準々決勝で破った相手の)住電伊丹がどうしたのかなって感じ」「とにかく楽しくやりましょう」と、いたってリラックスしていた。無欲の勝利、目の前のプレーに全力を尽くした結果と言えるだろう。
「JRにはいいものを見させてもらいました。これでみんなが変わるはず。変わらなかったらそこまで」と安重。その1点を絶対に取ってやる!という姿勢や気迫、窮地に陥っても惑わず、そういうところだろうか。
苦言が多いのも優勝を狙っているからこそ。やってきたことはネガティブに捉えず自信にしていい。8強入りで、とりあえず櫻田記念の出場は内定。東北ブロックに大会がない現状で、無様な試合さえ見せなければ8強を逃しても選出される可能性は高いが、そこはきっちり結果を残した。
態勢・体勢を立て直し、冬には今以上の活力あるプレーを見せてくれるはずだ。

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9月、2020年夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定した。1964年東京開催から56年後となるが、これを契機にまた6人制が盛り上がれば、9人制も何らかの好影響(例えば登録チームの増加など)があることだろう。
11月の徳洲会カップでは4勝2敗で前年同様3位となった。中部徳洲会と住友電工に敗れたのだが、1セットはデュースの展開まで持ち込めた。
もうひとつ粘り強さが足りないとも言えるが、結果的には善戦だろう。ここからどう勝利へ結びつけるか、冬の全国大会シーズンに向け更に強化を進めていく。